アメリカンフットボールのXリーグは12月30日までに、トップリーグ「X1スーパー」の2021年シーズン最優秀選手(MVP)、最優秀新人、オールX25人※(オフェンス11人、ディフェンス11人、スペシャルチーム3人)を発表した。MVPはパナソニックインパルスのLBジャボリー・ウィリアムス、最優秀新人には東京ガスクリエイターズのQBジェロッド・エバンスが選ばれた。
オールXリーグでは、富士通フロンティアーズOL小林祐太郎が9年連続10回目の最多選出、DBアルリワン・アディヤミ(富士通)が9年連続9回目の選出で続き、TEジョン・スタントン(IBM)が8回目の受賞となった。最年長は、パンター(P)の吉田元紀(富士通)。39歳で2年連続2度目の受賞となった。チーム別ではパナソニックが最多の9人選出。リーグ戦全勝の力がくっきりと浮き出た形となった。
※アルフォンソ・オヌワーがWRとRの両方で選出のため、延べ25人、24選手。
流れ変えるビッグプレーで全勝に貢献 ルーティンは「ココイチのカレー」…MVPのウィリアムス
MVPに輝いたLBジャボリー・ウィリアムスは、今季11.5タックル、3QBサック、1インターセプト。第2節のノジマ相模原戦では先制のファンブルリカバータッチダウン(TD)、第5節のオービック戦ではQBジミー・ロックレイから3サック。第6節の富士通戦では、RBトラショーン・ニクソンをファンブルフォース。強敵相手に、試合の流れを変えるビッグプレーを決めて、パナソニックのリーグ戦全勝に大きく貢献。
パナソニックには2020年に加入したが、1年目は新型コロナウィルス感染症の影響でチーム合流が遅れ、ほとんど活躍できなかった。
Xリーグ公式サイトに掲載された、ウィリアムスの受賞コメントは次の通り。
「とてもうれしいです。これはジャボリー・ウィリアムスの個人受賞ではなく、パナソニックインパルスのチーム受賞です。なぜなら、私は昨シーズンはそれほど活躍できなかったにもかかわらずコーチやチームメートたちは2年目のシーズンに受け入れてくれたからです。だからこれは私だけのものじゃないと思っています。」
「ラインバッカーユニットやOLなど、今の私があるのはみんなのおかげです。その人たちのMVPです。MVPがいただけるとは思ってもいませんでした。いつも一生懸命にプレーすることだけを心掛けていて、その結果として受賞できました。本当に感謝しています。」
「ただ、まだライスボウルが残っています。ライスボウルが終わった後、チームメートと一緒に祝福できたら最高だと思います。」
ウィリアムスは1996年1月29日生まれ、フロリダ州の出身。高校時代からLBとして頭角を現し、1部FBS、アトランティックコーストカンファレンス(ACC)の中堅校、ウェイクフォレスト大学に進学後は、1年生からゲームに出場。3年生でスターターとなると、4年時には85タックル、2.5サック、2インターセプトを記録。大学通算では147タックル、19.5タックルフォーロス、4.5サック、2インターセプトという実績を残した。大学時代には、現レイブンズのラマー・ジャクソンや、現テキサンズのデショーン・ワトソンらNFLのトップQBと対峙した経験も持つ。ラムズのバックアップQBジョン・ウルフォードはウェイクフォレスト大の同級生だった。
カレッジ最終ゲームの2017年ベルクボウルでは、11タックル、1ファンブルリカバー、1インターセプトと活躍し、ウェイクフォレスト大が格上のテキサスA&M大を倒す原動力にもなった。
4年時の活躍で、卒業後もフットボールを続ける気を持ったウィリアムスは、NFLイーグルスのルーキートライアウトを経てキャンプにも参加した。その後、新興プロリーグのAAFやXFLにも参加したがいずれもシーズン途中でリーグが破綻するなど、苦労を味わってきた。
モットーは “WHY NOT”(なぜやらないんだ)。
「できないことなんかない。決してあきらめるな! 何があっても夢を追いかけろ!」という気持ちを持ち続けている熱いプレーヤーだ。
Xリーグ公式のインタビューによると、試合の2日前に「coco壱番屋」に行ってカレーライスを食べるのがルーティン。また一番の大好物はウナギという、日本人的な味覚を持つ。
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ウェイクフォレスト大フットボール部の公式ツイッターアカウントもウィリアムスのMVP受賞をリツイートした。
意外なDL清家の初受賞…オールX 2021オールX1スーパー■最優秀オフェンス11人【OL】C 上沢一陽(パナソニックインパルス/2回目)G 坂口友章(パナソニックインパルス/4回目)G 大久保壮哉(富士通フロンティアーズ/初)T 小林祐太郎(富士通フロンティアーズ/10回目)T 柴田純平(パナソニックインパルス/2回目)【TE・WR】TE ジョン・スタントン(IBMビッグブルー/8回目)WR ナムディ・アグード(東京ガスクリエイターズ/初)WR アルフォンソ・オヌワー(エレコム神戸/3回目)【QB・RB】QB アンソニー・ローレンス(パナソニック・インパルス/初)RB トラショーン・ニクソン(富士通フロンティアーズ/5回目=RBとしては2回目)RB ビクタージャモ―・ミッチェル(パナソニック インパルス2回目/RBとしては初)■最優秀ディフェンス11人【DL】DL デビッド・モトゥ―(パナソニックインパルス/7回目)DL バイロン・ビーティ―Jr(オービックシーガルズ/5回目)DL 清家拓也(オービックシーガルズ/初)DL ジェブライ・レーガン(東京ガスクリエイターズ/初)【LB】LB ジャボリー・ウィリアムズ(パナソニックインパルス/初)LB 田中喜貴(ノジマ相模原ライズ/5回目)LB 成瀬圭汰(オービックシーガルズ/初)【DB】DB アルリワン・アディヤミ(富士通フロンティアーズ/8回目)DB 辻篤志(パナソニックインパルス/5回目)DB 奥田凌大(富士通フロンティアーズ /初)DB ブロンソン・ビーティー(オービックシーガルズ/4回目)■最優秀スペシャルチーム3人K 佐伯眞太郎 (パナソニックインパルス/5回目=Kとしては2回目)P 吉田元紀(富士通フロンティアーズ/2回目)R アルフォンソ・オヌワー(エレコム神戸/3回目=Rとしては初) 初選出は8人(オフェンス3人、ディフェンス5人)。DL清家拓也(オービック)が初というのが、意外だった。清家はU19以来、各年代で日本代表に選出され、フル代表にも2015年と2020年に選ばれている実力者で、オービックのインサイドDLで最強の選手。このポジションはQB以上に優れた能力の米国人選手が集っていることを象徴する初選出となった。
パナソニックのQBアンソニー・ローレンスは、パス獲得ヤードは6位ながら、被インターセプト率が0.8%以下と、ミスをしない確実なクオーターバッキングに加え、勝負所での決定力が評価された。
そのローレンスから、今季唯一のインターセプトを奪ったのが、同じく初選出のLB成瀬圭汰(オービック)だ。179センチ100キロの大型RBだったが、負傷をきっかけに2020年からLB転向。パワーとスピードを併せ持った上に、プレー理解も進み、コンバート後わずか2シーズンでXリーグのトップLBに上り詰めた。
チーム別ではパナソニックの9人選出が最多、以下、富士通の6人、オービックの4人、東京ガスの2人、IBM、ノジマ相模原、エレコム神戸の1人と続いた。北米出身の外国籍選手は25人中13人(デビッド・モトゥー、ビクタージャモ―・ミッチェル、ブロンソン・ビーティーは登録上は日本人枠)を占めた。
Xリーグでは2000年シーズンよりリーグ戦で活躍した優秀な選手を表彰し、オールXリーグチームを選出している。選考対象はX1スーパー8チームの所属選手で、攻撃11名、守備11名、スペシャルチーム3名の計25名が選出された。選考は以下の方法によった。
・2020年シーズンに、X1スーパー所属8チームの代表1名とXリーグを取材するメディアがそれぞれ1票ずつ投票権を持つ。
・チーム代表は自チームの選手には投票できない。
・選考対象はレギュラーシーズンゲームとする。