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2018-01-24

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「ランニングを楽しくしたい」 躍進を続けるオンのブランド哲学

 本誌の試し履きイベント、クリール・シューズトライアルで常に上位を占めるオンのランニングシューズ。5年前にはほぼ無名だったスイスのスポーツブランドが躍進を続けている。なぜ、これらのシューズが多くのランナーを虜にしているのか、その源流をたどった。
文/編集部 写真/オン・ジャパン提供

 日本上陸5年、日本法人を立ち上げてからわずか2年で、パフォーマンス・ランニングシューズ市場で爆発的に売り上げを伸ばしているブランドがある。

 ランニングシューズ市場と書かずに、パフォーマンスという文字を加えた理由は、ランニングシューズというカテゴリーでは、一般的なスポーツシューズやスニーカーが統計に入るからだ。パフォーマンスシューズは、まさに走るためのシューズであり、通学や散歩を主な目的とするシューズは含まれない。

 なぜ、このブランドが多くのランナーの支持を受けるに至ったのか、その短い歴史を振り返りながら、ブランドのもつ魅力に迫ってみたい。

開発者たちの思いと
商社の論理との溝

 ブランドを象徴するテクノロジーは、マンガのような発想からスタートした。トライアスロンの世界では名の知れたスイス人のオリヴィエ・ベルンハルトは、水を撒くためのゴムホースを輪切りにして、ランニングシューズの底に取り付けたら、衝撃を吸収してくれるし、復元するときに生じるエネルギーが推進力を生むのではないかと考えた。

 それまで使っていたシューズで故障に悩まされていたオリヴィエは、衝撃吸収性、着地安定性に優れたシューズを求めていた。もちろん、アスリートでもあるので推進力を生むシューズであることは当然だった。

オンの創業メンバー。左からデービッド・アレマン、キャスパー・コペッティ、オリヴィエ・ベルンハルト

 ゴムホースのアイデアは、いくつものプロトタイプを経て、商品化された。2010年のことだ。それから3年、スイスとの強いつながりがある商社が、オンの輸入を始めた。

 走りを楽しむというアスリートたちが思い描いたコンセプトが具現化されたランニングシューズは、感度の高いランナーやトライアスリートの間で、徐々にではあるが話題となっていった。オンの未来は明るい、そう思われた。

 しかし、商社の論理は、スイス本社のオリヴィエたちが考える思想とは相入れない。差益ビジネスではボリュームが優先される。売れ行きに陰りが見えれば、取引は打ち切られる。ブランドを育てるという思いは二の次となる。

 そんな商社の思惑に疑問を感じたのは、最前線で販路拡大やブランド構築に奔走してい駒田博紀だった。スイス本社でのビジネスミーティングに何度も足を運んだ駒田は、オリヴィエたちがオンに込めた思想を最もよく理解していた。

「ランニングを楽しくしたい」

 それがオンの哲学だ。楽しくしたいのはランナーだけではない。このブランドに関わるすべての人たちを楽しくしたいのだ。 詳細は省くが、駒田は商社を飛び出して、オン・ジャパンを立ち上げる。2015年5月のことだ。オンの思想を共有できる仲間を慎重に選んで、横浜港から近いビルの一室に事務所を構えた。

取り組んだことは
戦略ではなく常識

 商社にいるときから駒田は日本の商習慣、特にランニングシューズの流通で疑問を感じていたことがいくつかあった。

 例えば、モデルチェンジが非常に激しいことだ。機能的には向上していないにもかかわらず、1年後には新しいモデルが店頭に並ぶ。旧モデルは黄色い札をつけられて半額ほどでワゴンに並ぶ。定価で購入したシューズが翌日は半額になっていたら、消費者はどう思うだろうか。販売店は、仕入れ値より低い価格で販売しなければならなくなる。そこに楽しさはない。もちろん、メーカーにとってもだ。

 例えば、日本の多くのスポーツショップでは、ランニングシューズを走行ペースに合わせて展示している。しかし、オンのシューズに推奨ペースはない。その人が気持ちいいと思えば、それが適正ペースである。ところが、日本のほとんどのショップでは、ペース別にシューズを展示する。ランナーには好みがある。ゆっくり走るから厚底でなくてもいいという人もいれば、スピードを出すから衝撃吸収性のある厚底を履くという人もいる。気持ちよく走れればいいし、「気持ちがいい」のは、人それぞれだ。

スイス本社の開発ルーム。洗練されたオフィスから洗練された商品が生み出される

 それらの1つ1つをオンは変えていった。モデルチェンジは、明らかに前のモデルよりもいいシューズができたときにしか行わない。シューズのよさを消費者に説明できるスタッフのいるショップを1つ1つ開拓した。そしてマジックウォールという特別な什器にシューズを並べる。

「戦略ではなくて常識です」と駒田は言う。

 ランニングの商習慣を変える取り組みは、このブランドに関わる人たちを楽しくしたいという常識がベースになっている。その活動が、オンを好むランナーを少しずつ増やしていった。一度、オンのシューズに足を入れた人たちがリピーターになり、身近な人たちに伝えていった。ユーザーが伝道師となる好循環は、販売足数の変化に如実に表れた。

 オン・ジャパンを立ち上げた15年と比較すると、17年は実に6倍を記録した。18年は17年のさらに倍近くを見込んでいる。そして、2020年にはプレミアムランニングシューズでトップ3に入るという目標を掲げている。オンが考えるプレミアムとは、1万2000円以上のシューズである。

オンを履いている人に
声をかけたくなる

 次々に伝道者が生まれる状況は、シューズのクオリティが高くなければ起こりえない。オリヴィエたちが、シューズの底にゴムホースの輪切りを張り付けたのは、足や腰に優しいシューズを作りたかったからだ。故障をしたらランニングは楽しくなくなる。長い時間走り続けられるほうが楽しい。足にフィットしているほうが楽しい。カッコいいデザインのほうが楽しい。軽いほうが楽しい。反発力があったほうが楽しい。

ミッドソールに埋め込まれて推進力を生むスピードボードは、シューズによって素材も形状も異なる

「ランニングを楽しくしたい」というオンの哲学を具現化したシューズができあがった。

 オンを履いている人は、オンを履いている人を見かけると話しかけたくなる。「オンあるある」だ。かつて、そんなスポーツブランドがあっただろうか。ユーザーは、このシューズを選んだことにある種の喜びを感じている。同じ感性をもった人が近くを走っている。必ず会話は弾むはずだ。そう思って声をかけるのだろう。

いつでもオン
みんなのオン

 昨秋、オンの旗艦モデルであり、最も売り上げに貢献しているクラウドが、4年ぶりにモデルチェンジした。新型クラウドのコンセプトは、Never Not On.

 直訳すると「オンでないときはない」となるが、駒田は「いつでもオン」と訳す。この言葉にはもう1つの意味が隠されている。「オンでない人はいない」。駒田風に訳せば、「みんなのオン」となる。Never Not Onは、新型クラウドのコンセプトにとどまらず、オンが目指している企業理念につながっている。

 なぜ走り続けているのかと問われたら、あなたはなんと答えるだろうか。痩せたい、健康になりたい、体力をつけたい、マラソンをいいタイムで走りたい、自己記録を更新したい、交友関係を広げたい…動機はそれぞれだが、突き詰めていくと「楽しいから」という言葉に行きつくのではないだろうか。それはまさにオンが目指しているものと同じだ。

 オンが日本のランニング市場で大きく売り上げを伸ばしている要因は、小手先のマーケティング手法やはやりの販売スキームを駆使しているからではない。「ランニングを楽しくしたい」という思いが込められて開発されたシューズを、求めている人たちに届ける努力を愚直に行ってきただけだ。

 今年、オン・ジャパンでは、ランニングを楽しんでいる仲間、オン・フレンズのコミュニティを始動させる。オンラインで情報を発信して、オフラインで一緒に走る。「Meet On Friends Tour」と題したキャラバンを1月下旬から開始する。にぎやかなイベントになりそうだ。オンを愛する人たちの輪が、もう1つ大きくなっていく。


オン・ジャパン 
TEL:045-264-9440 
apac_happinessdelivery@on-running.com

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