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2018-09-13

ボウリング 連続写真で見る世界の先端技術(石本美来)

※2015年11月号より ⒸBBM

8月にインドネシア・パレンバンで開催されたアジア競技大会で、日本勢では初めてマスターズ女子を制した石本美来選手。実は石本選手、今年7月のユース世界選手権で調子が上がらず、メカテクを着けてみたところ、自分に合っていると実感したそうです。メカテクを着けてのフォームはまたの機会にご紹介するとして、ここでは2015年11月号のものを転載いたします。下地監督の解説とともに当時の石本選手のフォームを振り返ってみましょう。

ヒジを体の横に置いてゆったりスイングへ

 写真1のアドレスは、左足を若干前に出したスタッガードスタンス。ここでの特筆すべきポイントは、ヒジのポジションです。ヒジを体の前で絞り込まず、体の横に置くことで、右腕全体が前後に動きやすくなり、石本選手の最大の特徴でもある、大きくゆったりしたスイングにつなげています。

 写真では分かりませんが、石本選手は投球動作の第1歩を踏み出す前のルーティンとして、アドレス地点で軽くリズムを取るように3度ヒザを屈伸させます。このルーティンは、投球の基本動作とされる4歩助走の実践において、かなり効果的な動作です。

 写真2~4では、第1歩の踏み出しと同時にボールを前方へと送り出す完璧なプッシュアウェイ。ここでは手首をコックせず、親指をターゲットに突き出していくようにボールを送り出しているところが目を引きます。

 これによってヒジが伸び、体とボールとの間に絶妙な距離感が生まれ、ダウンスイング以降、全体の流れの中で常にボールの重さが利用され、大きなスイングアークにつなげているのです。

3歩目の右ヒザの畳みに今後の課題

 写真5~8では、ダウンスイングが最下点を迎え、体の横をボールが通過していくタイミングで2歩目を踏み出していきます。ダウンスイングでボールが下りていくのに上体がつられず、重心をお尻側に維持できていることで、しっかりとした大きな2歩目の踏み込みにつながっています。

 しっかり踏み込まれた3歩目から、写真11~13とラストステップへ入っていきますが、ここに石本選手の課題が潜んでいました。

 一見、力みがなく、フラットラインの長い、素晴らしいフォワードスイングになっているように見えますが、3歩目の右足のヒザの畳みが浅く、なおかつ前方へ蹴ってしまうため、上体に重心が乗りすぎ、フォワードスイングと同調してしまっているのです。

 したがって長いフラットラインでありながら、前方への推進力が余分に作用し、その結果、写真14~15では淡白なリリースになってしまっているのです。

 アウトサイドを真っすぐや、クロス気味のラインを得意とする石本選手ですが、インサイドや板目幅を多く使うライン取りに苦戦する要因は、ここにあったのです。

 3歩目の右足のヒザを畳み、ラストステップを大きくつま先から送りだせるようになれば、真の世界の頂点へ近づくことでしょう。

いしもと・みらい◎1997年3月10日生まれ、広島県出身。2011年ユースナショナルチーム入り。14年に世界ユース選手権、全日本高校選手権などで優勝。18年のアジア大会で日本勢としては初めて女子マスターズで金メダルを獲得。オープンフレームを作らない確実なボウリングが武器。

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