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2022-06-05

【ボクシング】井上岳志、無難に判定勝ちも笑顔は見えず

井上の強烈な右。だが、タフなナァツを圧倒できなかった

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 WBO世界スーパーウェルター級15位にランクされる井上岳志(32歳=ワールドスポーツ)と日本ミドル級1位のワチュク・ナァツ(24歳=マーベラス)によるスーパーウェルター級10回戦は、4日、東京・後楽園ホールで行われ、地力にまさる井上が3-0のスコアで判定勝ちを手に入れた。

 井上とナァツは昨年11月、オーストラリアで同じリングに立っている。井上は注目の2世ボクサー、ティム・ジューに、ナァツはウェイド・ライアンにいずれも敗れた。ともにそこからの再起戦。さらにこの両者は1年半前に対戦し、井上が判定勝ちしているから再戦にもなる。いろんな意味で手の内を知り尽くした者同士の顔合わせ。そんな2人の対戦だからこそのやりにくさもあったのだろう。そんな気持ちが働いたのか、試合は最初から最後までかみ合わなかった。はっきりしたのは井上が「世界に通じるために」取り組む、攻撃と動きが一致したボクシングがまだまだ発展途上であることだ。

 すでに世界挑戦の経験もあり、日本、東洋太平洋、WBOアジアパシフィックと地域タイトルすべてを手にしたこともある井上としては、A級(8回戦以上)ではまだ1勝しかしていないナァツを圧倒したい。だが、ナイジェリア人を父に持ち、身体能力の高いナァツの抵抗にどうしても攻撃がつながらなかった。

 立ち上がりは左ジャブがよく、左フックのボディブロー、右のクロスやオーバーハンドもヒットさせるのだが、対戦相手は止まってくれない。分厚い攻撃につながらず、すべて寸断されたまま単発パンチの応酬に終始した。じりじりとポイントを積み上げていっても、ナァツのしぶとい反撃もあって、10ラウンドはヤマ場のないまま行き過ぎた。

「世界へのリスタートを見せたかったけど、今日の試合では何も言えません」。勝者に最後まで笑顔はなし。世界戦線浮上のために、以前の突貫ファイトを捨て、ニュー井上を作っている最中。仕方ない面はあっても、捨てた部分から良いところを切り取って、ほどよく配合したほうがよりよい結果をもたらすのかもしれない。21戦18勝(10KO)2敗1分。ナァツは12戦7勝(3KO)3敗2分。敗戦もキャリアにつなげたい。
見事なボクシングで、池側はプロ入り後初のストップ勝ち
見事なボクシングで、池側はプロ入り初のストップ勝ち

 この日、もっとも輝いて見えたのはスーパーバンタム級8回戦に出場した池側純(角海老宝石)。同じくアマチュア出身の落合壱星(セレス)とのサウスポー対決に、ワンサイドの展開の末、8回2分31秒、レフェリーストップによるTKO勝ちを収めた。

 スピード、テクニック、動きすべてに上回る池側は、最終回、左アッパーを効かせ、さらに右アッパーをフォローして試合を終わらせた。

 池側は4戦3勝(1KO)1分。攻撃はきわめてハイテンポで、守りも手堅く、もっと上のレベルと対戦させてみたい。落合は4戦3勝(2KO)1敗。

文◎宮崎正博 写真◎橋田ダワー

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