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2022-07-14

【ボクシング】「エストラーダを引きずり出すためにベルトを2本まとめたい」 井岡一翔、一夜明け会見で統一戦への想い語る

大きな疲労もダメージもない、と井岡

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 昨日13日、東京・大田区総合体育館で宿敵ドニー・ニエテス(40歳=フィリピン)を大差判定で破り、5度目の防衛に成功したWBO世界スーパーフライ級チャンピオン井岡一翔(33歳=志成)。一夜明けた14日、前夜の試合を振り返り、今後の展望をあらためて語った。

文&写真_本間 暁

“ディフェンス・マスター”にとっては、いつもの光景だった。傷や腫れひとつない顔は、世界タイトルマッチを12ラウンド戦ったとは思えないが、取材側もそれが当然と感じてしまっている。ふとそれに気づき、あらためて、この事実の凄さを噛みしめた。
 どちらも当てさせず、当てられずという激しい駆け引き、主導権争いは前戦同様だったが、より攻撃のバリエーションを増やし、右ボディストレートを発端に、グンと突き抜けていった様は痛快だった。
「前回の対戦の経験を生かしたり、気持ちを奮い立たせたり。作戦がハマったではなく、そこにハメ込んだという感じ」

会見で、深みのある言葉を連発する。かつてとは違い、正直な想いを隠さず話すようになった
会見で、深みのある言葉を連発する。かつてとは違い、正直な想いを隠さず話すようになった

「自分自身は劣っていたとは思わなかったが、負けたことは事実。1度負けた相手と戦うのは不安ももちろんある」と戦前、正直な気持ちを吐露していたが、難敵ニエテスをしっかりと攻略したことで、またひとつグレードが上がった印象だ。

 40歳のニエテスに衰えを感じたか? と問われたときだった。「体が衰えても彼のスタイル的には変わらない。向き合っていてもそう感じた」と前王者の印象を話すと、自分の身に置き換えて「昔は30歳ぐらいで引退しているのかなと思っていたけれど、いまもうその年齢を越えて……。でも、いまも毎試合、これが最後かなと覚悟して戦っている」と訥々と話す。昨夜のリング上でも、「世界戦は何度やっても不安」とマイクを通して会場に呼びかけたが、常にトップを走り続ける者、その期待を大きくかけられる選ばれし者にしか味わえない感情、見えない景色があるはずだ。そしてそれらを乗り越えて、勝利を勝ち取る。何ものにも代えがたい悦びであり、なおかつニエテスを打ち破ったのだから、「今回は特に嬉しい気持ちが強い」のも頷ける。

スポーツ紙6紙の報道記事を広げてV5をアピールする
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 だが、もちろんこれが最終目標ではない。1度引退を決意し、ふたたび戻ってきたのは、本物の最強の男たちと渡り合うため。
「年末に、1度は流れた統一戦を。IBFのラインが強いかもしれない。そこでベルトを2本まとめれば、(ファン・フランシスコ・)エストラーダ(メキシコ)を引きずり出すこともできるかもしれない」。あのローマン・ゴンサレス(ニカラグア)をも破った男が、井岡の中ではナンバーワンという認識。「そういう戦いを、アメリカを筆頭に海外でもやっていきたい」という希望は強まるばかりだ。

 先ごろ、シーサケット・ソールンビサイ(タイ)に快勝し、話題沸騰のWBC王者ジェシー・ロドリゲス(アメリカ)については、「いい選手で、好きなボクサーですけど、評価としてはエストラーダやゴンサレスよりは、まだ落ちる」。近い将来、クラスを上げてくるはずのWBOフライ級王者・中谷潤人(M.T)のことを訊かれると、「中谷くんとやっても、まだ世界的評価が上がるわけではないから」とひらり。
 あくまでも、海外を主戦場に現在のトップメンバーと雌雄を決する──。これが、「ボクサー人生、もうそんなに長くない」と、1戦1戦覚悟を決めて闘い抜いている男のモチベーションだ。まずは年末の統一戦実現を期待して待ちたい。
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