ボクシング・マガジン8月号のメインテーマは『再起』。その言葉がそっくり当てはまるとしたら、それは太平洋戦争終結後の日本ボクシング界にある。まさしく徹底的に打ちのめされたボクシング界はどんな形で再起をはかったのかを追った。
上写真=昭和27年、日本人初の世界王者誕生を見ようと、後楽園球場に4万大観衆が集まった
軍靴の響きが明白に高まる中、プロボクシングの立場は厳しいものだった。イギリス発祥、アメリカで発展したスポーツとして、日本軍部から『敵性スポーツ』とみなされた。用語の理不尽な日本語化やさまざまな興行への介入にもめげず、ボクシング界は奮闘する。しかし、はっきりと戦況が悪化のさなか、昭和18年についに活動休止に追い込まれる。そして、昭和20年8月15日に終戦。日本は連合軍によって占領される。
ボクシング界の立ち直りは早かった。焼け野原に野天の、そうでなくても掘っ立て小屋に等しいジムが建ち、20年の暮れには興行が再開される。戦前派の主役たちは高齢化、戦地に行った若いボクサーたちは帰還しておらず、戦中戦後の粗悪な栄養事情もあった。選手の絶対数の不足にコンディションそのものも不良と悪条件ばかりだが、リングの上では新しい意欲が燃え立った。
復活したピストン堀口の活躍や、さまざまなアイデアで、戦争前のファンをだんだんと会場へと呼び戻す。あるいは、記録には残らない、草試合と呼ばれるジムや、グループ内での自主興行。現代の安全管理の基準では許されないそんな試合も、ボクシングの普及に一役買った。
そして、新生ボクシング界は、ふたつの流れができる。道場スタイルを基盤にしたジム制度の伝統を守る側、新たな時代に合わせ、大型プロモーションによって、ボクシング全体を管理しようと考えた人々。ともに描くロマンは同じ。やがて、ふたつの発想が有機的に連動し、日本人初の世界チャンピオンを生み出すことになる。
写真◎BBM
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