『再起』をメインテーマにするボクシング・マガジン8月号は、もちろん、歴史にも言及する。モハメド・アリ、ジョージ・フォアマン、シュガー・レイ・レナード、ジェームス・ジェフリーズ。3つのサクセスと、ひとつの悲劇による4つの物語である。
上写真=1974年、対フォアマン戦に向け、キンシャサでトレーニングを重ねたアリ
ボクシング・マガジンが今回、特集する『再起』は、敗北からのカムバックという意味ではない。新型コロナウイルス流行という未曽有の非常事態での停滞から、再び立ち上がろうとする今を、トップはむろん、さまざまな立場にあるボクサーたちの多数をインタビューし、特集したものだ。
ただし、本来のカムバックの意図に照らし合わせ、これにクロスオーバーした企画がこれ。かつてのグレートボクサーたちの、偉大なカムバック物語だ。全盛期の偉業をさらに盛り立てる成功を収めた3つの物語に加え、ファンの期待に応えるがために、再びリングに上がったが、無残な結末に終わる例外も添えた。
主義主張を貫いた徴兵拒否のためにチャンピオンベルトのみならず、ボクサーライセンスまでも取り上げられたモハメド・アリ。その声望を確固たるものにした“キンシャサの奇跡”ジョージ・フォアマン戦を軸に。アリに敗れ、やがて引退したフォアマンは10年の歳月の後、突如リングに帰ってきて、さらに20年ぶり世界王座復活という離れ業を演じる。史上最高のマッチメイクとも呼ばれたトーマス・ハーンズとの激闘を勝ち抜いたシュガー・レイ・レナードが、無敵のサウスポー、マーベラス・マービン・ハグラーに挑んだ理由とその行程。いずれも、スーパーボクサーと呼ばれるにふさわしい才気と、努力と、叡智の結晶だった。
たったひとつの失敗例は、ジェームス・J・ジェフリーズ。20世紀初頭、鉄腕チャンピオンとして不敗のまま引退したジェフリーズが、人種差別が公然とまかり通っていた時代、黒人として初めて世界ヘビー級チャンピオンになったジャック・ジョンソンを打倒するために6年ぶりに再起する。周囲の期待に応えたいがための懸命の努力と、力の掟がもたらした非情な現実を描いていく。
写真◎ゲッティ イメージズ
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