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2022-08-21

【ボクシング】元世界王者スミス&ジャックがともに勝つ

鮮烈KOでスミスが挑戦権を獲得

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 20日、サウジアラビア・ジッダのスーパードームで行われたWBCライトヘビー級挑戦者決定戦12回戦は、1位(元WBA世界スーパーミドル級スーパーチャンピオン)のカラム・スミス(32歳=イギリス)が、2位のマチュー・ボーダリク(33歳=フランス)を3回1分52秒KOで下し、挑戦権を獲得した。また、クルーザー級10回戦に登場した元WBCスーパーミドル&WBAライトヘビー級王者バドゥ・ジャック(38歳=スウェーデン)は、無敗(21勝16KO)のリチャード・リベラ(31歳=アメリカ)を96対94、96対94、94対96の2ー1判定で上回り、勝利した。

強引に強打をねじ込むスミス。戦法切り替えの早さ、決断力は見事だった
強引に強打をねじ込むスミス。戦法切り替えの早さ、決断力は見事だった

 WBAインターコンチネンタルと欧州王座という“地域タイトル”を持つサウスポーのボーダリクは、中・長距離で上手さを発揮。中を通す右ジャブ、左右フックなどで、スミスに簡単にはペースを渡さなかった。
 距離を空けてはやりづらいと感じたのだろう。2回に入るとスミスはぐいぐいと距離を縮めて迫力あるコンビネーションを放つ。が、ボーダリクも臆することなく応戦し、互いにカウンターが決まりそうなやり取りを続けた。
 けれども強打に自信のあるスミスは、3回に入るとさらにプレッシャーを強める。意識的だったのか無意識なのか定かではないが、その圧力を跳ね返そうと、ボーダリクの振りも大きくなった。上体の勢いに振られて、下半身のバランスは乱れがちになる。スミスはそこを見逃さなかった。
 ボーダリクの右フックに、左フックを合わせる。これがテンプルに決まるとボーダリクはキャンバスにヒザを着く。
 8カウントで立ち上がったボーダリクを、スミスは厳しく攻め立てる。追い込まれたボーダリクは逆転を狙って左フックを放ったが、スミスは待ってましたとばかりに反応し、ものの見事な左フック一閃。アゴを射抜かれたボーダリクはロープに倒れ込む。レフェリーはご丁寧にカウントを10まで数え上げ、スミスの勝利を宣告した。
 18戦18勝18KOのパーフェクトレコードを誇るWBC&IBF王者アルトゥール・ベテルビエフ(カナダ)への挑戦権を獲得したスミスの戦績は30戦29勝(21KO)1敗。敗れたボーダリクは23戦21勝(12KO)2敗となった。

右を放り込み、ボディを攻めたジャック
右を放り込み、ボディを攻めたジャック

 両ガードを下げ、アゴが上がり気味だが身体能力に自信のあるリベラを、古豪ジャックは、対照的にガードをしっかりと上げて、丹念に右ストレート、左ボディで攻めていく。リベラは入ってくるジャックに、右アッパー、右フック、左フックと叩きつけていくが、ガードの上をどうしても叩いてしまい、コツコツとボディ攻撃を浴びる。3回にはボディが苦しくなったのか、ノーファウルカップを下げる仕種を始め、6回にはレフェリーにジャックのローブローを訴えるなど、かなりナーバスになっていた。
 リベラに比べれば、ジャックはスピードも身体能力も劣って見える。しかし、わざと左ガードを下げてリベラの右を誘い、そこに左フックの上下カウンターを狙うなど、キャリアで培った“仕掛け”で対抗していく。8回には、その左フックを外から中からと打ち分けて、リベラを混乱させた。

戦う意思は褪せない。すっかりベテランのジャックは無敗食いをした
戦う意思は褪せない。すっかりベテランのジャックは無敗食いをした

 接近戦で右アッパーをヒットしたリベラは、ポイントを着々と奪っていると考えていたようだ。けれども、自ら作るボクシングをほとんどできておらず、消極的に過ぎた。判定結果に陣営とともに不満を訴えていたが、実直なジャックのボクシングが評価された形だ。
 ジャックの戦績は27勝(16KO)3敗3分となった。

文_本間 暁(DAZN視聴)
写真_マーク・ロビンソン(マッチルーム・ボクシング)
Photos by Mark Robinson/Matchroom Boxing

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