23日(日本時間24日)、イギリス・リバプールのエコーアリーナで行われたWBAスーパー世界スーパーミドル級タイトルマッチ12回戦は、チャンピオンのカラム・スミス(29歳=イギリス)が、同級1位のジョン・ライダー(31歳=イギリス)を117対111、116対112、116対112の3-0判定で勝利し、2度目の王座防衛に成功したものの、大苦戦を強いられた。
上写真=スミスは、序盤こそ美しいストレート攻撃を披露していたのだが……
同級の正規王者サウル“カネロ”アルバレス(メキシコ)を押さえて、「スーパーミドル級最強」の呼び声も高いスミスだったが、伏兵ライダーに“あわや”の試合を演じてしまった。
立ち上がりから綺麗なジャブ、右ストレートを披露して、身長で16cm下回る(スミス191cm、ライダー175cm)サウスポーのライダーをコントロールしていたスミス。だが、強豪相手に4連続KO勝利を収めてチャンスをつかんできたライダーは、粘っこいボクシングでしぶとく食らいついていく。
スミスにとって誤算だったのは、ライダーの反応の良さ、的の小ささ、そして右目上のカットだった。多彩な左を駆使して中間距離を支配するが、4回には自ら足を止めて接近戦を仕掛け、左フックの上下打ちなどで、この距離での優位もアピールしたかに思えたのだが……。
この4回に右目上をうっすらと切ると、5回には出血も多くなる。スミスは左トリプル、右ストレートなどで突き放したいのだが、ライダーは巧みなガード、ヘッドスリップでこれをまともにはもらわずに、飛び込む勢いを増していった。
離れた距離でライダーを押さえきれないとふんだスミスは、ふたたび接近戦に付き合う。が、ここで回転力を増したライダーは7回に左フックをカウンター気味に決めて、スミスの腰を一瞬落とさせる。
水を得た魚のごとく、俄然勢いを増したライダーは、ステップインの速度を速め、強度も増していく。スミスはライダーの頭の動きにナーバスになり、ヒステリックにレフェリーにアピールするシーンも。ライダーはこれに乗じて、接近戦では必ずスミスの右目側に頭を持っていく“したたかさ”も見せた。
ストレート攻撃で、リズムを立て直したいスミスに対し、ライダーは必ずリターンブロー。そして11回、左フックをヒットしてスミスを後退させたライダーは、バランスを崩しながら左右スイングを放つスミスに右フックもクリーンヒット。最終回、スミスはふらふらになりながら、ライダーの入り際に右ボディアッパーを刺すが、挑戦者は中へ入って左右ショートフックをねじ込む。スミスがクリンチでこれをなんとかしのいだかたちでゴングが鳴った。
前半はスミス、後半はライダー。そんなはっきりとした展開だったが、ジャッジの下した判定は、地元のヒーロー、スミスに甘いものだった。疲れ切った表情に加え、まったく笑顔を見せないスミスと、少なからず聞こえたブーイングがそれを証明している。
無敗(27勝19KO)を守ったものの、ここ2戦でうなぎ上りだった評価を落とすこと必至のスミスに対し、“伏兵”の株はぐんと上昇したはずだ。ライダーの戦績は33戦28勝(16KO)5敗。
なお、この試合にはスミスが保持するWBCダイアモンド王座と『リングマガジン』誌ベルトもかけられていた。
Photos by Getty Images
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