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2022-09-08

【NFL】2022開幕戦 ラムズ対ビルズの見どころとは? QBアレンは「逃げても凄いんです」

実は、ブレイディに次ぐ危機回避能力を持つビルズQBアレン=photo by Getty Images

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アメリカンフットボールの世界最高峰、米プロフットボール・NFLの2022年シーズンが、いよいよ現地9月8日夜(日本時間9日午前)、開幕する。開幕戦「キックオフゲーム」は前シーズンのスーパーボウル王者、ロサンゼルス・ラムズと、現在のNFLパワーランク1位バッファロー・ビルズの対戦だ。そしてこの試合は、日本テレビ系スポーツ専門局「ジータス」と、ネットライブ中継「NFLGO」が、日本語実況・解説で生放送する。

9月 9日(金) 9:00 ~ 13:30
NFL on 日テレジータス 2022キックオフゲーム
バッファロー・ビルズ@ ロサンゼルス・ラムズ
【解説】森清之 【実況】安村直樹

 両チームともに、オフェンス・ディフェンスにスーパースターを揃え、今季、目指すのはスーパーボウル優勝のみ。このゴージャスな対決の見どころを探ってみた。

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最強DT、ドナルドをどう止めるか
現代NFL最強のDT、ラムズのドナルド=Photo by Getty Images
 ビルズオフェンスが、現在のNFLで最高のインサイドDL、ラムズのアーロン・ドナルドをどう防ぐか。これがこの試合の最大の焦点だ。185センチ、127キロと、NFLのDTとしては小柄。しかしドナルドの能力は凄まじい。過去5シーズン連続で二けたの69QBサックというパスラッシュ能力はもちろんだが、タックルフォーロスが5シーズンで93回と、ランに対しても圧倒的な強さを見せる。

 OLの外をスピードでまくればよいエッジラッシャーとは違い、常にインサイドで相手チームの巨大なOLと対戦する。そして、オフェンスのあらゆるプレーを狂わせ、破壊する。ビルズは常にOLをダブルチームでドナルドをブロックする必要がある。
 
 ラムズディフェンスはドナルドだけではない。OLBのレナード・フロイドは過去2シーズンで20サック。巨漢DTエーショウン・ロビンソンはランストップに強い。さらに、やや弱かったLBに、シーホークスから、過去10年でNFLのNo.1LBと言っても過言ではないベテラン、ボビー・ワグナーを加入させた。

 CBには、マンツーマンカバーではNFL最高のジェイレン・ラムジーがいる。メリハリの利いたディフェンスは、ビルズを苦しめるに違いない。

高いラッシュ回避能力を持つQBアレン

 ビルズのオフェンスは、パスでもランでもQBジョシュ・アレンが中心となる。昨シーズンはパス4407ヤード36TDの一方で、ラン763ヤード6TD。獲得したヤードは2020年の1.8倍に増えた。もちろんチームのラッシングリーダーだ。こう見ると、ディフェンスはアレンだけを攻略すればよいように見えるかもしれないが、事はそう単純ではない。

 アレンは、キャラクター的に自由奔放なプレーヤーに見られがちだが、実は危機管理がきちんとできているQBだ。一例をあげる。QB被サック率という数字がある。パスアテンプトを分母、被サック回数を分子とするものだが、アレンはこの数字が年々大きく改善している。

 昨年は646回パスを試みて、 許したのは26サックで被サック率は3.9%。いずれも、トム・ブレイディに次いでリーグ2位。40代半ばで、身体能力は高くないブレイディのこの数字は、当然の危機管理だ。しかし、アレンのような体が大きく頑健で運動能力も高いQBが、ここまで冷静にパスラッシュを回避している事実は興味深い。

ビルズQBアレン=Photo by Getty Images
 ちなみに昨年のスーパーボウル出場QB、ベンガルズのジョー・バロウは被サック51回でリーグ最多、被サック率は8.9%。ルーキーシーズン、膝に大きな負傷をしているバロウが、このスタイルでプレーを続けることへの危惧をベンガルズ首脳陣が持っていないのか、気になるところだ。

 話を戻すと、ドナルドやフロイドらサックアーチストを揃えたラムズディフェンスと言えども、アレンにプレッシャーをかけてパスを封じるのは、なかなか難しいということになる。

 ビルズが前回ラムズと対戦したのは、2020年第3週。この時は35-32のシュートアウトゲームとなった。アレンが残り15秒で逆転TDパスを決めた。アレンはこの試合パス311ヤード4TD。ただし、エースWRステフォン・ディグスは、49ヤードと封じられた。ラムズCBラムジーが仕事をして見せたからだった。

 ビルズは今回もディグスが徹底してカバーされる可能性が高い。昨シーズンの「史上最高のポストシーズンゲーム」と言われたチーフス戦で、4TDレシーブの活躍を見せた、WRガブリエル・デービス、アレンの「相棒」として頭角を現してきたTEドーソン・ノックス、さらにはジョージア大から加入のユーティリティーRBジェームス・クックをどのように使いこなすのかが焦点となるだろう。

スーパーWRカップをカバーせよ

 ラムズのクーパー・カップの2021年は、シングルシーズンとしてはNFL史上最高ともいうべきパフォーマンスだった。レギュラーシーズンで145レシーブ、1947ヤード(史上2位)、16TD。NFLや米メディアの「QB偏重主義」のため、カップはシーズンのMVPには選出されなかったが、ポストシーズン4試合でも478ヤード6TDを記録。遥かに重みのあるスーパーボウル勝利を獲得し、この試合のMVPにも選ばれた。

 ワイドアウトではなく、スロットレシーバーであり、直線のスピードは決して速くはない。だが深いプレー理解、正確なルートラン能力、ここぞという場面で見せるクラッチな捕球能力は、他の追随を許さない。

 ビルズがカップにマンツーマンさせるのは、NFLトップクラスのスロットCBタロン・ジョンソンだ。このマッチアップが、この試合のカギを握る。

 カップの真価はキャッチ後の走りにある。昨シーズンのヤードアフターキャッチはNFL最高の846ヤード。 ビルズの最高はコール-・ビーズリーの315ヤードだったことを考えると、カップの凄さが際立つ。ビルズは、カバーマンのジョンソンだけでなく、LBトレメイン・エドモンズとマット・ミラノらが、ショートゾーンでカップを捕捉し確実なタックルで止めることが、ラムズのオフェンスのリズムを断ち切ることにつながる。

ラムズWRカップ(右)と、補強のWRロビンソン=Photo by Getty Images

 ラムズではWRアレン ・ ロビンソンも忘れてはならない。ジャガーズ、ベアーズと渡り歩く中、通算495キャッチで1000ヤードシーズン3回、通算495レシーブの大型レシーバーだ。さらに、若手ヴァン・ジェファーソンも注目だ。ルーキー年はレシーブ220ヤードだったが、昨年は800ヤードを超えた。今季ブレークする可能性を秘めるスピードスターだ。

 ラムズQBマシュー・スタフォードは、激動の2021年シーズンを最高のエンディングで締めくくった。しかし、昨年はシーズン中から肘を痛めていたという現地報道もある。プレシーズンゲームは、大事を取ったのか、一度も出場しなかったが、ショーン・マクベイHCは、開幕からの出場を明言している。

 チーム最年長とはいえ、まだ34歳。老け込む年ではない。ただ、もう少しランを強化して、バランスアタックへの移行があってもいい。

 RBはキャム・エイカーズとダレル・ヘンダーソンのダブルエース。2人はタイプは違うが、スピードと爆発力がある点、さらに負傷がちなところも似ている。

優勝請負人ミラーのミッション

 ビルズがオフに行った補強で最も話題となったのは、OLBボン・ミラーとの契約だ。昨シーズン途中にブロンコスからラムズに移籍、スーパーボウル勝利に貢献した。

 彼自身が、まだまだリーグトップ級のエッジラッシャーである上に、キャンプ中に、2年目のグレゴリー・ルーソー、ブギー・ベイシャムら、大型パスラッシャーを技術指導している。彼らの才能が開花したとき、過去5年間二桁サックを記録した選手がいなかったチームのウィークポイントが解消する。そうなれば、ミラーは、ブロンコス、ラムズに続いてビルズでもスーパーボウルを制覇する可能性が出てくる。まさに優勝請負人だ。
ビルズに加入したOLBミラー(40)。大型で身体能力の高いルソー(50)を開花させられるか=Photo by Getty Images
 ラムズは、アンドリュー・ウィットワーズの引退が気になる。昨年12月に41歳になっていたが、LTとしてのパスプロテクション能力は、NFLトップクラスだった。穴を埋めるのは容易ではなさそうだ。


 ビルズもラムズも、2002年から導入されたNFLキックオフゲームでの登場は今回が初めてとなる。ビルズのショーン・マクダーモットHC、ブランドン・ビーンGMは、2016年のキックオフゲームを、パンサーズのディフェンスコーディネーター、アシスタントGMとして、経験している。

 ただ、ビルズとしては、今年1月の悔しいシーズンエンド以来の試合という意味合いの方が大きいかもしれない。いくら「ポストシーズン史上最高」と称賛されようと、ビルズにとっては敗戦でしかない。その悔しさを、ぶつけて晴らすことが、チーム史上初のスーパーボウル制覇の第一歩となるだろう。
ビルズのマクダーモットHC=Photo by Getty Images

【小座野容斉】

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