８日（日本時間９日）、コスタリカ・サンホセで行われたＩＢＦーＷＢＯ女子ミニマム級王座統一戦10回戦は、ＩＢＦ王者ヨカスタ・バジェ（30歳＝コスタリカ）が、ＷＢＯ王者ティ・トゥ・ニ・ヌエン（25歳＝ベトナム）を100対90、100対90、100対90の３－０完封で王座統一に成功した。
バジェがボディブローもまじえると、ヌエンは反応できなくなっていった 同国のヒロインとして人気を博すバジェは、満員の大歓声を背に受けて、テクニカルで鮮やかなボクシングを披露し続けた。手数は少ないものの、右の決め打ちに懸けるヌエンの決意を把握すると、まずは徹底的にその間合いを外し、遠目からの素早い連打を見舞う。左ボディブローをコンビネーションに加えると、ヌエンは立ち遅れてしまう。しかし、連打をガードでカバーするヌエンは、バジェの右にだけは執拗に相打ちを狙ってきた。体を左に倒してバジェの右を避けながら放つヌエンの右は、度々ＩＢＦ王者を脅かしたが、バジェは４回にいきなりの右を再三ヒットして、ヌエンに右のタイミングをつかませなかった。
５回、バジェは遠からず近づきすぎずの間合いをセット。ワンツー主体にこの距離をキープし、主導権を完全に握っていることを印象づけた。
試合が後半に入ると、さすがにヌエンも手数を出して前に出ざるをえなくなった。が、バジェは抜群の距離感でこれをかわし、速いコンビネーションに必ず左ボディブローを入れる。ヌエンはこれにどうしても反応できなかった。
８回には、敢えて右の相打ちを挑んでみせたバジェは、続く９回、さらに攻撃のテンポを上げてワンツーを再三ヒット。上下への打ち分けは見事で、最終回には、ストレート、フックを意識づけておき、右アッパーを突き上げてヌエンをのけ反らせ、勝利を決定づけた。
試合終了と同時に抱き合う両者
勝利を確信し、喜ぶバジェと大観衆 2017年12月、藤岡奈穂子（竹原慎二＆畑山隆則）とＷＢＯライトフライ級王座決定戦を争うために来日（藤岡の３－０勝利）したバジェ。2020年２月に現ＩＢＦ王座を獲得し、葉月さな（ＹｕＫＯフィットネス）を２度判定で退けるなど同国で４度防衛。これで区切りのＶ５となり、念願の統一王者となった。28戦26勝（９ＫＯ）２敗。
昨年10月、韓国で多田悦子（真正）からＷＢＯ王座を奪取（３－０判定）し、ベトナム初の世界チャンピオンとなったヌエンは、今回が初防衛戦にして大一番。クイックな動き、ハンドスピードは目をみはるものの、バジェの技巧、キャリアに屈した。６戦５勝（１ＫＯ）１敗。
伸びがあり、威力充分のルイスの右ストレート セミファイナルで行われたＷＢＣ女子スーパーフライ級暫定タイトルマッチ10回戦は、２位のアデライダ・ルイス（33歳＝アメリカ）が、王者ソニア・オソリオ（29歳＝メキシコ）に巧さと強さを見せつけて完勝。100対90、99対91、98対92の３－０勝利を果たした。
昨年３月、両者は対戦したものの、２回にオソリオが偶然のバッティングで左目上をカットし続行不能のドロー。今回の再戦に。
上体を忙しく動かして攻め入りたいオソリオだったが、ルイスはスタンスを広く取り、グンと伸びる左右ストレート、左フックでオソリオを圧倒した。
意を決したオソリオが中へ飛び込んでくれば、スウェーバックしながら左フックを合わせたり、若干斜め後ろに移動しながら間合いを作り、左フックから右ストレートを見舞う。
かと思えば、右を見せておき、返しの左フックを狙うものの、“エサ”の右を再三ヒットしてしまうなど、予想外の展開も。これはオソリオの混乱ぶりを象徴するシーンだった。
連打の回転では勝るオソリオは、試合が終盤にさしかかると荒々しく攻めて出る。だが、ルイスは左ボディブローを突き刺して、オソリオをおとなしくさせた。
最終回、ルイスがタメを作って左フックを放とうとしたところにオソリオの右がヒット。これが唯一のクリーンヒットだったかもしれない。逆転を狙うオソリオを、ルイスは難なくいなして試合を終えた。
保持するシルバー王座ベルトに、暫定王座のそれも加えたルイス ルイスの戦績は13戦12勝（６ＫＯ）１分。オソリオの戦績は25戦15勝（４ＫＯ）８敗２分。同級の正規王者ロウルデス・フアレス（35歳＝メキシコ）とルイスの王座統合に期待したい。
文＿本間 暁（ＤＡＺＮ視聴）
写真＿ゴールデン・ボーイ・ボクシング
Photos by Golden Boy Boxing
