アマチュア3冠の実績を持つ木村蓮太朗(22歳=駿河男児)が7日、三迫ジムでB級(6回戦)のプロテストを受験し、合格した。3ラウンドのスパーリングでは潜在能力の高さを披露。今春に東洋大を卒業し、6月に後楽園ホールでデビュー戦を迎える予定だ。
上写真=合格証を指さして喜ぶ木村。男前で、人気も出そう
プロテストのスパーリングが始まる前、リング脇に腰を下ろすと、手慣れた手つきでバンデージを巻き、白い歯を見せた。
「緊張はしていません。ようやく、このときがきたという感じです」
この日、グローブを合わせたのは、日本フェザー級王者の佐川遼(三迫)。1回は軽快に動きながら軽いパンチを交換する程度だったが、2回からは木村の目つきが変わる。22歳のサウスポーはぐいぐいとプレスをかけて、ぐっと踏み込んで左ボディから右フック、左フックと矢継ぎ早にパンチを打ち込んでいく。ただの連打ではない。インターバル中に佐川が「パンチが重いっす」と漏らすほど、強烈だった。相手が懐に飛び込んでくるタイミングで右アッパーを合わせるなど、技術力の高さも垣間見せた。日本チャンプも、そのテクニックと度胸には脱帽。
「厄介な選手が出てきた。カウンターの合わせ方がうまいですし、連打も的確だった」
規定の3回を終えて、ヘッドギアを外した木村の表情には充実感が漂っていた。
「楽しめて、やれました。デビュー戦の6月(予定)まではあと3ヵ月あります。これから(調子が)上がっていくと思います。きょうの30倍以上は、いいところを見せます」
対戦相手は東洋太平洋またはWBOアジアパシフィックのランカーが予定されているという。それでも、本人はKOへの強いこだわりを示した。
「お客さんの印象に残るような一発で仕留め、その日一番の試合をしたいです」
言葉には自信がにじむ。口だけではない。アマチュア時代の実績は十分。東洋大時代には全日本選手権に加え、国体を2度制覇。4年時には主将として、関東大学1部リーグ、全日本大学王座決定戦の初優勝に貢献した。後輩たちからは「蓮太朗くん」と親しまれ、東京五輪で金メダルを目指す東洋大の堤駿斗(2年)とも切磋琢磨しながら実力を磨いた。体育会系の上下関係にとらわれず、後輩と活発に意見を交換してきた。
「ハヤトからはすごく刺激を受けています。僕から助言を求めたりもしました」
謙虚で義理人情にも厚い。目立ちたがり屋を自認しながらも、所属先は首都圏の大手ジムではなく、高校1年生で初めてボクシングを教わった地元・静岡の駿河男児ジムを迷うことなく選んだ。前島正晃会長の人柄に惚れ込んでいるという。
「静岡で初めての世界チャンピオンを目指します。静岡のスターになりたい」
3月からは元WBA世界スーパーフライ級王者の河野公平(引退)らを育てた元ワタナベジムの高橋智明トレーナーがミットを持ち、興行面では三迫ジムからサポートを受ける。万全の体制を整えて、層の厚いフェザー級の世界戦線へ向け、一歩ずつ歩んでいくつもりだ。
文&写真_杉園昌之
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