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2022-09-15

【ボクシング】ライト級の国内頂上決戦! WBO・AP王者・吉野修一郎と中谷正義が激突

“最終決戦”に向かう吉野(右)と中谷

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活況呈す国内ライト級戦線。その“最終段階”と目されるカードの実現だ! 世界ライトフライ級タイトルマッチ3団体が集結する11月1日(火)、さいたまスーパーアリーナのリングで、世界への切符を賭けた戦いがある。WBOアジアパシフィック・ライト級タイトルマッチ12回戦、チャンピオン吉野修一郎(30歳=三迫)対元OPBF東洋太平洋同級王者でWBO・AP4位の中谷正義(33歳=帝拳)の1戦。ともにWBC上位ランク(吉野10位、中谷9位)に位置づける世界ランカー対決でもある。

文_本間 暁
写真_山口裕朗

 1度も目を合わせなかった寺地拳四朗と京口紘人。彼らとは対照的に、終始和やかな雰囲気のまま、お互いにリスペクトした発言を繰り返した吉野と中谷。これから戦う両者とは思えないが、ひと月半後、表情も空気も一変させて拳を突き立てることを想像すると、怖気立つ。

「僕が勝っているのは気持ち」(吉野)
「僕が勝っているのは気持ち」(吉野)

 2017年10月に日本王座を獲得した吉野は、昨年8月までに7度防衛。2019年10月にはOPBF&WBOアジアパシフィック王座も獲得し、3冠を掌中に収めていた(昨年12月に日本王座を返上)。

 2冠を賭けて戦った今年4月の伊藤雅雪(横浜光=引退)戦に続き、タフなマッチメイクである。元WBO世界スーパーフェザー級王者の伊藤を11回負傷判定ながら攻略した試合は、吉野の突き抜けたレベルをあらためて知らしめた。ライト級での2階級制覇を狙い、魂こもったファイトを仕掛ける伊藤を、巧みな防御技術でかわし、そして痛めつけた。これが層の薄い階級ならば、世界挑戦のチャンスが巡ってきても何ら不思議でない実績である。

機知に富んだ発言も、経験豊富さを窺わせた中谷
機知に富んだ発言も、経験豊富さ、人間力を窺わせた中谷

 中谷もまったく同様、いや、吉野を上回るキャリアを積み重ねてきた。2014年1月にOPBF王座を獲得すると、およそ5年をかけて11度もの防衛に成功。2019年7月にはその後3団体統一王者となったテオフィモ・ロペス(アメリカ)とIBF挑戦者決定戦(大善戦の末、判定負け)。“俊英”フェリックス・ベルデホ(プエルトリコ)に2度ダウンを奪われながら、逆転の9回TKO勝ちを演じ、そしてあのワシル・ロマチェンコ(ウクライナ、世界最速3階級制覇者)戦へとつなげた。かつてパウンドフォー・パウンドNO.1とされたロマチェンコの技巧には屈した(9回TKO負け)ものの、真のトップとの3合を経てもなお、吉野との決戦に向かうのだ。

「東洋もあれだけ防衛して、海外のスター選手とも戦ってきた中谷さんは、本当に強い選手。今回は海外に向けて戦う試合。勝ったほうが本場のアメリカに行ける」(吉野)
「(吉野は)日本で最高の選手。しっかりと勝って、次のステージへ行きたい」(中谷)

 ともに“最終テスト”を多分に意識した試合である。

 互いが相手を認め、柔らかい口調の発言が続いた中、どんな戦法を取るか訊ねられると「(吉野は)すごく強いので秘密です」と微笑をたたえながら中谷が言えば、これに呼応した吉野も「僕も秘密でお願いします」と満面の笑顔に。自分が優っている点を訊かれれば、「キャリアは負けているので気持ちかな」(吉野)、「身長です、というのは冗談で(笑)、海外での経験を生かした戦いをできること」(中谷)と、会場のムードをさらに和やかにした。

 182cmと長身の中谷は、多彩な左ジャブ、長く伸びる右ストレートを軸に、軌道が唯一無二の左アッパーを上下に差し込むのが得意。吉野(175cm)は中谷の打ち下ろすストレート系ブローをどうかわし、中・近距離に持ち込むか。テンポの刻みが速い吉野と、ゆったりしたリズムをベースに、緩急強弱を使っての独特のタイミングを秘める中谷。いずれが自らのペースに引き込むか、味わい深いやり取りが繰り広げられるはずだ。

中谷潤人は2階級制覇へのテストマッチ!? 写真_BBM
中谷潤人は2階級制覇へのテストマッチ!? 写真_BBM

 また、アメリカ合宿中で会見は不参加だったWBO世界フライ級チャンピオン中谷潤人(24歳=M.T)は、WBOスーパーフライ級3位フランシスコ・ロドリゲス・ジュニア(29歳=メキシコ)とスーパーフライ級10回戦を行う。
 かねてから「スーパーフライ級で戦ったときの方が自分はキレがある」と公言していた中谷。フライ級としては長身で、まだまだ体も成長過程にあるだけに、1階級上でのテストマッチなのは間違いない。

“達人”井岡を苦しめたロドリゲス・ジュニア(左)はくせ者だ 写真_BBM
“達人”井岡を苦しめたロドリゲス・ジュニア(左)はくせ者だ 写真_BBM

 対戦相手のロドリゲス・ジュニアは、昨年9月にWBO王者・井岡一翔(志成)に挑戦し、判定で敗れたものの、メキシカン特有のリズムで井岡を苦しめた。中谷のスーパーフライ級での現在地を示すには、これ以上ない相手である。

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