2月8日(日本時間9日)、アメリカ・ペンシルベニア州アレンタウンで行われたWBC世界フェザー級戦は、王者ゲリー・ラッセル・ジュニア(アメリカ)がタグ・ニャンバヤル(モンゴル)を3−0の判定で下した。
上写真=ラッセルはハイレベルなボクシングで、ニャンバヤルを翻弄した
これが5度目の防衛戦のラッセルだが、1年に1試合というスローペースが5年も続く。このサウスポーは、どうしても影が薄くなるが、リングに上がればそのスピード、スキルの高さはフェザー級では随一だ。今回も、無敗の指名挑戦者ニャンバヤルを高速ジャブを軸としたコンビネーション、柔軟なボディワークで翻弄し、打ってくればカウンターを叩きつけた。
ロンドン五輪フライ級銀メダリストのモンゴル人は、このところ故障もあって試合間隔が空きがちだったが、世界初挑戦を前にイスマエル・サラス・トレーナーの門下に。「彼のパンチの独特のタイミングが、スピードを凌駕する」と名匠に言わしめたが、ラッセルの素早い立ち回りを崩す術ないまま前半戦を過ごす。
5回からニャンバヤルの右がやっと少し当たり出し、6回、7回と攻めのピッチを上げてラッセルを下がらせた。しかし手練れのチャンピオンは、8回に高速ジャブで突き放し、ペースを引き戻した。ニャンバヤルはそんな王者をかき乱す秘策がなく、単調な攻めのままに終わってしまった。採点は118対110、117対111、116対112の3−0だった。
「思ったとおりに戦えた。後半はガードを固めて積極的に攻めると自分に言い聞かせた。ニャンバヤルは対戦者の中でもとくに強い中のひとりだった。ほかのチャンピオンなら彼はもっとやれただろう。いつか世界チャンピオンなると思う」と語ったラッセルは32戦31勝(18KO)1敗。アマ時代からのライバル、世界4階級制覇者となったレオ・サンタクルス(メキシコ)との対戦がなかなか叶わず、サンタクルスを追って階級を上げる可能性もあるが、まずは今年は少なくとも、年1回ペースを脱したいところだろう。
ニャンバヤルは12戦11勝(9KO)1敗。最も攻略の難しいチャンピオンに挑み、敗れた。「自分がすべきボクシングができていなかったことはわかっている。彼は偉大なチャンピオンだ」。アメリカでプロとなり、正統派スタイルから思い切りのいい右強打を武器に全勝を守ってきた。1999年に日本で畑山隆則(横浜光)からWBA世界スーパーフェザー級王座を奪ったラクバ・シン以来、モンゴル史上二人目の世界チャンピオンを目指したが、それはお預けとなった。
文◎宮田有理子 写真◎Amanda Westcott/SHOWTIME
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