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2022-10-08

【NFL】350億円契約のQBウィルソンはどうしたのか? 「史上最低」と酷評のサーズデーナイトで起きたこと

TDゼロ、2INT。チームも敗れフィールドに立ち尽くすブロンコスQBウィルソン=photo by Getty Images

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アメリカンフットボールの世界最高峰、米プロフットボール・NFLは、第5週のサースデーナイトゲームが、現地10月6日夜(日本時間7日午前)、コロラド州デンバーであった。デンバー・ブロンコスとインディアナポリス・コルツが対戦。コルツがオーバータイムの末、12-9で、ブロンコスを破って2勝2敗1分けとした。ブロンコスは2勝3敗。
 両チームのオフェンスが、決定力を欠き、タッチダウン(TD)を1本も奪えず。プライムタイムゲームとしては、見ている方にもフラストレーションの溜まる試合となった。米メディアは、「サーズデーナイト史上ワーストゲーム」と酷評している。

(写真はすべて Getty Images)

NFL Week5 サーズデーナイトゲーム  
コルツ    0  3  3  3  3  12
ブロンコス  3  3  3  0  0    9
(2022年10月6日、エンパワーフィールド@マイルハイ)

 NFLでオーバータイムに突入するゲーム。それはエキサイティングな戦いとだいたい同義語のはずだが、この日の夜は違った。ホームのブロンコスファンが、結果を見ずに引き上げていく姿が見られた。

 パスで通算372TD(現役3位)のコルツQBマット・ライアンと、通算296TD(現役5位)のブロンコスQBラッセル・ウィルソンの対決で、TDが全く入らずにフィールドゴール(FG)のみで決着するなどと誰が予想しただろうか。
パスをはたかれるブロンコスQBウィルソン=photo by Getty Images
 ロースコアだから面白くなかったわけではない。ディフェンシブな好ゲームはアメフトの醍醐味だ。しかしこの試合は、ディフェンスがそれほど良かったわけではない。両チームとも、オフェンスは進んでいたし、パスもそれなりに決まっていた。

 確かに、両QBとも移籍1年目、エースRBが共に故障するという事情はあった。

 ただ、それにしてもあまりに決定力が無さ過ぎた。

 米CBSスポーツが以下のようなデータを出している。
 
 両チームのQBが共に250ヤード以上パスでゲインしながらTDが無かったのはNFL史上初。

 両チームのQBが複数のサックを受け、複数のインターセプトを投げ、複数のファンブルをした試合で、なおかつTDがゼロだったのは、1987年10月(1987年第6週、ビルズ6-3ジャイアンツ)以降で初めて。

 コルツは1973年以降、TDゼロ、複数インターセプト、被サック6回以上で勝利した初めてのチームとなった。。

 2人のQB、ウィルソンとライアンが合わせて4インターセプトでTDなし。これも19年ぶり。前回は、2003年にQBペイトン・マニングのコルツがブラウンズを9-6を破った。
 
 ライアンは今季5試合で11回のファンブル。これは1970年以来、QBでは最多。このままのペースだと、37.4回ファンブルすることになる。

 ライアンはこの試合の6被サックを含めて、今季6試合で21回サックされ、168ヤードをロス。2020年にコルツに移籍したベテランQBフィリップ・リバースは1シーズン16試合で19回サックされ118ヤードのロスだったが、ライアンは1/3以下で早くもそれを超えている。
 
 ライアンは、5試合で7インターセプト。昨年のQBカーソン・ウェンツの1シーズンと並んだ。
サックされるコルツQBライアン=photo by Getty Images

 これだけQBライアンの悪い数字が並びながらコルツが勝ったのは、QBウィルソンが率いるブロンコスのオフェンスがさらにもっと悪いからだ。
 
 ブロンコスの、今季のレッドゾーンにおけるTD率はわずか21.43%で、NFLワースト。5試合時点での数字としては、2006年のファルコンズ(17.65%)以降で最低だという。

 責任は、もちろんウィルソンにある。ウィルソンは今季エンドゾーンに投げたパスは2/18だという。

 この試合でも、4Qに2度に渡ってドライブを続けながら、いずれも、相手陣でインターセプトを喫した。特に、残り2分13秒で、TDを狙ったパスがエンドゾーンでインターセプトされたのは致命的だった。ここまで5試合でわずか4TDで3INT。本人が一番ふがいないと感じているだろう。

 ウィルソンはデビューから10年でパスで292TD。これがどれだけすごい数字かは、トム・ブレイディの225(全休シーズンなどを抜いた実働10シーズンなら300)、ペイトン・マニングの306という同じ期間のパスTD数と比較すればわかる。

 付言すれば、ウィルソンはランでも24TDを稼いでおり、キャリア最初の実働10年に決めたTD数では、偉大な2人のパサーをさえ上回る。

 プレーリードに長け、ゲームマネージメント能力も高く、脚力を駆使しながらディフェンスを翻弄してパスTDを決める。これがウィルソンの最大の持ち味であり、だからこそ、ブロンコスはウィルソンを獲得したのだ。

 スーパーボウル出場2回優勝1回、プロボウル選出9回というスターQB、ウィルソンのために、ブロンコスは、2つの1巡を含む複数のドラフト指名権と、3人の選手という多大な交換条件を飲んだ。それだけでなく、移籍後には5年で2億4500万ドル(約357億円)うち、1億6500万ドル(約240億円)がギャランティーという、超大型契約も結んだ。

 エースQBに最も必要なものは、チームの信頼だ。今のウィルソンはそれを徐々に失っている。勝敗は、まだ2勝3敗だが、ブロンコスは深刻な状況に陥ってしまうのかもしれない。
 
 最後に良い話も書いておきたい。オフェンスが苦境の中で、コルツのKチェイス・マクローリンは、FGトライ4/4ときっちりと仕事をした。マクローリンが決めたFGは52ヤード、51ヤード、31ヤード、48ヤードと難しい距離が3本あった。
 
 マクローリンは、コルツが、Kロドリゴ・ブランケンシップを解雇した第1週の後に、拾われた。2019年から6チームを転々として、コルツが7チーム目だ。今回こそ安住の地が得られることを期待したい。
TDゼロ、2INT。チームも敗れ、肩を落とすブロンコスQBウィルソン=photo by Getty Images

【小座野容斉】

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