新型コロナウイルスが猛威を振るい、人類の生活様式は一変しました。コロナ以前、コロナ禍、アフターコロナ……。刻一刻と変化する状況は、これからも続いていくことでしょう。そんななかで、水泳を「楽しむ」ということを見つけた尾花氏。大きな変革のなかで水泳を「追求」し続ける入江選手。新しい時代を迎える今、水泳を通じてふたりが見据える未来とは——。
コロナ禍だったからこそ分かった
水泳の楽しさ
——コロナ禍で世界の情勢がめまぐるしい変化を続けるなかで、水泳に楽しみを見いだされた尾花さん、環境が変わっても追求し続ける入江選手というおふたりに、水泳という共通言語を使っていろんなお話を伺っていきたいと思います。まず、尾花さんはコロナ禍において水泳の世界にはまったと伺いました。
尾花大輔さん(以下尾花):実は子どものころから水泳はずっとやっていまして。コロナ禍前から区営のプールなどで泳ぐことはしていたんですけど、いよいよパンデミックになったときに、健康維持を本格的に考えるようになったんです。それでコロナ禍でも施設が使えたので、しっかり泳ぎ始めた、という感じでした。
入江陵介選手(以下入江):泳ぐ頻度が増えて何か変わりましたか?
尾花:やっぱりボディバランスが変わってきましたし、何より健康になりました。この年齢になると、痩せててお腹が出てて、なんていうのは格好悪い。それに若い人が着飾るのは良いんですけど、やっぱり年齢を重ねて行くと、もっと内面的な自分の生き様をシンプルにファッションで表現するというか、そうでありたい。健康、ボディライン、そこからつながるファッション、という意味で、自分のライフスタイルにとても水泳がマッチしていたんです。
——対して、楽しさだけではなく、水泳を追究し続ける入江選手にとってコロナ禍というのはどういう影響がありましたか。入江:やっぱり、今まで当たり前にできていたことができなくなる、という経験は、僕の人生のなかでもはじめてでしたから、どうして良いか分からない、という部分が大きかったですね。それが徐々にいつも通りにやれるようになってきたとき、今まで練習や試合など当たり前にできていたことが、どれだけ幸せなことなのかはすごく感じました。あと、コロナも怖いけど、人が怖いというのもあって……。ちょっと人間の怖さも、正直感じるところもありました。
尾花:たとえば、制限で外に出られない人もいるなかで、泳ぐことに対してもプレッシャーを感じたり?
入江:はい、そうですね。ジュニアの大会や地方の大会は中止になることが多いなか、トップアスリートが出る日本選手権とかは開催される。自分よりもっと大変な思いをしている選手がいることも分かっていたので、大会が延期されるとか、練習環境がないとかも含めて、自分が大変だということをあまり口にはできないな、という状況ではありましたね。
尾花:そうですよね。何より試合とかをやるかやらないか分からないなかで、ピークを作るというのも大変ですよね。
入江:それはめちゃくちゃありました。それにずっと国内のトレーニングが多かったので、良い情報も悪い情報もどうしても耳に入ってしまう。なので、やっぱり何に対しても常に気が張っている状態が続くというか……気持ちのオンオフがつけられなかったのはしんどかった部分でした。
泳ぐシチュエーションが変わると新しい世界が見える尾花:僕はファンスイムだから、ただ泳ぐだけでも楽しいんですけど、都会のホテルとかで色んなところに泊まりながら、趣向の異なるプールを回るなんていうのも、プチ旅行気分を味わいながら泳げてより楽しいというか。都内のプールはいろいろ行きましたが、驚きと斬新さでは、全面鏡張りのプールだった、大手町のフォーシーズンズホテルですかね。
入江:すごいですね。ちょっと泳いでみたいかも。
尾花:最初、驚いたんですけど、正直ありだなって。真下に鏡があるから、普段見れない自分のフォームを見ながら泳げるのは、一見の価値がありましたね。あと、水中にサウンドシステムがあって音楽も流れてる。こんな競泳用のプールとかあったら、斬新だし泳いでて面白いんじゃないかと思ったり。
入江:僕たちもトレーニングで鏡を置いて泳ぐことはありますよ。尾花さんがおっしゃる通り気持ち良いというか、自分の泳ぎが良く見える。左右差が分かったり、足先までの動きを見て確認したり。それはトレーニングですけど、ちょっと尾花さんがおっしゃっていたプールは泳いでみたいですね。
尾花:ぜひぜひ。ちょっとギラついているけど(笑)、楽しいと思いますよ。そうやって自分なりに水泳を楽しむ毎日です。
入江:選手ってほとんど決まったプールしかいかないので。それこそホテルのプールなんてほとんど泳いだことがないですね。
尾花:なんかそういうふうに泳ぐシチュエーションを変える、また意識も変わるし面白いですよ。是非色々なプールにも行ってみて頂き感想が聞きたい。
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