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2022-10-24

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尾花大輔 (ファッションデザイナー) × 入江陵介 (スイマー、オリンピックメダリスト) 新しい水泳のカタチ


今までの価値観を崩すことで
画期的な水着が誕生した

——話は尽きませんね。そうやって水泳を楽しまれている尾花さんがディレクションするプロジェクトのOBANA SWIMMING CLUB。今回arenaとの初コラボレーションですが、どのように考えられたか教えてください。


尾花:
私たちみたいなエントリーユーザーからすれば、すごくスタイリッシュで派手なデザインの水着を着るのはハードルが高いんですよ。でも、デザインを進めていくなかで、選手の方々が水着ひとつで個性を出したいという気持ちも良く分かったんです。泳ぐという同じ目的があっても、選手たちとは全く違う観点とデザイン感が必要だと思いましたね。

入江:分かります。大人の方は、最初から派手なデザインは着にくいかもしれませんね。

尾花:そう。大人だから渋い感じが良いな、とか、できればそんなに目立ちたくないわけです。そんな話をarenaのデザインチームの方と話していると、やはりずっと続いている、水泳に基づく水着のあり方があったみたいなんですね。そこから外れてみることから始まったんです。

入江:確かにそういう目線はありませんでした。


尾花:たとえば、おじさんが通常の水着を着るとお腹に食い込んで水着に乗っかるんですね。だから、水着にお腹が乗らないようにフロントを短くしてみたんです。あとはお尻をすっぽり被っているほうが大人として清潔感があるな、と考えていった結果、水着の常識で考えると、ある様で無かった画期的で斬新なデザインになったようで。

入江:こういうスタイルの水着はなかったですね。

尾花:そうみたいですね。あとラッシュガードも身体のラインが出るようなものしかなかったので、大人の方が体形を気にせず着られるようなラインにしてみたんです。

入江:ハーフパンツもありますよね。これ僕すごく好きで愛用しています。ポケットが深い位置にあってチャックが着いている、というのも良いですし、何よりはいていてすごく楽ですよね。

尾花:選手の方にそう言ってもらえるとうれしいです。

入江:こういう白黒のカラーで、シンプルな落ち着いた雰囲気の水着は今まであまりなかったので。僕、黒好きなんですよ。オールブラックのデザインって今まであまり出会ったことがなかったので、すごく格好いいですよね。


尾花:僕たちが作ったのはファンスイム用ですけど、入江選手が普段レースで着られている水着はまた全然違いますよね。ちなみに着るのにどのくらいかかるんですか?

入江:だいたい3、4分で着られますよ。今はこの水着を着るための道具がありまして。こういうスカートをはいて、その上に水着を滑らせるようにして着るんです。そうすると楽に早く着られるんです。

尾花:へえ……。このスカート、このままポケットつけたら着られそうだけどな。


入江:
確かにそうですね。考えたことがなかったです。水着を着るための道具としか見ていなかったです。

尾花:
実はこういう専門的に使われるものって、僕たちにとってデザインソースとして宝みたいなものなんですよ。別の方向で見てみると、そこに新しい発見があったりする。

入江:
なるほど。僕たちは道具としか見ていないから、そこに何かを求める、という発想はないですから。

尾花:
面白いもので、ファッションって得てしてそういうもので。何かの専門として使われているモノのほうが、クリエイティブ力をかき立てられるというか。

入江:確かに、ジーンズもはじまりとしては作業着ですものね。

尾花:そうなんです。ほかにはキャップやゴーグルも作りましたが、結構人気ですぐに完売した店舗もあったみたいですね。

入江:また作りましょうよ。もしこの第2弾をやるとしたら、こういうのを作ってみたい、といのはありますか? 水泳をやっている今だからこそ思いつくものがあるんじゃないかな、と思って。

尾花:もしやらせていただけるなら、是非やってみたいですね。その頭を回してみますね。

水泳を楽しむ人が増えれば
もっと水泳の未来が広がっていく

——まだまだお話を聞いていたいのですが、最後におふたりに水泳という共通言語を通してお話されてきて、あらためて水泳を通して見るデザイナーとしての未来、選手としての未来についてお話いただけますか。

尾花:水泳だけではなく、スポーツ全般、続けていく中に楽しみと成長があるということ。そして予防医療的な観点からみても水泳はとても良いでしょうし、何よりボディラインを保つのに水泳はすごく良いと思うんです。いくつになっても、健康的な身体というのは洋服で着飾るよりも、その人の魅力やパフォーマンスが高く見えますよね。そういう意味でも、水泳はメリットしかないな、と。そういうなかで、草の根運動的にはなりますが、僕ができることがあれば支援はしていきたいと思います。

入江:そうですよね、水泳って子どもからお年寄りまでできる唯一のスポーツだと思うんです。さらにケガのリスクも少ない。ただ、プールに行く、水着を着るというハードルもあって、始めにくいスポーツでもあると思うんです。そんななかで、もっと気軽に水泳ができる環境ができたら良いと思いますし、予防医療という面でも、尾花さんがおっしゃったように健康への近道にもなると思います。もっと水泳を楽しんでくれる人が増えれば、僕たち競技者の裾野も広がっていきますし、競技者の価値も高まっていくと思います。なので、どうやったら水泳に携わる人が増えるのか、どうやれば簡単にスッと水泳の世界に入ってきてくれるのかな、ということを考えていければ、もっと水泳の未来は広がっていくのかなって思います。

尾花:入江選手にはぜひ若い子からおばあちゃんまで、水泳を広める活動をしてほしですね。いろんなホテルのプールで泳いでいただきながら、スペシャル講座みたいなのをやってもらって。そのあとみんなで美味しいディナーとかね。そういう楽しみ方もありますよね。

入江:良いですね。いろんな楽しみ方を提供できたらうれしいです。

——今日はありがとうございました! また尾花さん、入江選手のコラボも楽しみにしています!



<尾花氏プロフィール>
尾花大輔 DAISUKE OBANA(ファッションデザイナー)
1974年1月28日 神奈川県出身
1991年 高校時代から古着屋で経験を積み、その後、原宿の名店でバイヤーやショップマネージャーを兼任。
1995年 古着のセレクトショップ、「go-getter」の立上げに携わる。
ヴィンテージブームの中、70年代、80年代のデザイン性の強い古着をセレクトし、数々のムーブメントを作っていく。
2000年 本格的に展開する為にショップ「Mister hollywood」を原宿にオープン。
2001年 ブランド「N.HOLLYWOOD」を設立。
2002年 クラブで初のコレクションを発表した後、東京コレクションでショーを続ける。
2010年9月 SPRING2011 コレクションより、NYへ発表の場を移す。
2019年 東京 2020 オリンピック・パラリンピックの聖火リレーユニフォーム、セキュリティ、ワークフォースのデザインを監修。

<入江選手プロフィール>
入江陵介 RYOSUKE IRIE (イトマン東進) 
1990年1月24日 大阪府出身
2008年 北京五輪出場
2009年 ローマ世界選手権出場 200m背泳ぎで銀メダル獲得
2012年 ロンドン五輪出場 100m背泳ぎで銅メダル・200m背泳ぎで銀メダル・400mメドレーリレーで銀メダルを獲得
2016年 リオデジャネイロ五輪出場
2021年 東京五輪出場
100m・200m背泳ぎ 日本記録保持者(長水路)

写真/阿部卓功
文/田坂友暁 (ライター)


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