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2019-12-03

【ボクシング】井上浩樹、2冠目ゲット! 7回に左一閃でWBOアジアパシフィック王座も獲得

2日、東京・後楽園ホールで行われたWBOアジアパシフィック・スーパーライト級王座決定戦12回戦は、日本同級チャンピオンの井上浩樹(27歳=大橋)が、WBO・AP同級5位でフィリピン王者のジェリッツ・チャベス(28歳)を、ものの見事な左ストレート一撃で7回3分8秒KO。いとこの井上尚弥、拓真もリングサイドで応援する中、井上家3人目の世界王座へじんわりと歩を進めた。

上写真=間を詰めた、速いワンツーで“不倒”チャベスを倒した!

 エンディングは唐突に訪れた。7回終了間際、正面で対峙するチャベスが、ふと間をつくった瞬間、井上浩樹は、それまで封印していたような速いワンツーストレートを放った。その左がアゴを射抜くと、フィリピン人は真下に落下。悶えながらなんとか立ち上がったものの、レフェリーは10カウントを数え上げたのだった。

 これまでKO負けはおろか、「ダウンしたこともない」(チャベス)というタフネスの持ち主。その相手を鮮やかに倒したのだから、大いに自信を持つべきだ。

徹底的に、チャベスのブローが生きる距離を回避した

 しかし、浩樹はこの日も慎重に慎重を期した。徹底的に、チャベスの距離を外しにかかり、右へ右へとじわじわと回り込む。チャベスの左フックに対して、スウェーバックからの右フックを重ね、さらに左ストレート。中間距離では左ストレートをボディに送り、チャベスのステップインを抑止していった。

「もっと(上下に)散らしたかった」と浩樹。速いコンビネーションは打たず、チャベスのリターンを常に警戒しながらの、“間”を空けて打つブローが多かった。そして、終始、危険領域を超えず、チャベスを引き寄せて戦うパターン。

 中盤には、チャベスに攻撃の“間”を与え、連打を打たせるシーンも。「パンチは見えていた」という浩樹は、これらを腕でシャットアウトしたが、それでリズムに乗ってしまう選手もいる。フィニッシュブローとなった速いワンツーなどで自ら攻めていくシーンも散りばめていれば、よりリスクは回避できたのではないかと思う。試合が長引けば長引くほど、相手にチャンスが増えるからだ。

「途中、眠くなった(笑)」と、いつもながら浩樹の“消極策”を評した尚弥(右)は、「明日から走れよ!」と指令を出した。弟・拓真(左)同様、尚弥は自分の後にもっとついてこい! とエールを送り続けるのだ

「この試合では、大きいことは言えません」と、試合が終わっても慎重な浩樹に、「でも、この慎重なボクシングが浩樹の持ち味であり凄さ」と、大橋秀行会長は労いの言葉をかけた。11月30日(日本時間1日)、大手プロモーションのトップランク社と契約し、アメリカ・ラスベガスデビューを飾った平岡アンディも、浩樹と同じクラス。「この2枚看板でいきたい」と大橋会長は意気込み、「浩樹も同社と契約できるようプッシュしたい」と語った。

5回にダウンを奪った桑原だが、逃げ回るシーンも見せたスエノを攻めきれなかった

 セミファイナルの51kg契約8回戦に出場した日本フライ級13位のホープ、桑原拓(24歳=大橋)は、フィリピンランカーのリカルド・スエノからダウンを奪って大差の判定勝ち、プロデビュー以来無傷の7連勝(4KO)をマークした。
 スピードで上回る桑原が、スエノが振り回すワイルドスイングをボディワークでかわしながら、ジャブ、ストレートとヒットしていく。2回以降はボディブローもまじえてさらに一方的に。5回には右ボディショットでダウンを奪って、ポイント差は開く一方だった。
 試合後の桑原は「今日は10点。勇気がない。プロ意識が足らない」と倒せなかったことを悔しがる。右ひざを痛めて十分に走り込めなかったのも「不調」の原因と明かした。
「ひとまず全勝で今年を終えられたのはうれしい。来年はタイトル戦をやれるまでになりたいですね。そういう意味ではいい経験になったかな」と最後は前向きにとらえていた。

右のパワーパンチが、最終的に決め手となった。まだ危うさもかなりある松本だが、間断なく突くジャブは進歩の証。また、敗れた伊藤も、まだまだ浮上のチャンスが十分あるグッドファイターだ

 また、昨年の世界挑戦から連敗を喫し、スランプに陥っていた日本スーパーバンタム級3位の松本亮(25歳=大橋)は、7月に同僚・中澤奨を初回で倒して勢いに乗る伊藤仁也(24歳=三河)とフェザー級8回戦を行い、4回1分24秒TKO勝ち。
 立ち上がりから左ジャブを丹念に突いた松本は、「パンチがあった」という伊藤の左フックを食ったものの、冷静に打ち合いに臨んだ。持ち前のパンチ力を生かして4回に右フックのカウンターでダメージを与え、連打でストップ。
「前の甘い自分だったら、どうなっていたかわからない」という松本は、敗戦を経験して、成長過程にある。「いまのままでは、日本とか東洋なんて言ってられない」と、自らの立ち位置も十分把握し、イチからの出直しを真剣に考えている。

文_本間 暁(井上、松本) 宮崎正博(桑原)
写真_ワンダン・ダワー

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