11月7日、さいたまスーパーアリーナでWBSSバンタム級決勝に臨むWBA世界同級スーパーチャンピオン、ノニト・ドネア(フィリピン)が31日、都内の帝拳ジムで記者会見と公開練習を行った。最強のバンタム級とも言われる井上尚弥(大橋)との対戦に「これまでの人生をとおしてやってきたことすべてを披露する」と決意を語った。
写真上=帝拳ジムで2ラウンド、シャドーとミットの練習を披露したドネア
自宅のあるアメリカ・ラスベガスから故郷フィリピンのマニラに飛んで最終調整し、前日に来日。そんな旅程と、マニラでは「タイプの違うパートナー相手に、厳しいスパーリングでトレーニングを締めくくった」こともあってか、ときおり表情に疲れの色がにじむ。刻まれたしわに36歳(11月16日で37歳)の年齢を感じさせもする。
だが、きつい質問にもあわてず、笑顔まじりのコメントに終始した『大人』の会見、左のフック、アッパーにちょっぴりとだけ本気を混ぜ込んだシャドーボクシングにミット打ちにはオーラが香る。やはり、ドネアはスーパースターだった。
「調子も上がっているし、それよりもわくわくしているよ」
5階級制覇の名チャンピオンは、フェザー級からかつて絶対の強さを誇ったバンタム級に帰ってきてこれが3戦目。この前の2戦は、内容はどうであれ、いずれもKO 勝ちと結果は残して来ただけに、一気に昔の切れ味を取り戻す可能性もありそうだ。
「バンタム級こそ自分のウェイトだと思う。以前は対戦相手がいなかったが、今は強い相手もたくさんいて、やりがいがある」
その「やりがいがある」最大の相手こそが、井上であるのは、むろん、理解している。
「才能があるボクサーだ。スピードとパワーをともに持っている。私と同じようにね。リングの上ではとても危険な存在だ」
強いからこそ、プロのファイターとして、なお血が騒ぐ。
「常に命をかけて戦ってきた。それができたのも自信があってこそだ。今までたくさんの栄誉を勝ち取ってきたが、今、一番ほしいのはWBSS で優勝して、バンタム級最強を証明することだ」
一代の英雄は胸ある決意をもう一度確かめるように、一瞬だけ唇をキュッと結んだ。
文◎宮崎正博
写真◎山口裕朗
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