アメリカ・ネバダ州リノで行われた空位のWBO世界フェザー級タイトルマッチ12回戦で、同級1位のシャクール・スティーブンソン(22歳=アメリカ)が2位のジョエ・ゴンサレス(26歳=アメリカ)を大差3-0の判定で下し、新チャンピオンに。プロ入りした男子のリオデジャネイロ五輪メダリストの中では、世界王座へ一番乗りとなった。
上写真=話題のスティーブンソン(右)が、ついにプロの頂点に立った
3年前当時、日本の大沢宏晋(オール)を下して初防衛したWBOフェザー級王者、オスカル・バルデス(メキシコ)が返上したタイトル。それを争うこのカードは、1位と2位の無敗新鋭対決とはいえ、アメリカ最大手トップランク社が手塩にかけてきたリオ五輪バンタム級銀メダリスト、スティーブンソンの圧勝ばかりが予想された。
対するゴンサレスはゴールデンボーイのプロモート下で無敗の戦績を築いてきたスタミナ豊富な好戦派だが、スピードスターのサウスポーを崩す絶対の武器が見当たらない。地味な感が否めなかったマッチアップは、ゴンサレスの実妹がスティーブンソンのガールフレンドであり、付き合ってから家族とは音信不通になった、という事実、因縁が明らかになってようやく盛り上がりをみせた。
試合は、スタートからやはりスティーブンソンのスピード、巧さが際立った。右ジャブから速射の左ストレートを上下に送り込み、2回には右ジャブで誘って左カウンターのタイミングを作り出し、3回にはゴンサレスの入り際に左アッパーを合わせる。もはやどう仕留めるかだけが関心の的だった。
しかしゴンサレスはその状況を変えようと懸命だった。4回にプレスを強め、空振りしても“憎き男”の懐に潜り込んでみせる。そして7回、右ボディから連打でスティーブンソンをコーナーに追い込み、連打。ゴンサレスはこの日初めてまともに拳の感覚を味わったのではないか。けれども、ゴンサレスがジャッジの支持を得たのは、この7回のみだった。スティーブンソンは距離を立て直し、ゴンサレスの前進を左アッパーで迎え撃ち、牽制する。ジャブ、カウンター、ワンツー、危険を回避するため攻撃は単発になったが、最後まで確実にポイントを押さえた。結果、ジャッジ三者ともに119対109の大差で、スティーブンソンがベルトを巻いた。
終了のゴングが鳴るやコーナーに駆け上がったスティーブンソンは「素晴らしい気分だ」と言った。2004年のアンドレ・ウォード以来のアメリカ男子オリンピック金メダリストになるべく、大いなる期待を背負って臨んだリオで、キューバの俊才ロベイシー・ラミレスに敗れて銀メダルに甘んじたスティーブンソンにとって、ジュニア大会以来の「世界一」である。喜びはひとしおだったに違いない。
IBF同級王者ジョシュ・ウォーリントン(イギリス)との統一戦を望み、イギリスに遠征する覚悟もあることを明かすと同時に、減量が苦しく、遠からずスーパーフェザー級に転向する可能性も示唆した。戦績は13戦13勝(7KO)。
トップランク社のボブ・アラム氏は「素晴らしい出来だった。左構えのメイウェザーだね」と絶賛したが、観客のブーイングが示すとおり、22歳の新チャンピオンが世間を納得させるのはこれから、ということになる。敗れたゴンサレスは24戦23勝(14KO)1敗。
取材・文_宮田有理子
Photos by Mikey Williams / Top Rank
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