会場全員が凍りつく結末だった──。スーパーバンタム級で世界上位にランクされる(WBC2位、IBF4位)元OPBF&日本同級チャンピオン和氣慎吾(32歳=FLARE山上)が11日、東京・後楽園ホールでフェザー級8回戦に登場。スピードで圧倒していたものの、一瞬の隙を突かれてジュンリエル・ラモナル(30歳=フィリピン)の左フックを食って、3回2分59秒TKO負けを喫した。
上写真=左フックを直撃されて横倒しになった和氣。レフェリーはノーカウントでストップした
ボクシングの怖さをあらためて思い知らされる、衝撃的なKOシーンだった。スピード差は歴然。サウスポースタイルからのワンツー、あるいは右ジャブ→左ストレート→右ショートフックのコンビネーションで、ラモナルを圧倒していた和氣が、わずか左フック2発でキャンバスにひれ伏してしまったのだ。
両者は2013年10月に対戦。当時、OPBF王者だった和氣のV2戦で、3回TKO防衛を果たしていた。和氣がもっとも勢いに乗っていた時期である。
2016年7月にIBF王座決定戦で、当時オールKO勝利だったジョナタン・グスマン(ドミニカ共和国)の強打にさらされて敗北。そこからジム移籍等を経て、敗戦のショックを払拭。昨年7月には、日本王者・久我勇作(ワタナベ)との“国内頂上対決”に圧勝し、ふたたび世界戦線に戻ってきたはずだった。
軽快なフットワークと、シャープなストレート攻撃は好調そのもの。ラモナルは2回に左目上をカットし、和氣がどの段階で仕上げにかかるかという展開だった。
だが、3回開始早々にラモナルの頭が和氣の顔面を直撃し中断。「あれで流れが変わってしまったかもしれない」と赤井祥彦・代表は苦しい表情を浮かべた。
それでも和氣は、今度はラモナルの右目上もカットさせ、変わらぬペースを示していたのだが、ロープを背負ったところで左フックを巻かれると、よろめきながらキャンバスに倒れこんだ。
ここは立ち上がった和氣は、足取りがふらつきながらも迎撃していたのだが……。ふたたびロープを背負ったところで今度は左フックがまともに側頭部を直撃。そのまま横倒しになって、キャンバスに気絶した。
一時は担架も運び込まれたが、意識を回復した和氣は、自力で控室に戻ったものの、「まったく憶えてない」ということで会見はキャンセル。代わりに記者に応じた赤井代表は、「世界のチャンスを僕の力でなかなか見つけられなかったので、和氣に申し訳ない。今日勝てば次は──という話もあった。和氣がどう判断するかわからないですが、痛い1敗です」と沈痛な面持ちで語った。
スピード、切れ味ともに“全盛期復活”を思わせていた和氣だが、唯一悔やまれるのは、下がりながらの引きのカウンター狙いに執心したこと。ラモナルに打たせて外し、的確に決めていたが、真っすぐ下がるパターンは、スピード差があるからこそで、決して盤石の戦い方ではなかったように思う。
自ら仕掛ける、あるいはサイドを取って攻めるなど、柔軟な動きができる選手だけに、変化を示せなかったことが、思わぬ落とし穴にはまり込んでしまった要因のひとつかもしれない。
とにもかくにも、赤井代表も心配していたとおり、ダメージ回復に注力してほしい。
取材・文_本間 暁
写真_小河原友信
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