日本ライトフライ級タイトルマッチ10回戦、チャンピオンの堀川謙一(三迫)対4位、高橋悠斗(K&W)の10回戦は10日、東京・後楽園ホールで行われ、挑戦者の高橋が2-0の判定ながら勝ち、新チャンピオンとなった。前半戦は消極的だった堀川が、老練な試合運びで追い上げたが、ラスト2ラウンドの攻防で26歳高橋に突き放された。堀川は2度目の王座防衛に失敗した。
写真上=高橋の右が堀川を痛打
ボクシングという勝負は、見る角度、距離、あるいは審判の持つ物差しでまったく違う結論が生まれることがある。この戦いが、まさしくそうなのかもしれない。堀川が勝ち切ったとは決して言えない。高橋の勝ちでも順当。ただし、微差判定、引き分けで王者の防衛もあり得る。だから、その名前がコールされるまでいずれが勝者なのか、最後までわからなかった。ちなみにこのレポーターの採点はドロー。そうなったのは『堀川、絶対有利』の予想が、採点心理に微妙に浸み込んでいるからと言われたら、返す言葉もない。だれもが認める正解は、ただひとつ。この戦いがきわめてクロスした内容だったことだ。
序盤戦、堀川はほとんど仕掛けなかった。いつも対戦者の動向をじっくり見きわめて、攻防を組み立てる堀川だ。2回かあるいは3回、攻めと守りのリズムに変化をつけ、さらに角度、距離にも変化球を交えてかき回すはず。だが、今日は一向にピッチが上がらなかった。高橋の攻撃は散発的。ただし、威力はあった。堀川のボクシングがいつものように縦横無尽であったなら、もっと違う展開はなったかもしれない。
試合後の堀川にくどく聞いても、語ったのはこれだけ。「相手が強かった。自分はまだまだです。でも、勝たなければいけない試合でした」。消極策への返答はなかった。それなら想像するしかない。初回、高橋の右ストレートが2発、左フックが一発、きれいにヒットしている。強打を肌身で感じたことが、堀川を慎重にさせたのか。
5回を終えて公開された途中採点は48対47が2者、49対46がひとりで、いずれも高橋のリードとつけていた。高橋側から見れば、勝ってはいても1ポイント差というのは微妙に過ぎる。堀川の巻き返しがやってくると確信しただろう。それだけ、ベテラン王者の読みは深く、鋭い。案の定だ。左フック、右クロス、左のボディショット。あえて大きく、大きくとモーションを入れて、攻勢を印象づけていく。クリーンなショットを決められなければ、できるだけ派手な彩色でポイントをアピールする。キャリア20年、39歳。不運に過ぎる判定負けを含め、15度もの悔しい思いと引き換えに手に入れた高密度の試合運びがフル回転し始める(堀川の戦績はこの試合の前まで40勝13KO15敗1分)。一方の高橋は後手に回ってしまい、じりじりと敗勢をたどり始める。
いつもなら、そのまま堀川がポイントを抱えて乗り切ってしまうのだが、この日は違った。
「『ここで攻めて人生を変えろ』とトレーナーに言われて、死ぬ気で獲りに行きました」
そう試合後に語った高橋がラスト2回、全力疾走を始めた。右クロス、左フックがヒットする。ビッグパンチでアピールも加えた。堀川も応戦する。打たれればすぐにやり返す。あるいはレフェリーの死角で、挑戦者の片腕を抱え込むなど秘術の限りを尽くして、勢いを止めにかかる。しかし、この最終盤、有効打で上回ったのは高橋だった。
ヤッター、これ(ベルト)、俺のだ」。K&Wジムに創設3年9ヵ月で初王座をもたらした高橋は喜びに浸った
「公開採点は聞かないようにしました。(力を)出し切りました」
ミニマム級から鞍替えして、ひと回り体の大きな極上のベテランを食った高橋は言った。もっと攻防にリズムがついたら、そのハードパンチはもっと光るに違いない。
力を余して敗れた堀川は、16度目の悔しい夜になった。戦力的な衰えは見えない。ただ、直線的な攻めに終始する高橋のようなタイプには、最も料理自慢だったはず。そこからまず、この夜の出来を考え直したい。
取材が終わるころ、大歓声が聞こえてきた。吉野修一郎が豪快にノックアウトを決める場面がモニターに映し出される。
「よしっ」とジムの仲間の勝利に力こぶを入れてすぐ後、堀川は大声で続ける。「いいよなぁ。持っているものが違うんだよな。いいよなぁ」。繰り返した言葉に何が意図されていたか、傷ついた敗者にあえて訊かなかった。
文◉宮崎正博
写真◉菅原淳
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