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2022-12-17

【箱根駅伝の一番星】“育成”の帝京大を象徴する吉岡尚紀、憧れ続けたラストステージに全力でぶつかる覚悟

副キャプテンとしてチームをけん引している吉岡尚紀(4年)

陸マガの箱根駅伝2023カウントダウン企画「箱根駅伝の一番星」では出場20校の注目選手を紹介。“育成”の帝京大を象徴するように、吉岡尚紀は4年生になって頭角を現した。今季、副キャプテンとしてチームを引っ張り続けて力がつき、出雲駅伝で学生三大駅伝デビュー。競技生活のラストステージである箱根に、すべてをぶつける覚悟で臨む。

下級生が強くても、流れをつくるのは4年生

今回の箱根駅伝の帝京大のエントリーメンバーには、1年生が3人、2年生が4人と下級生が多く名前を連ねている。

「いつもの帝京大らしくはないメンバー構成になっている。でも、上級生が弱いわけではなく、1、2年生の力が上がってきたから。バランスの良いチームになったのかな」

帝京大といえば、“育成の”と形容されるように、例年であれば上級生が多数を占めることが多い。だが、今季は下級生の突き上げが大きかった。中野孝行監督が、今年のチームを“ネオ帝京”と称しているほどだ。

そのなかで、“育成の帝京”を体現し、4年目で初駅伝のチャンスをつかんだ選手も、もちろんいる。副キャプテンの吉岡尚紀だ。

「2年生までは故障が多かったので思うように走れず、苦しさを味わってきました。3年生の後半から少しずつ走れるようになり、4年生になって役職が付いて、ケガが減っていったことによって、少しずつですけど結果も出てくるようになりました」

今季は、キャプテンでありエース格の1人である北野開平(4年)が、6月に左足の足底を手術した影響で、夏にほとんど走ることができなかった。その間、北野に代わってチームを引っ張っていたのが吉岡だった。

「キャプテンが故障していたので、その分、副キャプテンの自分が引っ張っていかないといけないと責任を感じていました。夏合宿あたりからは練習でも先頭を引っ張ったりしていました。最終学年であることと、副キャプテンに選んでいただいたことが、僕自身が変わるきっかけになったと思います」

その成果は秋に実を結ぶ。

出雲駅伝のメンバー選考がかかった学内の5000mタイムトライアルでチームトップ。最後は流しながらも、記録は14分10秒と、公認の自己記録14分23秒93を大きく上回った。こうして4年目にして初めて学生三大駅伝のメンバーの座をつかんだ。

出雲は2区11位という結果だったが、初めての箱根駅伝出場に向けて弾みを付けた。

全日本大学駅伝がなかった分、練習を積み、長い距離にも対応してみせた。11月20日の上尾シティハーフマラソンで、1時間03分17秒の自己ベストをマークし、チーム内3番手で走ったのだ。

「62分台を絶対に出すっていう目標を掲げていて、前半はしっかり先頭集団に付いて行けたんですけど、後半は実力不足が出てしまいました。箱根では62分台のペースで押していけるようにまとめていきたいです」

自己ベストにも、チーム内のメンバー争いで上位に付けたことにも浮かれることなく、目標タイムに届かなかったことに反省点を見いだしていた。戦うべき相手は、チーム内ではなく、他大学であることを痛感していたからだろう。

そして、メンバー選考がかかった伊豆大島での選抜合宿も乗り切り、箱根駅伝の16人のメンバーに無事にエントリーされた。

「箱根駅伝っていう目標があったので、きつくても頑張れるのかなと思います。今は下級生が強いんですけど、箱根では4年生が往路でしっかり良い流れをつくって、総合5位という目標に貢献していきたい」

第一線で競技をするのは大学まで。吉岡は、憧れ続けた舞台にすべてをぶつける覚悟を持って、集大成のレースに臨む。



よしおか・なおき◎2000年10月26日、京都府生まれ。166cm・57kg、B型。樫原中→桂高(京都)。帝京大4年時の出雲駅伝で学生三大駅伝デビューを飾り、2区11位。自己ベストは5000m14分23秒93(2022年)、10000m30分04秒12(19年)、ハーフ1時間03分17秒(22年)。

文・写真/和田悟志 写真/宮原和也

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