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2022-12-16

【箱根駅伝の一番星】無印からスターとなった青学大の近藤幸太郎は控えめな仕事人。最後の箱根では「主役」に

全日本では7区区間2位(区間新)の走りを見せた近藤幸太郎(青学大4年)。チームを2位に浮上させた

陸マガの箱根駅伝2023カウントダウン企画「箱根駅伝の一番星」では出場20校の注目選手を紹介。近藤幸太郎(4年)は、青学大の4年間で大学長距離界を代表する選手となり、駅伝では駒大の田澤廉と好勝負を繰り広げている。チームのために働く仕事人は、控えめで競争心をあまり表に出さないが、最後の箱根では「主役」を張ってほしい選手だ。

「みんなと優勝を喜べたら十分です」

無印の選手が、青学だけでなく、学生を代表するスターへ。

青山学院大の近藤幸太郎の4年間を振り返ると、「成長」ということを実感する。

入学時はそれほど目立つ存在ではなかったが、2年生の全日本大学駅伝で駅伝デビュー。しかし、2区で区間13位とほろ苦いデビューとなった。それでもこの経験が近藤を成長させる。

「タスキを受けてから、気持ちが焦ってしまい、結果的に突っ込んで入ってしまったんですよ。このレースからの学びは大きくて、区間全体をトータルでマネージメントしないと実力が発揮できないと分かりました」

言葉どおり、年明けの箱根では7区を走って区間3位と結果を残し、3年生への飛躍へとつなげる。

3年の秋、近藤は日本インカレの5000mで優勝すると、出雲駅伝の1区で区間賞。そして鮮烈な印象を残したのは全日本のエース区間である7区で、駒大の田澤廉(現・4年)との直接対決だった。

「ひょっとして、田澤君と競った位置で来るかなと思っていたら、まったく同じタイミングでタスキをもらいました(笑)」

結果、田澤から遅れること18秒差の区間2位。駅伝では、近藤が田澤に匹敵する力の持ち主であることを証明した。

そして年明けの箱根駅伝ではエースが集まる2区を任され、区間7位でまとめ、3区での首位奪取につなげた。

ここまで順調そのものだったが、2月の別府大分毎日マラソンの出場を前に故障が発生する。

「結局、7月くらいまで練習が積めませんでした。これまでほとんど休みなく走って来て、それで強くなったという意識があったので、自分としては不安で仕方がなかったです。でも、この期間がいい意味での“疲労抜き”になったとポジティブに考えるようにしました(笑)」

発想の転換や良し。9月の日本インカレでは5000mを連覇、出雲、全日本でもエースらしい走りを見せて箱根を迎える。最後の箱根に向けても自然体を崩さない。

「マスコミのみなさんは、『田澤君に勝ちたいです』って言葉を引き出したいと思うんですが……そんなことないですから(笑)。自分の力を発揮して、みんなと優勝を喜べたら、それで十分ですよ」
どこまでも控えめである。しかし、仕事はする選手だ。

そういえば、愛知県豊川市で過ごした時代、クラブ(TT Runnersとよはし)には後輩がいた。

「大和と駿恭の吉居兄弟(中大3年、1年)と一緒のクラブだったんです。大和は1学年下、駿恭は3学年下で。吉居兄弟も大活躍してますが、僕にとってはいつまでもかわいい弟みたいな存在です」

これまで取材してきた印象としては、近藤は心根がやさしい。競技者としては自分に厳しく、決めたことを継続してやり切る力がある。一方で、あまり競争心を表に出すことはなく、主役の座をなにがなんでも取りに行くという姿勢は見せない。

しかし、今度の箱根駅伝こそ、近藤が「主役」に躍り出ることが青学大の優勝には必須条件に思える。

近藤が主役を張ってこそ、青山学院の連覇は近づく。


こんどう・こうたろう◎2001年1月30日、愛知県生まれ。175cm・57kg、B型。代田中→豊川工高(愛知)。2年時の箱根駅伝で7区3位と頭角を現し、3年時には10000m28分10秒50、5000m13分34秒88と2種目で青学大記録保持者に(いずれも自己ベスト)。箱根2区でチームを2位に浮上させ、総合優勝の立役者となった。今季は日本インカレ5000mで連覇、出雲3区で区間3位、全日本では7区で49分52秒の区間新(区間2位)。自己ベストはハーフ1時間03分42秒(2019年)。卒業後はSGホールディングスへ。

文/生島 淳 写真/菅原 淳、JMPA

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