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2019-08-03

【ボクシング】5ヵ月ぶりの再戦。 竹迫司登が加藤収二を8回終了TKOで下しV3!

3日、東京・後楽園ホールで行われた日本ミドル級タイトルマッチ10回戦は、チャンピオンの竹迫司登(28 歳=ワールドスポーツ)が、1位の加藤収二(28歳=中野サイトウ)を8回終了棄権TKOで下し、3度目の防衛に成功した。両者は3月に対戦し、三者三様のドローを演じており、この日がダイレクトの再戦だった。

上写真=8回終了間際、竹迫の連打の中でゴングが鳴ったようだが、その後、加藤は崩れ落ちた。レフェリーはスリップダウンの裁定を下したが、インターバル中に挑戦者コーナーが棄権を申し出た

 前半は加藤。後半は竹迫。前回3月の初戦は、KO勝利を焦る竹迫を、サウスポーの加藤がインサイドからのショートパンチで翻弄してスタート。ちょうど折り返しのラウンドあたりから、藤原俊志トレーナーの指示に従った竹迫が、コツコツとショートブローで攻め返してポイントを挽回。辛くもドロー防衛に持ち込んだかたちだった。

「負けに等しいくらい悔しかった」という竹迫は、前戦の反省を充分に踏まえ、すり足をベースにした攻防を披露した。
 全勝全KO勝ち。重量級のハードパンチャーという期待が、無意識に重圧になっていたのだろう。力みが目立ったブローは、スイング系が多くなり、キレも欠く。そして、上体ばかりが突っ込んでしまい、下半身がついてこない。そこを加藤が的確に突いたのが初戦。
 しかし、この日は実にスムーズにリラックスして、足からの起動を徹底し、放つブローもストレート系が多く、実にコンパクトでシャープ。また、入り際に深く打ち込む右ボディアッパーが、加藤を釘付けにした。

コンパクトでシャープな連打を放ち続けた竹迫。ショートブローの得意な加藤に、付け入るスキをほとんど与えなかった

「冷静に細かい連打を打つ」。3月の後半にできたことを立ち上がりから実行し、それを基本線として、ビッグパンチも織り交ぜる。加藤はブロッキングの名手だが、竹迫の変化に対応できず、ロープを背負っての接近戦でも、前回のような効果的なショートブローを打ち込むことができなかった。

 それでも4回に左ボディアッパーを決めて竹迫の右ブローを伸びなくさせ、5回には右フックのカウンターで王者の動きを止めたのは加藤の執念だった。

 ピンチをクリンチなどでしのいだ竹迫は、それまで同様、上下の打ち分け、強弱のアクセントをつけた攻撃を続けていく。加藤は必死に腕のどこかでカバーして、ダメージを最小限に抑えようとするが、8回に連打にさらされると、それまでの蓄積が噴出してしまった。

 両者の大応援団の歓声の中、終了ゴングが打ち鳴らされたようだが、それはまったく聞こえなかった。連打の最中、レフェリーはストップの動きを見せたが、それもラウンド終了の合図なのか、それとも加藤を救うものだったのか、判然としない。その後、竹迫の左フックを食って、ロープ伝いに倒れこんだ加藤に、レフェリーはスリップダウンのジェスチャーをした。

 インターバルに入り、加藤は続行の意思を示したというが、齊藤一人会長は、「またチャンピオンになるチャンスは必ず来る」と、加藤の将来を考えて棄権を選択した。

「たまに力んでしまった」と反省を口にした竹迫だが、心をコントロールする術を得た、会心の勝利だった

 前戦の反省を大いに踏まえ、「すべてクリアできたと思う」と合格点を与えた齊田竜也・ワールドスポーツジム会長と藤原トレーナーによる戦術・戦略は見事だった。それを実行した竹迫も、この試合がひとつのきっかけとなって、さらに飛躍する可能性を感じる。
 そして、冷静な判断で加藤を救った齊藤会長の決断もまた立派だった。

 竹迫の戦績は12戦11勝(11KO)1分。加藤の戦績は14戦10勝(6KO)2敗2分。

文_本間 暁
写真_馬場高志

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