12日、東京・後楽園ホールで行われたWBA女子世界フライ級タイトルマッチ、チャンピオン藤岡奈穂子(竹原&畑山)と挑戦者でWBO女子世界ライトフライ級チャンピオン天海ツナミ(山木)の10回戦は、三者三様のドロー。藤岡が2度目の防衛に成功し、天海は3階級制覇に届かなかった。
写真上=藤岡を右で攻める天海
「今は何も考えられません……」
辛くもタイトルを守った藤岡は、敗者のように沈み込んだ。大阪のダブル世界戦と時間が重なりながらも、満員2000人をホールに集めた女王対決。日本の女子ボクシングを黎明期から支えてきた2人のチャンピオンは場内を大いに沸かせたものの、フルラウンドの戦いの末、決着はつかなかった。
前半戦を支配したのは34歳の天海だ。43歳の藤岡より激しく動き、的確な左のリードで先手をとっては右につなげる。フットワークの良さも藤岡の想定を上回り、初回からポイントを積み重ねていった。
焦りを募らせた藤岡は空振りを多発し、バランスを乱したところに天海のパンチを狙い打たれる。4回には藤岡の右目の腫れが目立ってきた。場内に轟く藤岡コールの中、危機感が高まっていく。
しかし、藤岡もただでは終わらなかった。7回から強引なまでに天海を追い、ワンツーを繰り出す。天海の柔軟な体を活かしたディフェンスに当たりは浅かったが、とにかく攻勢は印象づけ、最後は天海を上回るスタミナを見せて終了ゴング。判定は96対94で天海、95対94で藤岡、残る1人は95対95だった。
「相手のパンチは外せていたし、ジャブも当たっていた。そのあと手数を出せなかったのは課題です」。そう言って涙も見せた天海に、山木敏弘会長は「負けたみたいな言い方するな。見ていた人は、どっちが勝ったか分かってる」と叱咤。陣営は、藤岡をさばききったと確信していた。
「勝てば次のステップを考えていたし、負ければ引退と思っていた」という藤岡。「どっちでもなかったので、どうしたらいいか分からない」と、今後については白紙とした。天海については「評判以上のすごい実力」と称え、再戦を問われると「もうやりたくないです」ときっぱり否定した。女子最大のライバル対決は、互いに悔しさを残して幕を降ろした。
文◉藤木邦昭
写真◉菊田義久
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