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2023-01-17

【相撲編集部が選ぶ初場所10日目の一番】高校後輩と同学年ライバル。貴景勝追う平幕2人が2敗を守って勝ち越し

一瞬足を掬われながらも、反応良く突き落としを決めた琴勝峰。終盤まで優勝争いを盛り上げられるか

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琴勝峰(突き落とし)宇良

出場力士中番付最上位の責務に耐え、優勝争いの先頭を走る貴景勝が、この1年間2勝2敗と嫌な相手の明生を、一瞬廻しを取られながらも左からの小手投げで投げ捨てた10日目。1差で追う平幕の阿武咲と琴勝峰もともに白星を挙げ、2敗を守って勝ち越しを決めた。
 
2人のうち、先に土俵に上がったのは琴勝峰。相手は業師の宇良だ。過去、十両以下で2度、幕内で1度対戦しているが、琴勝峰は勝ったことがなかった。押してくる可能性もあれば、足取りを狙ってくる可能性もある宇良は、琴勝峰にとってあまりやりやすい相手ではないようだ。
 
それでもこの日は恐れず、まず立ち合い攻め込んだ。左に回る宇良を向正面に一気に攻め込みそのまま体を預ける。しかし今場所好調の宇良も粘って右で相手の左を掬うようにして最後は突き落とし。軍配は琴勝峰に挙がったが同体取り直しとなった。
 
取り直しの一番。今度は琴勝峰は攻め方を変え、よく見て突く作戦に変更した。一瞬頭を下げてくる宇良の立ち合いにも動じず、小刻みに突きを繰り出す。ただ、腰を引きながらの突きなので攻め切るには至らない。そうこうするうちに宇良に潜られ、一瞬右足を足取りから小股掬いに変わる形で掬われた。しかし琴勝峰のとっさの動きもさえていた。そのまま切り返しに来るところを左からの突き落とし。宇良を振りほどき、土俵に転がした。
 
今場所の琴勝峰は、立ち合いから相手を圧倒するような相撲はそれほどないが、相手に上手を許しながらも、投げに来るとみるや体を寄せて寄り倒した水戸龍戦や、モロ手突きを跳ね上げられながらも崩れずにすぐ向き直って突き勝った千代丸戦など、攻め合いの中での反応と動きの良さが目立つ。「上半身に力を入れすぎないというか、塩梅がまだ難しいんですけど、それが今場所は割とうまくいっているかな」と、やや上体に頼って取っていたここ数場所から、いいバランスに変化しているようだ。
 
大関貴景勝の埼玉栄高の3年後輩。「自分はもう後ろからしがみついていくだけなので、挑戦していく気持ちでやっていきたい」。このチャレンジャー精神が生きるようなら面白い。
 
そしてもう一人、その4番あとに土俵に上がった阿武咲は、青森・三本木農高の同期生の錦富士を、左差しから一気の寄り切り。「一歩目を研究した」と話しているが、今場所は立ち合いが素晴らしく、立ち合いで先手を取れなかったのは8日目の錦木戦だけ。立ち合いで攻め込めているので、そのまま差して攻め切る相撲も今場所は見られる。
 
こちらは、貴景勝とは同学年で、子供のころからのライバル。“大関を追いかけたい”の問いには、「その気持ちはありますけど、(それ以前に)その日の自分の相撲をしっかり出し切れれば」と、“一日一番”の集中力で臨む。
 
明日11日目は、この2人の対戦が組まれ、まずは貴景勝への挑戦者を決めるサバイバル戦。どちらかは3敗に後退することになるが、見方を変えれば、明日終了時点でも優勝争いは1差継続か、または並びになるということ。貴景勝にとっては、まだまだ一番一番、重圧のかかる戦いが続きそうだ。

文=藤本泰祐

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