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2023-01-31

【NFL】スーパーボウルは、チーフス対イーグルス カンファレンスチャンピオンシップはディフェンスが勝負決める

【イーグルスvs49ers】イーグルスOLBレディックにサックされファンブルする49ersのQBパーディ。このプレーが試合を大きく左右した=photo by Getty Images

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 アメリカンフットボールの世界最高峰、米プロフットボール・NFLは現地1月29日(日本時間30日)、NFC、AFC両カンファレンスのチャンピオンシップが行われた。NFCはフィラデルフィア・イーグルス(レギュラーシーズン14勝3敗、第1シード)がサンフランシスコ49ers(同13勝4敗、第2シード)に完勝。AFCはカンザスシティ・チーフス(同14勝3敗、第1シード)がシンシナティ・ベンガルズ(同12勝4敗※、第3シード)を僅差で破った。
 この結果、現地2月12日に開催される第57回スーパーボウルは、チーフス対イーグルスの顔合わせとなった。AFCのチーフスは2年ぶり5回目、NFCのイーグルスは5年ぶり4回目のスーパーボウル進出。両カンファレンス共に第1シードのチームが対戦するのは、2017年シーズンのペイトリオッツ(AFC)対イーグルス(NFC) 以来5年ぶり14回目となった。チーフスは3年ぶり3回目の、イーグルスは5年ぶり2回目のスーパーボウル制覇を目指す。


 ミーンなディフェンスがゲームを決めた両カンファレンスチャンピオンシップを振り返った。

※ベンガルズは、第17週の対ビルズ戦が中止となったため1試合少ない。

QBパーディー重傷、49ersオフェンスが機能不全

NFCチャンピオンシップ
フィラデルフィア・イーグルス○31-7●サンフランシスコ・49ers
(2023年1月29日 ペンシルバニア州フィラデルフィア リンカーンフィナンシャルフィールド)
NFCチャンピオンシップ【イーグルスvs49ers】イーグルスOLBレディック(#7)が、49ersのQBパーディーをファンブルさせてボールをリカバー=photo by Getty Images

 結果的には大差となったが、本来両チームの力の差がそこまであったわけではない。ただ49ersは試合途中で、本来のオフェンスを失ってしまった。

 1Q、チームの救世主として、12月以降目覚ましい活躍を続けてきた、2022年ドラフト最下位指名の「ミスター イレレバント」QBブロック・パーディーが利き腕の肘を負傷した。替わって登場したベテランの控えQB、ジョシュ・ジョンソンは、脳震盪で退場となった。パスがほぼまったく投げられないにもかかわらず、パーディーが再度出場するほかは無かった。

 レギュラーシーズンのパスディフェンスはNFL1位、QBサックは、史上3位となる70を記録したイーグルスディフェンスは、情け容赦がなかった。

 イーグルスのDEジョシュ・スウェットは 「QBが誰でも関係なかった。ただ狩りをしていただけだ」と試合後に語った。

 パーディーの負傷は1Q残り7分。2nd&6ヤードでパスを投げようとしたが、イーグルスのOLBハサン・レディックに襲い掛かられた。一度はパス失敗の判定が下ったが、イーグルスのチャレンジでファンブルロストとなった。

 それにもまして痛かったのは、このプレーで、パーディーはパスを投げられなくなってしまったことだ。49ersが軽量・スピード派のレディックに対してTEをブロッカーにしていたのが裏目に出た。

 スタッツ上は、イーグルスディフェンスのQBサックは、3にとどまったが、それは49ersがそもそもパスを投げられなくなってしまったからだ。イーグルスはQBプレッシャー18回、ヒット7回、タックル・フォー・ロス7回、ファンブルリカバー3回と、フィールドを支配した。49ersは164ヤード、ファーストダウン更新11回と完全に抑え込まれ、なにもできないまま2年連続でチャンピオンシップ敗退となった。

 イーグルスは、オフェンスの59プレー中、44プレーでランを選択。マイルス・サンダース、ケネス・ゲインウェルの2人のRBに加え、QBジェイレン・ハーツも加わってボールコントロールに徹した。

 トータルディフェンスでは、イーグルスを上回るNFL1位の49ersは、イーグルスのオフェンスを269ヤードと抑えたが、味方の得点を望めない状況は、チーム全体の焦りにつながった。要所でミスや反則が出て、失点を重ねた。終わってみれば一方的な展開となった。

 ディフェンスも、オフェンスも、ミーンなフットボールに徹して、スーパーボウル出場をつかみ取ったイーグルス。

 QBハーツがOLBレディックについて語った言葉「あいつは本当に、シーズン通して(敵に対して)ワルい奴だったよ。それは、我々が前に進むために必要としていたものだった」が、この試合を象徴していた。

NFCチャンピオンシップ【イーグルスvs49ers】往年の名QBブラッドショーからインタビューされるイーグルスQBハーツ=photo by Getty Images

 試合後、49ersのQBパーディーの負傷は、右肘の内側側副靭帯(ないそくそくふくじんたい/UCL)を完全に断裂していたことが明らかとなった。復帰には最短で6カ月かかるとNFLネットワークは伝えており、49ersにとっては、来季のチーム構想が根底から覆る可能性もある。

チーフス、ディフェンスの勝利 QBバロウに5サック、2INT 

AFCチャンピオンシップ
カンザスシティ・チーフス○23-20●シンシナティ・ベンガルズ
(2023年1月29日 ミズーリ州カンザスシティ GEHAフィールド@アローヘッドスタジアム)
AFCチャンピオンシップ【チーフスvsベンガルズ】AFCを代表するQB対決に勝ったチーフスのマホームズ。背中はベンガルズのバロウ=photo by Getty Images
 2年連続で同じ顔合わせとなったが、チーフスが試合時間残り8秒から、Kハリソン・バトカーの45ヤードFG(フィールドゴール)で決勝点を挙げた。

 決勝点の場面を振り返る。20-20の同点で、試合は残り17秒。チーフスのオフェンスで、3rd&5、ボールオンは47ヤードで、FGにもとても遠かった。前年に続いて、オーバータイム入りかと思われていた。

 チーフスは、マホームズがパスを投げると見せてスクランブル、ランでファーストダウンを奪いに出た。元々は走力のあるQBだが、1週間前のディビジョナルプレーオフで足首を痛めており、ベンガルズにも油断はあったかもしれない。

 油断を突かれた思いからか、2年目のLBジョセフ・オサイがパシュートして、マホームズを突き飛ばした。

 しかしそれよりも早くマホームズはサイドラインに出ていた。アンネセサリーラフネスの反則となって、チーフスは15ヤード前進。ベンガルズには致命傷となった。バトカーの決勝FGにつながったのだった。オサイはサイドラインで涙ぐんでいた。

 ただ、オサイ1人が敗戦の責を負う試合内容ではなかった。点差こそ競り合いとなったが、試合内容的にはチーフスが常に主導権を握っていた。チーフスは、特にディフェンスが、今季のベンガルズをしっかり分析し、対策を立てていた。

 まずはベンガルズのランを止めた。1週間前のビルズ戦で105ヤードを走ったRBジョー・ミクソンを止め、2番手のサマジー・ピーラインにも走らせなかった。そして、QBジョー・バロウには、徹底してプレッシャーをかけた。この試合2QBサックのDTクリス・ジョーンズを中心に、バロウに5サックを浴びせた。

 レギュラーシーズンで、バロウが5回以上サックされたのは、開幕週のスティーラーズ戦(7サック)、第2週のカウボーイズ戦(6サック)、第8週のブラウンズ戦(5サック)の3試合で、いずれもベンガルズが敗れている。

 そして、バロウは2インターセプトも喫した。本来のベンガルズの勝ちパターンではなかった。それでも、よくここまで粘って追いついたのは、今季のベンガルズの成長だった。

 【チーフスvsベンガルズ】ベンガルズQBバロウをサックするチーフスDTジョーンズ=photo by Getty Images

 チーフスは、足首を負傷して、危ぶまれていたマホームズが、パスに徹して326ヤード2TDとエースの本領を発揮した。今季加入の大型WRマーキーズ・バルデススキャントリングが116ヤード1TD 、さらにエースRBに成長した、ドラフト7巡251位指名のルーキー、アイザイア・パチェコも、ランでは26ヤードと抑え込まれたが、パスレシーブで59ヤードと活躍した。もちろんホットラインのTEトラビス・ケルシーは78ヤード1TDと結果を残した。

 ケルシーはこの試合の前に行われたNFCチャンピオンシップで、2歳上の兄、ジェイソン(イーグルスC)が既にスーパーボウル出場を決めており、兄弟対決となった。

 2年ぶり、この5シーズンで3回目のスーパーボウルとなったチーフス。ディフェンスでも2年目のLB ニック・ボルトンや、ルーキーDEジョージ・カーラフティスが活躍しており、この2年で、戦力は確実に上積みされている。新たなダイナスティー(王朝)を築くために、強力でミーンなフットボールを展開するイーグルスと最後の大勝負に臨む。

       ◇

 
 第57回スーパーボウルは、2月12日にアリゾナ州グレンデールのステートファーム・スタジアムで開催される。
 

【小座野容斉】

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