close

2023-04-05

変形性ひざ関節症教室 第13回 変形性ひざ関節症の種類 「外側型」と「膝蓋大腿関節症」

ひざは健康寿命延伸の要の関節。ところが、中高年になると、ひざ関節の軟骨がすり減り、「ひざが痛い」「水がたまる」「痛くて長く歩けない」「ひざか変形した」などといった症状に悩む方が増えてきます。本連載では、ひざの専門医・田代俊之ドクターが、変形性ひざ関節症の症状と治療について、やさしく解説していきます。前回(連載12回)は3タイプある変形性ひざ関節症のうち、最も患者さんが一番多い「内側型」を紹介しました。今回は「外側型」と「膝蓋大腿関節症」について紹介します。

外側型変形性ひざ関節症

変形性ひざ関節症には3つの種類があります。そのほとんどが「内側型」という、ひざの内側の軟骨が摩耗するタイプですが、外側の軟骨がすり減る「外側型」というタイプもあります。外側型の変形性ひざ関節症では、X脚変形が進みます。

 外側型の患者さんは日本では少ないのですが、欧米人には多いようです。外側型には特定の原因があることが多く、股関節や足関節など隣接する関節の変形や、ケガなどで左右の脚の長さが違っていることなどが原因で、ひざの外側に負担がかかり、外側型に進むことがあります。さらに、外側半月板の変性や断裂が原因となり、ひざの外側の軟骨が変性することもあります。症状は内側型と同様です。

 片方のひざが内側型、もう一方のひざが外側型の場合を、wind swept(ウインドスウェプト)変形といいます。wind swept は風に吹かれたという意味で、左右両方のひざ関節がどちらかの方向にともに倒れたような変形を示します。


レントゲン画像:田代俊之  イラスト:庄司猛

膝蓋大腿関節症(しつがいだいかんせつしょう)

 変形性ひざ関節症の3つのタイプのうち、最後に「膝蓋大腿関節症」を紹介しましょう。

 ひざの関節といえば、大腿骨と脛骨でつくられる大腿脛骨関節が代表的ですが、もう一つ、ひざのお皿の骨である膝蓋骨と大腿骨との間に「膝蓋大腿関節」があります。この関節も負担が増加すると、軟骨がすり減り、変形性ひざ関節症になることがあります。

 ひざ屈曲位で大腿四頭筋(太ももの前側の筋肉)に力を入れると、膝蓋骨が大腿骨に圧着(押し付けられる)される力がかかります。この状態でひざを曲げ伸ばしすると、膝蓋骨と大腿骨の関節面がこすれ、軟骨がすり減ることになります。深く屈曲するひざの伸ばしを長年続けていると、膝蓋大腿関節症と呼ばれる変形性ひざ関節症になることがあります。

 また、膝蓋骨は正常では大腿骨の谷の中を上下に動きます。膝蓋骨の脱臼を繰り返している人は、膝蓋骨が横に動くことにより、さらに軟骨がすり減りやすいと考えられます。膝蓋大腿関節症の症状としては、イスからの立ち上がりや階段を上るときにひざ前面が痛むことが特徴です。

レントゲン画像:田代俊之  イラスト:庄司猛


プロフィール◎田代俊之(たしろ・としゆき)さん
JCHO東京山手メディカルセンター整形外科部長
1990年山梨医科大学卒業後、東京大学整形外科入局。東京逓信病院、JR東京総合病院勤務をへて、2014年に東京山手メディカルセンターへ。2017年4月より現職。ひざ関節の疾患を専門とし、靭帯損傷、半月板損傷、変形性関節症などについて、長年にわたって幅広く対応している。2004年より中高齢者に向けたひざ痛教室を毎月開催している。日本整形外科学会専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。陸上競技実業団チーム(長距離)のドクターも務める。

この記事は、ベースボール・マガジン社の『図解・即解!基礎からわかる健康シリーズ 変形性ひざ関節症』(田代俊之著、A5判、本体1,500円+税)からの転載です(一部加筆あり)。 Copyrightⓒ2022 BASEBALL MAGAZINE SHA. Co., Ltd. All rights reserved.

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事



RELATED関連する記事