ひざは健康寿命延伸の要の関節。ところが、中高年になると、ひざ関節の軟骨がすり減り、「ひざが痛い」「水がたまる」「痛くて長く歩けない」「ひざか変形した」などといった症状に悩む方が増えてきます。本連載では、ひざの専門医・田代俊之ドクターが、ひざ関節の構造と機能、変形性ひざ関節症の症状と治療について、やさしく解説していきます。今回のテーマは、立ったり歩いたりするために重要な「ひざの構造」について。ひざがどんな構造をしてるのか知りましょう。
ひざは身体の中で2番目に大きい関節 骨と骨のつなぎ目の部分を関節といいます。ひざ関節は人体の中で股関節(こかんせつ)に次ぐ大きな関節です。人が安定して立ったり歩いたり、走ったり跳んだりするために非常に重要な役目を担っています。
ひざ関節を構成する骨は4つあります。太ももの骨である大腿骨(だいたいこつ)とすねの骨である脛骨(けいこつ)の間にある大腿脛骨関節は、体重を支えるうえで最も大切な関節です。ひざの前面にはお皿と呼ばれる膝蓋骨(しつがいこつ)、脛骨の外側には腓骨(ひこつ)という細い骨があります。
骨の先端には軟骨があります。軟骨は体重を受け止めるクッションとして、さらに関節の滑らかな動きにも重要な働きしています。ひざ関節には骨同士をつなぐ靭帯が4本あります。ひざの内側に内側側副靭帯(ないそくそくふくじんたい)、外側に外側側副靭帯(がいそくそくふくじんたい)、ひざの中に前十字靭帯(ぜんじゅうじじんたい)と後十字靭帯(こうじゅうじじんたい)があります。
大腿骨と脛骨の間には半月板(はんげつばん)というクッション状の組織があります。内側にあるのが内側半月板、外側にあるのが外側半月板です。関節は関節包(かんせつほう)という袋に包まれています。関節包を内張する滑膜(かつまく)は、関節液をつくったり吸収したりしています。
イラスト/石川正順
関節軟骨の弾力性と潤滑性が、ひざの骨を守り滑らかな動きを促す 関節(骨と骨のつなぎ目)の先端は、厚さ3~5ミリ程度の軟骨に覆われています。軟骨には、クッションとして骨を守る役目(弾力性)と関節を滑らかに動かす役目(潤滑性)があります。
【弾力性】軟骨の特徴は、成分の65~80%が水分であることです。水をたくさん含んだスポンジみたいなもので、関節に圧力がかかっていないときは水分で満たされ、圧力がかかると中の水分が押し出されます。
この仕組みが骨を守るクッションとして有効に働いており、実際の軟骨を押すと、えくぼのように凹みます。もし軟骨のクッションがなかったら、骨と骨とが直接関節で当たり、骨はどんどんすり減ってしまいます(⇒変形性ひざ関節症に進んでいく)。
また、軟骨には血管や神経がなく、栄養供給がされにくい組織です。軟骨のスポンジ機能は、関節液に含まれる栄養や酸素を取り込んで、軟骨に与えるメカニズムにもなっています。
【潤滑性】軟骨の表面は氷の5~8倍滑らかです。摩擦が少ないために、関節は頻回に使っても摩擦によるすり減りが少なく、スムーズに動かすことができます。
プロフィール◎田代俊之(たしろ・としゆき)さんJCHO東京山手メディカルセンター整形外科部長1990年山梨医科大学卒業後、東京大学整形外科入局。東京逓信病院、JR東京総合病院勤務をへて、2014年に東京山手メディカルセンターへ。2017年4月より現職。ひざ関節の疾患を専門とし、靭帯損傷、半月板損傷、変形性関節症などについて、長年にわたって幅広く対応している。2004年より中高齢者に向けたひざ痛教室を毎月開催している。日本整形外科学会専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。陸上競技実業団チーム(長距離)のドクターも務める。