上写真=父ラウルさんの“攻撃”を、きっちりヒジでガード。徹底した防御重視のスタイルを披露した
30日(日)、東京・大田区総合体育館で行われるWBC世界ライトフライ級タイトルマッチ12回戦で、5度目の防衛戦を行う拳四朗(26歳=BMB)。その挑戦者で8位のサウル・フアレス(28歳=メキシコ)が、東京・神楽坂の帝拳ジムで練習を公開。父ラウル・トレーナーとのミット打ち、サンドバッグ打ち、スピードボール、パンチングボールなどを披露し、“ディフェンス重視”スタイルを印象づけた。
父ラウル・トレーナー、兄ラウルともに元ボクサー。兄にいたっては、3度来日経験があり、勇利アルバチャコフのWBCフライ級王座、川島勝重のWBCスーパーフライ級王座に挑み、いずれも判定負けしたものの、堂々たる世界ランカーだった。
「兄の姿を見て」ボクシングを始めたというサウルは、父曰く、「節制のできる、非常に規律正しい選手。そして豊かな才能がある」。かつてはオスカル・バルデス、レイ・バルガスといった現世界チャンピオンとともにトレーニングを重ねて腕を磨き、同国の強豪と数多く戦ってきた。
2016年8月には、WBCミニマム級王者ワンヘン・ミナヨーティン(タイ)に敵地で挑み判定負け。「あの試合で、自分のキャパシティや能力を知り、それを生かして」今回のチャンスを得た。
「ケンシロウのことは、ガニガン・ロペス(メキシコ)との試合で知った。いまは彼も海外で有名で、いつかケンシロウと戦いたいと、ずっと待ち望んでいたんです」。兄が成し得なかった世界チャンピオンになることももちろんだが、拳四朗との対戦がモチベーションにもなっているのだ。
アマチュアで「78戦して70勝。ナショナル王者に2度、ゴールデングローブも獲得しました」。プロの戦績は34戦24勝(13KO)8敗2分。前述どおり、強豪と戦って敗戦も多いが、「良い選手と戦って、それで負けても自分に能力があると疑わなかった。敗北は気にしない。とにかくいい試合をしたい。そういう気持ちで常に戦っているんです」。メキシコ独特の“アスタ・マニャーナ(明日があるさ)”思想だが、決して能天気なタイプではなく、信念の人と感じる。
父ラウルさんとのミット打ちは、メキシカン特有の非常に味のあるものだった。特に目を惹いたのはディフェンス。寺地永会長も「前回の(ミラン・)メリンドよりも、常に頭の位置が動いているので、拳四朗のパンチはなかなか当たらないと思う。いつものスタイルでいけば、判定で勝てると思うけれど、どこかで足を止めないと。いい試合をするポイントです」と警戒する。加藤健太・三迫ジムトレーナーも、「相手を引きこんで打つタイプ。不用意に入らないよう気をつけたい。焦らずジャブで距離をキープ。当てても、体は“棒”の距離感を保ちたいですね」と話す。
そして寺地会長、加藤トレーナーともに、「前回以上にプレッシャーをかけていくことになると思う」と口をそろえた。
ところで、メキシカンといえば底抜けに明るいイメージがあるが、このフアレス父子はどちらかというとおとなしめ。特にラウルさんは物静かで、息子サウルは、おとなしずぎずうるさすぎずのちょうどいい案配。だが、話が日本のアニメにおよぶとテンションMAXになった。
「小さいころに観た『ドラゴンボール』の大ファン。だから日本には前から興味があったんです」
キャラクターでいえば、ベジータ好きだそう。他にも「ナルト、ワンピース…格闘系が大好きなんです。もちろん『ケンシロウ』も知ってますよ。でも、試合では“ベゲータ”(スペイン語ではこういうらしい)が勝ちます。スーパーサイヤジンになりますよ!」と喜色満面。
そんなベゲータが勝つためには──。
「スピードで勝負したい。父も兄も自分も『継続的に攻撃を仕掛けること』が勝利へのカギだと思っています」。拳四朗の距離を、果たして潰すことはできるだろうか。
文&写真_本間 暁
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