写真上=関島の左フックが太田をヒット
写真◎小河原友信
最近のボクシング界は、親子鷹であふれかえっている。実の父親だからこそ知る息子の美点、心の在りかがきっとある。だから、親子で育てるボクシングは強い。
全日本スーパーフェザー級新人王に輝いた関島優作(KG大和)もそうだ。トレーナーは実の父、祝巳さんだ。横浜高校時代、アマチュア史上に残る名選手、副島初見や竹下鉄美(後の日本チャンピオン)らとともに国体の団体優勝を勝ち取った。息子・優作が中部日本の雄、太田卓矢(とよはし)を冷静にさばききって、ルーキーチャンプの栄冠を手に入れた。それができたのも、祝巳トレーナーのミットに刻み込んでの導きがあればこそだった。
最初から関島は自分のペースで戦った。大柄な相手にあえて距離を作り、太田の単調な前進を誘い出した。そこにタイムリーなジャブ、右ストレートを打ち込む。左フックも効果的だった。コーナーに詰まっても、すぐさま連打で切り返し、流れを渡さない。最終回、倒すしかないとばかりに太田が猛アタックを仕掛けると、逃げ切りを意識したか、関島は見栄えの悪い3分間を過ごすことになる。ただし、それまでのポイントは大きく、3ジャッジすべてが49対46とスコアしていた。
「相手のガードはルーズでしたし、スピードでは自分の方が上でした。でも、気持ちでは負けていましたね」
関島はクールに試合を振り返る。最終ラウンドの減点材料はあっても、丁寧な攻防の切り口が光った。同時にもっと大胆に戦えなかったか、守勢になったときにもっと手際よく処理できなかったか。これらは再び父子で解決すべき課題点なのだろう。
「まずはA級で戦っていけるだけの力を身につけることです。ユースタイトルもありますが、日本タイトルとかは3年後でいいです。最後の目標は4年後になんとかものにしたい」
純な野心を慎重に育てていくつもり。
ふだんは明治大学文学部に通う学生だ。愛読書はと聞けば、伊藤左千夫の『野菊の墓』という。この小説のように、淡く、切なく、そしておぼろなままに、関島のボクシング愛は閉じてほしくない。そして、好きなボクサーは「ホルヘ・リナレス」。こちらも実に清いボクシング・テクニックの使い手である。けなげな黄色の絵筆で、どこまでも力強く一直線に描ききりたい。
取材◎宮崎正博
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