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2023-05-14

【相撲編集部が選ぶ夏場所初日の一番】大歓声に迎えられた「新生・朝乃山」、2年ぶりの幕内の土俵を白星で飾る

右の差し手の返しで相手を浮き上がらせる力強い相撲で、約2年ぶりの幕内の土俵で白星を挙げた朝乃山。大関復帰へ向け、ここからが勝負だ

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朝乃山(寄り切り)千代翔馬

「十両と幕内は違う。緊張感はありました。まず土俵入りから違いました」

2年ぶりに上がる幕内の土俵を、そう表現した。元大関の朝乃山が、幕に帰ってきた。幕内力士土俵入りでは誰より大きな歓声を受け、そして緊張感を持ちつつ上がった取組の土俵では、千代翔馬を落ち着いて寄り切り、幸先よく初日白星を挙げた。

この日の相手の千代翔馬は同じ一門ではあるが、立ち合いの変化もあり、緊張感のある初日としてはちょっと嫌な相手。だがそれでも、「自分の相撲は自分の形に持ち込むしかない。考えるより前に出ようと。しっかり踏み込んでつかまえれば、自分の形で取れると思っていました」と、朝乃山の立ち合いに迷いはまったくなかった。しっかり当たると右差し。左は廻しには手がかからなかったが、そのまま抱え、右の腕の返しで相手を浮き上がらせて一気に赤房下に運んだ。この白星は、幕内では725日ぶりの勝利だ。「(725日ぶりという数字も)ネットのニュースとかで見て、知っていますよ」と、取組後の取材での口ぶりも、出場停止からの復帰直後と比べると、だいぶ柔らかくなってきた。

それでも、以前に幕内にいたときとの違いは、しっかりと意識している。「新入幕のときは挑戦者の気持ちで生き生きと取れていましたが、今回は前の(大関という)番付があるので、それがプレッシャーにはなっています。それに打ち勝てるように。負けても前に出る相撲を取りたい」と話し、さらにはこの日の快勝にも「上体が起き上がっているので、低い姿勢でいきたい。まだ初日なんで。序盤5日間が大事」と冷静さを貫く。

「5月場所は、優勝したゲンのいい場所でもありますが、同時に不祥事を起こした場所でもあります」と朝乃山。もちろん不祥事を起こしてしまった過去は変えられないが、発言を見ても、朝乃山自身は出場停止を挟んで明らかに変わった。

「きょうは白星というより、お客さんの前で相撲を取れたことがうれしい。皆さんお忙しい中、足を運んでくださっているので」と、この日も勝敗のこと以上に、出場停止を経て戻ってきて以来、常に表し続けている、相撲を取れることに対する感謝の念を口にした。

「再入幕が決まったときに“ここからが本当の勝負”という気持ちにはなりました」

生まれ変わって、再び大関へ。1勝はしたが、まだここからだ。元大関の再挑戦が、今、始まった。

文=藤本泰祐

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