アメリカンフットボールのXリーグ「X1 エリア」の「ジュニアパールボウルトーナメント」は、6月17日に決勝があり、富士フイルム海老名ミネルヴァAFCが、警視庁イーグルスを破って優勝した。ディフェンス陣の奮闘で警視庁に得点を許さなかった。富士フイルム海老名の優勝は、富士ゼロックス以来2度目。渡部滋之・日本社会人アメリカンフットボール協会理事長から小原清之朗主将に優勝トロフィーが手渡された。
富士フイルム 海老名 ミネルヴァAFC ○14-0● 警視庁イーグルス（2023年6月17日、富士通スタジアム川崎） 富士フイルム海老名が堅固なフットボールで、警視庁をシャットアウトした。第1Qは両チームパントの応酬となったが、富士フイルム海老名は警視庁の2度目のオフェンスシリーズで、ファンブルリカバー。レッドゾーンからのオフェンスで、エースQB鈴木貴史がWR小山昭瑛にTD（タッチダウン）パスを決めて先制した。
富士フイルム海老名は、第2QにK兼Pの大野郁也の好パントで、警視庁をゴール前に張り付けて次のオフェンスはゴール前22ヤードからのスタート。今度は、ランでファーストダウンを重ねると、RB大迫亮太がエンドゾーンに飛び込んでリードを2TD差に広げた。
後半は、警視庁がQB斎藤詩伸のパスを中心に反撃を試みた。しかし、富士フイルム海老名ディフェンスが進まれながらも、要所で抑えてドライブを継続させず。第4Qの反撃も、DL窪田弦太郎のQBサックで大きくロスさせるとその後の斎藤のパスも失敗に追い込んで、勝ち切った。
ディフェンスとキッキングの勝利 富士フイルム海老名はオール三菱ライオンズを、警視庁はペンタオーシャン・パイレーツを準決勝で撃破しての決勝。共にかっては格上の相手だった実力派チームを破った勢いのあるチーム同士の対戦は、ディフェンスとキッキングが勝敗を分けた。フットボールで万古不変の法則に当てはまる決勝となった。
富士フイルム海老名のK兼P大野が、巧みなパントでフィールドポジションをコントロールした。第2Qにはゴール前2ヤード、第4Qにはゴール前4ヤードのパントを決めたが、前者は2本目のTDにつながり、後者は警視庁にロングドライブを強いるものとなった。
朝倉孝雄HC（ヘッドコーチ）も、この試合のMVPは？との質問に「大野です」と即答したほどだ。信じられないことに、大野は今年2月にアメフトを始めたばかり。阪南大まではサッカー一筋で、ゴールキーパーとして、ピッチに立っていた。
Jリーグでのプレーを希望したが、180センチでは身長が足らず、全チームから門前払い。「あと5センチ大きければ、話を聞いた」と言われたこともあったという。心機一転新たな戦いの場を求めて、今年からアメフトを始めた。
大野に負けじと、富士フイルム海老名はフレッシュな選手たちが躍動した。
先制TDは、警視庁のサードダウンのランをタックルしてファンブルさせると、ルーキーLB安東竜志がリカバーしたのがお膳立てとなった。安東は一般入部ながら名門・日大の主将まで上り詰めた真面目で熱い選手。この試合でも5.5タックルでタックルリーダーとなった。
安東の日大の先輩で、2年目のDL窪田も、真夏日のフィールドでQBを追いかけ続け、第4Qの勝負所でサックを決めて、雄たけびを上げた。このサックで、警視庁はサードダウン22ヤードと追い込まれ、勝敗の流れが大きく変わった。
先制TDパスレシーブの小山は2年目で、法政大のエースだったWR。2本目のTDをランで決めた。2本目のTDをランで決めた大迫亮太は今季福岡SUNSから移籍のパワーランナー。琉球大では2年連続で主将を務めた。
選手層の厚さも、勝敗に影響した。富士フイルムの登録メンバーは63人。窪田や2年目の西崎州茉（桜美林大）ら、DLに人材が揃い始めている。この日もDLをローテーションしていたために、30度を超す暑さの中でも、パフォーマンスが落ちなかった。パイレーツ戦でラン136ヤードの警視庁ランオフェンスを73ヤードに封じこんだ。警視庁が業務の都合で主力RBを欠いたとはいえ、富士フイルム海老名は、課題のだったランディフェンスの強化でも結果を出しつつある。
富士フイルム海老名は今春、4月に胎内ディアーズ、オービックシーガルズと合同練習、5月以降は、ノジマ相模原ライズ、東京大学ウォリアーズ（関東大学TOP8)と交流戦。その間にこのジュニアパールボウルトーナメントがあった。トーナメントでは、品川CCブルザイズ、オール三菱、警視庁と戦った。
1カ月半、5試合で4勝1敗という勝敗は、「春は結果にこだわって試合をしたい」と語っていた朝倉HCの意図通りになった。だが、「まだまだ、オフェンスがもっと得点力を付ける必要がある」と、朝倉HCは表情を引き締める。トーナメント3試合はいずれも20点に届かなかったからだ。
春シーズンは最高の形で終えることができたが、本番の秋シーズンまでは2カ月余りしかない。チームの悲願、X1スーパー昇格を目指して、富士フイルム海老名は、さらなる強化を続けることになる。
