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2023-05-18

【アメフト】東大・京大対決、東大が制す 森・藤田、日本代表HC経験者が率いる

握手を交わす、藤田智・京都大学HC(左)と森清之・東京大学HC(右)=撮影:北川直樹

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アメリカンフットボールで、東京大学と京都大学が対戦した定期戦「第65回双青戦」(5月14日)は、オプションからのランが冴えた東大が、2016年以来の京大戦勝利を飾った。共に日本代表HC(ヘッドコーチ)経験を持つ、京大の藤田智HCと、東大の森清之HCの同門対決は、森HCに軍配が上がった。(写真は北川直樹撮影)

東京大学ウォリアーズ○20-14●京都大学ギャングスターズ
2023年5月14日、東京・調布 アミノバイタルフィールド

 オプションによる徹底したラン攻撃を更に進化させた東大が、ビッグプレーを連発して勝利を握った。1Q、東大オフェンスの最初のプレーで、QB曽原健翔からピッチを受けたWR光吉駿之介が、アウトサイドをまくって、独走。82ヤードの先制TD(タッチダウン)となった。
 東大は3Qの最初のプレーでも、同様に外のピッチを受けたWR洞俊樹が75ヤードのランでTDを奪った。
 4Qには、DB藤本鉄大のインターセプトで得た、敵陣からのオフェンスでWR吉田燎平が23ヤードのTDランで京大を突き放した。

オプションの東大に待望のスピードランナー
【東大・京大】4Q、東大WR吉田燎平が23ヤードのTDラン=撮影:北川直樹
 東大が、昨年から導入したフレックスボーンを中心とするオプションからの徹底したランオフェンスは、日本のオールドファンには、1990年代の京都大学を想起させる。だが、戦術的には、米NCAAの強豪ジョージア工科大学が、オプションの鬼才ポール・ジョンソンHCの指揮下で展開していたオフェンスに、直結している。

 ジョージア工科大のオプションオフェンスは、デマリアス・トーマス(元ブロンコスなど)に代表される、NFLでも活躍するほどのタレントを有し、ランヘビーでありながら、パス中心の強豪校と互角の勝負を展開した。

 ジョージア工科大にあって、東大になかったのがスピードランナーだ。

 昨年、開幕戦で中央大学ラクーンズを撃破し、2戦目の早稲田大学ビッグベアーズも苦しめながら、尻すぼみに終わった一因は、スピードランナーの不在だった。大型RBの伊佐治蓮のダイブ、QB曽原のキープはある程度効果的だったが、スピードには欠けた。この2人のランが、201回910ヤード。その一方で、オプションオフェンスではランナーとして機能するWRのランは、光吉20回103ヤード、洞25回149ヤードにとどまっていた。

 外をまくってスピードで相手ディフェンスを抜き去る選手がいてこそ、オプションの脅威は増す。高校時代は陸上部だった光吉、野球部だった洞、吉田の持つスピードは、東大のオプションに、広がりと深みをもたらす可能性がある。

 7年ぶりの京大戦勝利にもまして、森HCにとって大きな収穫となった。

日本のフットボールをリードしてきた2人の名将
握手を交わす、藤田智・京都大学HC(左)と森清之・東京大学HC(右)=撮影:北川直樹

 
 東大の森HCと京大の藤田HCは、水野弥一さんが監督を務めていた京大の先輩・後輩。卒業後は、2人でアサヒ飲料チャレンジャーズを率いて、22年前のライスボウルで日本一に輝いた。33歳の藤田さんがHC、36歳の森さんがディフェンスコーディネーターとして後輩の藤田さんを支えた。RB中村多聞さん、QB桂雄史郎さん、OL平本晴久さん、昌原史卓さん、LB山田晋三さん、阿部拓朗さんといった豪華で個性的な顔ぶれをしっかりと束ねた、日本のフットボール史に残る強豪チームだった。

 その後2人は別の道を歩む。森さんは鹿島ディアーズHCに就任、藤田さんは母校・京大のコーチを経て、富士通のHCとなった。両HCに率いられた鹿島と富士通は何度も好勝負を展開した。2021年のXリーグで、リーグ最終戦とプレーオフ準決勝で、富士通とオービックシーガルズが2連戦となって話題を集めたが、森さんのディアーズは、藤田さんのフロンティアーズと、2012年シーズン終盤に同じような2連戦。森さんが連勝して藤田さんの望みを挫いたこともあった。

 2人は日本代表のHCとしても、先輩後輩となる。森さんは2015年のIFAF世界選手権、藤田さんは2020年のTSL(米育成プロリーグ)選抜との試合で、強力な米国チームの前に屈した経験が共通する。学生フットボールで、両校の指揮官が日本代表HC経験者という対戦も、過去にはなかった。

 森さんは2017年に東大のHCに就任、藤田さんは今季から京大のHCとなった。共通の師である水野さんが心酔したという言葉に「男というのは弱いチームで負け戦中に孤軍奮闘、獅子奮迅の働きをする。これが本物の男である」というものがある。

 日本の最難関大学2トップの学生たちに、このスピリットをどのように伝えていくのだろうか。興味は尽きない。

【小座野容斉】

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