アメリカンフットボールの国内最高峰・Xリーグ「X1スーパー」は10月7~9日の3日間で、第3節の6試合が開催される。リーグ戦5試合とポストシーズンのライスボウルトーナメントで構成されるX1スーパーのシーズンは、開幕から1カ月で早くも中盤戦となった。
ライスボウル優勝候補の「BIG3」富士通フロンティアーズ、オービックシーガルズ、パナソニックインパルスは開幕2連勝。その中でオービックの前節の戦いを振り返り、今季の課題を探った。
2023年9月24日オービックシーガルズ ○24 vs 6● ノジマ相模原ライズ(第一カッターフィールド=千葉県習志野市) 開幕戦では、電通キャタピラーズ相手に、先制点を許すなど、ゲームスタートに課題を残したオービック。大野洋HC(ヘッドコーチ)の目標は、「ファーストシリーズ、ファーストプレーから全力を出し切る」だった。
ディフェンスがそれにしっかり応えた。ノジマ相模原の最初のオフェンスで、自陣まで攻め込まれながらDB小椋拓海がファンブルフォースし、同じくDB助川左門がリカバー。このターンオーバーで得たチャンスを、オフェンスがしっかりTD(タッチダウン)に結びつけた。さらに次のノジマ相模原のオフェンスでも、今春からDBにコンバートされたジェイソン・スミスのインターセプトでボールを奪うと、FG(フィールドゴール)に結びつけた。
第2Qには、QBタイラー・クルカから、WR西村有斗へ技ありのTDパス。その後、ノジマ相模原のQBカート・パランデックからWRクリス・ボーンへTDパスを決められたが、2ポイントコンバージョンを防いで17-6で、後半へ折り返した。
第3Qは一進一退の攻防で、両チームとも得点が無かったが、オービックは第4Q、QBクルカからTEホールデン・ハフにパスが成功。2m近い長身のハフは、ノジマ相模原のDBをハードリングして27ヤードのゲイン。このチャンスに、クルカは主将のRB李卓にスクリーンパス。李卓はOL松原寛志のブロックを活かして16ヤードを走り切りTDを挙げて、24-6と突き放した。
オービックディフェンスは、QBサックこそ記録上なかったが、タックルフォーロス7回。21ヤード後退させるアグレッシブさを見せて、ノジマ相模原のオフェンスを封じ込んだ。
最終スコアは24-6。春のパールボウル決勝では、勝ったもののスコアは9-7で、得点すべてがFGだった。昨秋のライスボウルトーナメント1回戦では、第3Q中盤まで、リードを奪われて苦戦した。そのノジマ相模原ディフェンスを攻略し、オフェンスが3TDを奪った。
2試合連続の本拠地開催で、詰めかけた地元・習志野市のファンも納得したであろう勝利。オービックの大野HCは「反則や、キッキングのミスなどまだまだ反省点が多数ある」と言いながら、手ごたえを得た様子だった。そして「あくまで、現時点での評価」という条件付きながら「75点」と及第点を付けた。
「綺麗にフットボールをやろうとしている」 新型コロナウィルス感染症の影響で、長らくできなかった、試合後のフィールドでのファンとの交流も復活。笑顔で、サインしたり、一緒に撮影する選手たちの姿が見られた。そのフィールドで、ディフェンスの歴戦の勇士2人に話を聞いた。39歳のDB藤本将司、32歳のDB砂川敬三郎だ。共にオービック加入後10年を超すベテラン、藤本は15年目、砂川は11年目となった。
チームの状態について、砂川は「悪くない」という。予期した答えだった。チーム体制が全面的に切り替わった今季、「前半最大の山場(大野HC)」だったノジマ相模原戦を乗り越えた。順調な滑り出しと言って良い。
だが、オービックが目指すのはあくまで日本一。昨年苦汁を飲まされたパナソニックや、同じ日に川崎で、圧倒的な強さで胎内ディアーズを一蹴した富士通に勝つためには「順調」や「75点」で勝てるわけがない。
砂川にこれで日本一になれるのかと尋ねたら「全然足りない。試合でも練習でも、もっともっと行かないと」という。飢餓感が足りないということだ。砂川は「僕は4連覇最後の年加入なので」と、藤本にその先を譲った。
2010~2013年シーズンの4連覇をすべて経験した唯一の現役選手となった藤本も砂川と同意見だった。そして気になる点として、「特に、控えの選手が、綺麗にフットボールをやろうとしているように見える」と付け加えた。
砂川は、味方の反則で取り消しとなったが、パランデックのパスを見事に奪取して見せた。藤本も、ノジマ相模原のエースWRボーンをカバーして、戦い続けた。まだまだガツガツとプレーする2人の言葉は、若い選手が増えたチームにどのように届いているのだろうか。
第3戦の相手は、アサヒ飲料チャレンジャーズ(10月9日12時キックオフ、@神戸市王子スタジアム)となる。開幕2連勝で、QBギャレット・サフロンのパスが好調だ。アウェイの関西で、この強敵にどのように戦うのか。オービックの日本一奪還という登山道は、これからどんどん厳しくなっていく。