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2023-12-20

変形性ひざ関節症教室 第29回 変形性ひざ関節症の治療法④手術治療―人工ひざ関節置換術、再生医療

中高年になると増えてくる変形性ひざ関節症。「ひざの痛みを解消する」ための治療法は、大きく「保存治療」(第26回、第27回)と「手術治療」に大別されます。前回(第28回)はスポーツ復帰も可能な高位脛骨骨切り術を紹介しました。今回は、ひざを人工関節に置き換える「人工ひざ関節置換術」と、損傷した軟骨を修復する「再生医療」について、ひざの名医である田代俊之ドクターに解説いただきます。

末期には人工ひざ関節置換術

 人工関節置換術は、変形性ひざ関節症が末期になり、歩くことが困難になったときに行う手術です。大腿骨、脛骨、膝蓋骨の骨を削り、金属のインプラントをはめ込みます。このときに固定のためにセメントを使うことがあります。虫歯を削って金歯をかぶせるみたいな感じです。また、金属と金属の間には、滑りがよく耐摩耗性に優れる超高分子ポリエチレンをクッションとして使用します。

 O脚変形が進行して、ひざの内側も外側も悪い人や関節に不安定性がある人には全置換術(TKA:Total Knee Arthroplasty)、内側だけが悪い人には、片側置換術(UKA:Uni Knee Arthroplasty) を行います。

 手術を受けると、歩行時や階段時の痛みが楽になります。一方で、インプラントのゆるみ・破損、感染、静脈血栓などの合併症も問題となります。インプラントの耐用年数も上がり、手術術式・リハビリなども改善され、ゆるみ・破損の可能性は減っていますが、若い年代で行うことは慎重に考えたほうがよいでしょう。

●メリット:強い痛みでも確実に除痛ができる。手術早期から荷重できる。手術を行う医者が多く、自宅近くで手術可能。
●デメリット:人工ひざ関節には寿命がある。感染に弱い。ゆるむことがある。再手術が必要になることもある。正座ができない。ひざに負担がかかる仕事やスポーツはできない。
●概要:入院期間は3〜4週間、日常生活に戻るまでの期間は2〜3カ月。保険適用(高額医療費控除あり)。


イラスト/庄司猛

再生医療は発展途上の最先端治療

  病気やケガで機能を失った組織や臓器を修復、再生する治療のことを再生医療といいます。体の中には、血液・神経・内臓・骨・筋肉などのそれぞれの組織に、働きの違う無数の細胞が存在します。各の細胞は、元になる幹細胞(体性幹細胞)があり、それが育って(分化して)、それぞれの組織の細胞に変わっていきます。この幹細胞を用いて、特定の細胞をつくり出し、失われた臓器を再生するのが再生医療です。

 変形性ひざ関節症では、その主原因である軟骨をつくり出す再生医療はまだ発展途上ですが、血液中の血小板を使う「PRP療法」(自己多血小板血漿注入療法)と、体性幹細胞を使う「幹細胞移植」の方法があります。再生医療によって痛みや炎症が治まり、軟骨が修復されます。

 このほか、「自家培養軟骨移植」という、正常な軟骨を取り出して培養して増やし、軟骨の欠損部に移植する方法もあります。ケガやスポーツが原因の離断性軟骨炎で行われる手術では医療保険が適用されますが、変形性ひざ関節症による軟骨損傷の治療には適用外です。

 再生医療は自由診療であり、全額が自己負担になります。かなり高額なケースもあり、治療を行う際には担当の医師から、治療効果・治療の限界・副作用などの説明を受け、理解したうえで行ってください。

 【PRP療法】血液中に含まれ、出血したときに血を止める成分として知られる血小板を使います。血小板には組織の修復を促す成長因子を出す働きもあります。自分の血液から血小板を多く含む成分を取り出し、ひざに注入します。関節の炎症を抑えて、痛みを和らげ、軟骨の修復を助ける作用があると考えられています。
メリット:自分の血液を使うため副作用が少ない。注入は短時間で、何度でも受けられる。痛みが緩和する。関節内の環境がよくなる。
デメリット:自由診療のため治療費の負担が大きい。治療効果に個人差がある。自己免疫疾患で投薬中の人は効果が十分に発現されない。
概要:入院なしの日帰り手術。保険適用外。

 【幹細胞移植】自分の脂肪や滑膜組織から採取した間葉系幹細胞を培養して、ひざに注入します。関節の炎症を抑えるとともに、軟骨の再生が行われ、症状が改善されることが期待されます。
メリット:自分の脂肪を使うため副作用が少ない。移植は短時間で歩いて帰宅できる。痛みが緩和される。
デメリット:脂肪を採取する手術が必要。幹細胞の培養に数週間かかる。自由診療のため治療費の負担が大きい。治療効果に個人差がある。
概要:入院なしの日帰り手術。保険適用外。

プロフィール◎田代俊之(たしろ・としゆき)さん
JCHO東京山手メディカルセンター整形外科部長
1990年山梨医科大学卒業後、東京大学整形外科入局。東京逓信病院、JR東京総合病院勤務をへて、2014年に東京山手メディカルセンターへ。2017年4月より現職。ひざ関節の疾患を専門とし、靭帯損傷、半月板損傷、変形性関節症などについて、長年にわたって幅広く対応している。2004年より中高齢者に向けたひざ痛教室を毎月開催している。日本整形外科学会専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。陸上競技実業団チーム(長距離)のドクターも務める。

この記事は、ベースボール・マガジン社の『図解・即解!基礎からわかる健康シリーズ 変形性ひざ関節症』(田代俊之著、A5判、本体1,500円+税)からの転載です(一部加筆あり)。 Copyrightⓒ2022 BASEBALL MAGAZINE SHA. Co., Ltd. All rights reserved.

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