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2023-12-10

【陸上】日本選手権10000mで塩尻和也が27分09秒80の日本新、「腹八分目」の継続と世界を見据えた成果

塩尻は27分09秒80の日本新で日本選手権制覇

日本選手権10000mが12月10日に行われ、2レース目の男子で塩尻和也(富士通)が27分09秒80の日本記録で優勝。2位の太田智樹(トヨタ自動車)が27分12秒53、相澤晃(旭化成)が27分13秒04と、トップ3が日本記録を更新する歴史的なレースとなった。4位の田澤廉(トヨタ自動車)が27分22秒31で日本歴代4位、5位の小林歩(NTT西日本)が27分28秒13が日本歴代7位に入った。

先頭集団はシトニック・キプロノ(黒崎播磨)の正確なペースメークで1km2分44前後で進み、5000mを13分40秒で通過。8000m付近から塩尻がロングスパート仕掛け、徐々に後続との差を広げた。

「8000mまで先頭集団について8000m以降の勝負どころとなる場面でしっかり前に出られるようにということを意識していました。その通り走れて、タイム、順位ともに、とてもいい結果で走れました」という塩尻。事前にイメージした通りのレース展開で、日本選手権の10000mを初めて制覇。パリ五輪の参加標準記録(27分00秒00)突破はならなかったものの、2大会ぶりの五輪代表に大きく前進した。

順大2年時にリオ五輪の3000mSCに出場した塩尻は、富士通入社後も3000mSCで世界を目指し、2019年ドーハ世界選手権の出場権を得たが、負傷で欠場を余儀なくされた。21年の日本選手権で12位に終わり、東京五輪出場を逃すと5000mと10000mに主戦場を移した。

23年の日本選手権は5000mで優勝。7月のアジア選手権で銀メダルを獲得し、8月にはブダペスト世界選手権に出場した。ブダペストでは予選1組18位で敗退を喫し、世界への挑戦はまたも悔しさが残る結果となった。

パリ五輪出場が懸かったこの日本選手権10000mに向けて、11月の東日本実業団駅伝(4区区間賞)以降はチームを離れ、スピードを意識した練習に取り組んできた。春先からの好調を維持するため、追い込み過ぎてケガをしないように「腹八分目」の練習を心掛けていた富士通の髙橋健一監督は、「レースの前から調子がいいなっていう手応えはつかんでいて、うまくいけば27分20秒台が出るかな」と自信を持って送り出したという。

髙橋監督の想定を大きく上回った塩尻は、相澤が持っていた日本記録を8秒95更新し、自己記録を約35秒も短縮。「僕個人としては自己ベストでうれしいタイムではある」と喜びつつも、世界に目を向けている塩尻にとっては、27分09秒80もあくまで通過点だという。

「(パリ五輪の)参加標準記録27分フラットを突破しなければ、国際レースの勝負というのは難しいかなと思っています。今以上のタイムを目指してやっていきたい」

標準記録を突破し、パリ五輪の出場権を得て、パリでは世界と戦うレースをする。練習を継続することで力を蓄え、5000m、10000mと2連勝した日本選手権で見せたロングスパートのように、ここぞというときに発揮するつもりだ。



左から日本新をマークしたトップ3。2位の太田、優勝の塩尻、3位の相澤

文/内田麻衣子 写真/中野英聡、黒崎雅久

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