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2017-11-17

IBM後半にエンジン全開、ライバルLIXILを撃破

 アメリカンフットボール Xリーグは11月11日、横浜スタジアムでジャパンXボウル(JXB)トーナメントの準々決勝3試合を行った。第3試合のLIXILディアーズ(レギュラーシーズン4位)対IBMビッグブルー(同5位)の一戦は、IBMが、51-31でLIXILを降した。IBMは11月26日の準決勝(大阪市のキンチョウスタジアム)で、12日にオール三菱ライオンズを破ったパナソニックインパルスと対戦する。

【IBM vs LIXIL】LIXILのDB岡本をハードリングで飛び越えるIBMのRB末吉

【IBM vs LIXIL】試合開始16秒で、IBMのLBコグランがLIXILのQB加藤(左)のパスをインターセプトしてリターンTD

【IBM vs LIXIL】試合開始16秒で、先制のインターセプトリターンTDを決め、大喜びするIBMのLBコグラン

【IBM vs LIXIL】第3クオーター2分、TDパスをキャッチして喜ぶIBMのWR上廣(18)らオフェンス陣

IBM○51-31●LIXIL

 両者の対戦は、この時期の風物詩となってきた感さえある。今季はレギュラーシーズン第5節の10月21日に対戦し、LIXILが第4クオーターに17点差を逆転して勝利した。昨年も、レギュラーシーズンでLIXILが大逆転勝利、準々決勝でIBMが勝利した。データ的には、鹿島時代から通算して、ディアーズが秋のリーグ戦(セカンドステージを含まず)で12回対戦して全勝。一方で、ポストシーズン・セカンドステージではビッグブルーが4連勝中だ。そして、そのデータ通りの結果となった。

 先制はIBM、第1クオーターLIXIL最初のオフェンスプレーでQB加藤翔平のパスを、LBコグラン・ケビンがインターセプトし、リターンタッチダウン(TD)を決めた。しかし、次のキックオフで、LIXILのWR前田直輝が96ヤードのリターンTD、試合開始わずか32秒で7-7という展開は、ど派手な「殴り合い」を予感させた。

 IBMは、第1クオーター2分にK佐藤敏基のフィールドゴール(FG)、第2クオーター1分にはQBケビン・クラフトからWR栗原嵩へのTDパスと着々と加点した。LIXILは第1クオーターにレッドゾーンまで攻め込みながら、ターンオーバー(WR前田のファンブル)を喫し、第2クオーター4分にQB加藤が自らランでTDを決めたが、その後は2回パントに追い込まれるなど、オフェンスはちぐはぐ感がつきまとった。

 しかし、前半残り1分余りで、IBMのクラフトが投げたパスがWR栗原の手に当たって跳ねたと判定され、ボールを捕球して走ったLIXILのDB佐野忠也のインターセプトリターンTDとなった。21-20とLIXILの最少リードで前半を終えた。

 前半、不本意な終わり方をしたIBMオフェンスだが、後半はエンジン全開となる。第3クオーター最初のオフェンスで、RB末吉智一が80ヤードを走りエンドゾーンに飛び込んだ。このビッグプレーを皮切りに5回のオフェンスシリーズで4本のTDを決めて、LIXILを突き放した。対照的に、LIXILはオフェンスがリズムに乗れず、第3クオーターは1FGを返しただけ。第4クオーター3分に加藤から前田にTDパスが決まったが、その後も続かなかった。

 IBMのヒーローは、QBクラフトだ。前回は自らのファンブルで敗れたが、この日はパスで272ヤード、成功率72.5%、4TDと本領を発揮した。さらに、RB高木稜を負傷で欠いたRB陣では、ルーキー伊藤隆貴が奮闘、末吉の2倍となるラン16回で、67ヤードをゲイン、バランスの取れたオフェンスはトータル500ヤードを記録した。10月の対戦ではレッドゾーンに入ってから攻めあぐねたが、この試合は特に後半でチャンスをことごとくTDに結びつけた。

 準決勝の相手は、山田晋三ヘッドコーチの目標「打倒、ビッグ3」の一角、パナソニックだ。2013年11月セカンドステージで大敗して以来の対戦となる。この強敵を倒さない限り、悲願の日本一はない。

(取材・撮影/小座野容斉)

【IBM vs LIXIL】第3クオーター開始直後、TEスタントンのランプレーで2ポイントコンバージョンを決めたIBM

【IBM vs LIXIL】第1クオーター5分、LIXILのWR前田がパスをキャッチして相手陣16ヤードまで攻め込みながらIBMディフェンス陣のヒットにボールをファンブルする

【IBM vs LIXIL】OL伊藤をリードブロッカーに走るルーキーRB伊藤隆貴。高木が不在のRB陣で16キャリー72ヤードと奮闘した

【IBM vs LIXIL】パス4キャッチ、56ヤードと、ホットラインのTEスタントンに次ぐ成績を残したルーキーWR鈴木

◇IBM・山田晋三ヘッドコーチ

・今日の結果について

やはりタフな試合だった。こういう展開になると(チームの)皆がわかっていた。(11月上旬の)3連休のでこういう状況を設定して練習を繰り返した。結果的にそれが試合で体験できた。ディフェンスでも、オフェンスでも、今日は早くプレーをしよう、プレーコールを早く入れようと心がけた。(じっくり考えて)プレーを最適化するのではなく、早くやろう、自分たちのやることをやろうというのがよかった。ジェームズ、チャールズもいて、我々は弱くない。彼らが迷うのが一番悪いと考えた。

・前回の対戦と違い、今回は後半のチャンスでFGではなくTDを取り切った。

そこが大きかった。試合前、ケビン(・クラフト)には、「やはり安全に行くのではなく、点を取りに行こう、インターセプトされるリスクがあってもTDを狙って積極的に投げよう」と言った。また、後半はランで力勝負になると思ったので、末吉を前半ほとんど出さなかった(ランは2回だけ)。それが後半一発目、いきなりTDにつながった。それも凄くよかった。

・ルーキーRBの伊藤が良かった。

高木が負傷で、今日はまだ出られない状況の中で、伊藤には「ランではなく、パスが多くなるとは思うが頑張れ」と言っていた。後半も、プレー機会的には末吉と半分ずつと、非常に頑張ってくれた。

・後半最初のTDで、TEスタントンのモーションスイープで2ポイントコンバージョンを決めたが、スタントンのランプレーは

前の試合でも使って、よかったけれどもTDできなかった。今日はコースを修正したりして(準備して)いた。1点差だったので、TDを取ったら2ポイント行こうと狙っていた。

・リードされて前半を終えたが

逆に、リードされていたのがよかった。こちらがリードした状態だと、追いつかれたときのショックが大きい。前半最後のインターセプトリターンTDは、こちらからはフィールドにバウンドしていたように見えたが、まあ仕方がない。元々、(コイントスで)後半のオフェンスをチョイスしていたので、必ずそこでTDを取ろうと割り切ることが出来た。

・ディフェンスはどうだったか

かなり評価できる。前半に3TDされたが(キックオフとインターセプトの)リターンで2本、オフェンスにやられたのは1本だけ。第4クオーターのTDも、相手(LIXIL永川)にビッグリターンで返されてゴール前から始まったので仕方がなかった。

・試合最初のコグランのインターセプトは

たぶん、誰かに当たったと思う。

・オフェンスもディフェンスも良くて、悪かったのはキックオフのカバーくらいか

第1クオーター(の前田)と、第4クオーター(の永川)で、事実上2本(TDを)取られたのと一緒だ。大分練習したのだが。オンサイドキックと、キックオフの練習しか、していないといってもいいくらいやったのだが。やはりLIXILはいい選手が多い。(加藤のパスがあるので)無理にリターンをしてこないだろうと思ったが、そこは違った。

・相手はパナソニックと想定できそうだが

まだそこはわからない。とにかく今までは、LIXIL対策でいっぱいで次の相手のことは何も考えていない。明日からコーチ陣は猛勉強だ。ただ、仮に相手がパナソニックだとすると、彼らは、自分たちの出したいプレーをやっているだけ。強いOL、強いRB、良いディフェンス、良いキック。勝つチームの典型だ。強いときのシーガルズに似ている。

・ウェストは、あまり大量点を取るフットボールではないと思うが。

過去に戦ったときは、こちらはタレントが揃っていなくて、クラフトのパス一辺倒のチームだったのでボコボコにされた。そのときに比べたら、今のチームは全然違う。そういう意味では楽しみだ。去年のレギュラーシーズン、パナソニック対LIXIL戦を後で見て、LIXILのようなチームはパナソニックから点が取れると思った。我々もそういう形で、どんどん攻めて点の取り合いにできたらと思う。ただ、そんな簡単な話ではないが。

・FGではなくTDを取らなければいけない

まさに、今日の試合がそうだが、そこをやらなければいけない。ただ、今季パナソニックと対戦して、それが少しでもできたのは(第6節の)ライズぐらいではないか。どこもハイスコアに持ち込めなかった。

・エレコム戦以降、ずっとTDを取り切れない試合が続いていた。今日はIBMらしく大量点となったが

やはり天気が良かったのは大きい。風は強かったが、ケビンならこの風に負けないパスを投げられる。また、(WRで)栗原と上廣が戻って来たのも大きい。スタントンも気合いが入っていた。自分が活躍するとかでなく、とにかく今日は勝つ、というメッセージを出し続けてチームを鼓舞してくれた。今日は大きな負傷者も出ていない。あとは高木が戻ってくれば、準決勝はかなりベストメンバーで戦えると思う。

【IBM vs LIXIL】第1クオーター、IBMのWR上廣がQBクラフトからのパスをキャッチして16ヤードのゲイン

【IBM vs LIXIL】スクランブルするLIXILのQB加藤。パスが投げられずに加藤が走るシーンが目立った

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