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2024-03-27

変形性ひざ関節症教室 第30回 ひざ痛体操のすすめ①

中高年になると増えてくる変形性ひざ関節症。予防・治療で最も大切なことは、筋力を落とさない、体重を増やさない、関節を硬くしないように、日々適切な運動(運動療法)を行うことです。本連載では、ひざの名医である田代俊之ドクターが症状や治療をわかりやすく解説していきます。今回から3回にわたり、「ひざ痛体操」についてお届けします。

ひざ痛は動かせば改善する

 変形性ひざ関節症ですり減った軟骨は元に戻ることはありません。ひざが痛いからといって動かさずにいると、筋力が低下し、体重が増えてしまいます。ひざにかかる負担が増えて、軟骨がすり減り、炎症が悪化していくばかりとなり、痛みは治まりません。

 しかし、ひざ痛は動かすと炎症が治まってよくなっています。炎症が治まればさらに運動できるようになり、筋力がついてひざの負担が減り、痛みから解放されるという好循環がもたらされます。ただやみくもに動かせばいいというものでもありません。動かすことにより返って痛みが増すこともあり、適切なやり方で動かすことが重要です。
 

 少しずつでも毎日続けて動かしましょう。3日、1週間、1カ月、3カ月と動かし続けていけば、ひざの痛みが緩和してくるのを実感できるはずです。
 今回から、日常生活の中で行いたい、ひざ痛解消の「ひざ痛体操」を紹介していきましょう。

ひざ痛体操の「筋力トレーニング」

  ひざ痛対策(運動療法)の基本は、筋力トレーニング、ストレッチング、有酸素運動の3本柱です(連載26回)。筋力トレーニングで鍛えるのは、次の筋肉です。

・脊柱起立筋(背骨の両側にある筋肉)…姿勢を保つ筋肉
・中臀筋(お尻の筋肉)…片足立ちで働く筋肉
・大臀筋(お尻の大きな筋肉)…股関節を伸ばす筋肉
・大腿四頭筋(太もも前側の筋肉)…ひざを伸ばす筋肉
・ハムストリングス(太もも後ろ側の筋肉)…ひざを曲げる筋肉
・内転筋群(太もも内側の筋肉)…脚を閉じる筋肉、骨盤を安定させる筋肉
・腸腰筋(背骨と骨盤・股関節をつなぐ筋肉)…脚を持ち上げる筋肉


 筋力トレーニングでひざ周りの筋肉と体幹を鍛えると、ひざへの負担が減り、痛みが軽減していきます。実施する際のポイントは、ひざに負担がかからないように、関節を動かさないやり方で筋力を鍛えることです。
 筋肉の長さを変えずに筋肉に力を入れる「アイソメトリック・エクササイズ」で行うと、自分で力加減を調整でき、思いっきり力を入れると、かなりの負荷になります。注意点は呼吸を止めないことです。 

 ここでは、大腿四頭筋と腸腰筋を鍛える「寝て足上げ」と、ひざをまっすぐにする内転筋群を鍛える「ボールはさみ」を紹介します。

 書籍にはスクワットやもも上げなども紹介していますので、本を参考に筋力トレーニングに励みましょう。

モデル/丸岡雅子


モデル/丸岡雅子

著者プロフィール◎田代俊之(たしろ・としゆき)さん

JCHO東京山手メディカルセンター整形外科部長
1990年山梨医科大学卒業後、東京大学整形外科入局。東京逓信病院、JR東京総合病院勤務をへて、2014年に東京山手メディカルセンターへ。2017年4月より現職。ひざ関節の疾患を専門とし、靭帯損傷、半月板損傷、変形性関節症などについて、長年にわたって幅広く対応している。2004年より中高齢者に向けたひざ痛教室を毎月開催している。日本整形外科学会専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。陸上競技実業団チーム(長距離)のドクターも務める。

この記事は、ベースボール・マガジン社の『図解・即解!基礎からわかる健康シリーズ 変形性ひざ関節症』(田代俊之著、A5判、本体1,500円+税)からの転載です(一部加筆あり)。 Copyrightⓒ2022 BASEBALL MAGAZINE SHA. Co., Ltd. All rights reserved.

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