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2017-10-23

LIXIL4Qから17点差を逆転、IBMを撃破

Xリーグは10月21日、アミノバイタルフィールド(東京都調布市)で、第5節のLIXILディアーズ対IBMビッグブルーの一戦が行われ、LIXILが第4クオーターに3タッチダウン(TD)を奪って、17点差をひっくり返し、27-26で逆転勝ちした。LIXILは3勝2敗として、8位以上が確定し、ジャパンXボウル(JXB)トーナメントへ、ワイルドカード(WC)以上での進出を決めた。敗れたIBMも3勝2敗となった。

【LIXIL vs IBM】第4クオーター残り43秒、IBMのファンブルをリカバーし、勝利を決めたLIXILのDE平澤

LIXIL〇27-26●IBM

前半はIBMが主導権を握った。第1クオーター3分にK佐藤敏基が22ヤードのフィールドゴール(FG)を決めた。第2クオーターにはRB末吉智一の33ヤードのロングゲインで相手陣内に攻め込み、QBケビン・クラフトがWR鈴木隆貴に14ヤードのTDパスをヒットした。LIXILは第1クオーター6分のFGトライを、IBMのDEジェームス・ブルックスにはたかれて失敗。第2クオーター10分にインターセプトから得たチャンスをK青木大介がFGを決めて3点を返した。IBMは直後の前半2ミニッツドライブで、時間をしっかり使いながら59ヤードを進み、残りゼロ秒で佐藤がFGを成功させ13-3で後半へ折り返した。

第3クオーターに入ってもIBMが優勢のまま。4分にRB末吉のランでTD、7分には佐藤のFGで10点を加えた。LIXILは後半最初のドライブでレッドゾーンまで攻め込みながら、FGトライでホルダーがボールをジャグルして、失敗(記録はランプレー)するなどちぐはぐで、6分に青木のFGで3点を返したにとどまっていた。

流れが変わったのは、第4クオーター。17点差を追うLIXILは2分にQB加藤翔平がWR前田直輝にTDパスを決めて、13-23と10点差に。IBMも6分に佐藤のFGで13点差としたが、LIXILの勢いは止まらなかった。9分、加藤からWR石毛聡士にTDパスが決まって6点差に。直後のキックオフでオンサイドキックを成功させ、攻撃権を得ると、残り1分余りでRB白神有貴が意表を突くランTD、青木のポイントアフタータッチダウンも決まってLIXILが27-26で逆転に成功した。

IBMは残り1分9秒から再逆転を狙ったが、QBクラフトが痛恨のファンブル。LIXILのDE平澤徹がリカバーして、熱戦に終止符を打った。

【LIXIL vs IBM】第4クオーター10分51秒、LIXILのRB白神が10ヤードを走りTD、キックも決まってLIXILが逆転する

◇ボールセキュリティおろそか、あっけない幕切れ

 ビッグブルーの山田晋三ヘッドコーチ(HC)は、ディアーズの追い上げを畏敬の念を込めて、「ディアーズ地獄」と表現することがある。その地獄にまんまとはまって、掌中の勝利を逃した。昨秋、48-52でビッグブルーが逆転負けを喫した試合のように両チームの対戦はシュートアウトが多い。その展開の中で結果的にターンオーバーが増える。降り続く雨の影響も考え、ビッグブルーの試合運びは慎重だった。クラフトのパスを抑え気味にして、RB末吉、高木稜のランによる地上戦で着々と加点した。一方でディフェンスもディアーズ加藤のパスを第3クオーターまでTDゼロに封じ込んでいた。

 ディアーズの第4クオーターの追い上げはある程度想定内だったろう。残り2分29秒でオンサイドキックで攻撃権をディアーズに確保された段階で、最悪の事態として逆転されることも考えていたはずだ。2ミニッツオフェンスはこの試合の前半で、しっかりFGを決めている。クラフトのパスは決して不調ではなかったし、雨脚も弱まっていた。残り1分9秒で、タイムアウトは1回で1点差を追うオフェンス。困難ではあったが決して不可能ではなかったはずだ。

 一方で、ディアーズディフェンスには、嫌な記憶があった。昨秋第6節のパナソニックインパルス戦では第4クオーター11分に加藤が逆転TDパスを決めながら、残り52秒を守り切れず、パナソニックにサヨナラFGを決められて逆転負けしていた。

【LIXIL vs IBM】第4クオーター11分、片手でボールを持ったまま走りはじめるIBMのQBクラフト

【LIXIL vs IBM】第4クオーター残り43秒、IBMのファンブルをリカバーしたLIXILのDE平澤と、痛恨のファンブルに呆然とするQBクラフト(#3)

 ビッグブルーの攻撃は自陣26ヤードから。最初のプレーでクラフトが末吉にタッチパスを決めてファーストダウンを奪った。残り53秒からのセカンドダウン。ショットガンからランに切り替えたクラフトが前に走り始めた。次の瞬間、クラフトの手からボールがこぼれた。ブラインドサイドからラッシュしていた平澤が反応よくボールを抱え込んだ。ターンオーバー。再逆転をかけたオフェンスの、あっけない幕切れだった。

 筆者は、クラフトが走り始めた姿をファインダーの中で追いながら、瞬間的に「危ない」と感じていた。ボールを抱え込まず、片手で持っていた。一瞬ディアーズのDLパング航海と交錯した後再び視認したクラフトの右手にはボールはなかった。そして後方でボールをしっかり確保する平澤の姿も目に入った。シャッターを切り続けながら、クラフトの同様のプレーを過去に何度も撮影した記憶がよみがえった。

 映像で確認すると、ディアーズディフェンスが下がり気味で前が空いていた。そしてクラフトと交錯したパングが叩いてファンブルさせたかどうかまでは分からなかった。この場面でQBのラン自体は決して悪いとは思わない。ファーストダウンを取れば数秒は時計も止まる。しかしボールセキュリティが余りにもおろそかだった。米国人のQBは 片手でボールを掴んで走り出すことが多い。手が大きいということもあるだろうし、なによりも、QBとりわけパサーには「ボールは投げるためにある、抱えて走るものではない」というRBやWRと違う意識があるのかもしれない。

 ディアーズの富永一HCに、最後の守りに就く前、ディフェンス陣にどんな指示を出したのか尋ねた。「守るな。攻めろ」だったという。「引いて守ったら、クラフトとWRにキャッチボールされる。絶対に止められない」。現在はXリーグ屈指のオフェンスの達人ながら、現役時代はDBだった富永HCの言葉は説得力があった。

 一方、平澤は「誰が叩いたのかわからない。確認しなければわからないけれど、(クラフトが)自分で弾いたのでは」という。「QBをフリーで走らせないために、しっかり皆で囲もうと話していた。そういう意識があのファンブルリカバーにつながった」という。去年のパナソニック戦で52秒を守り切れなかった反省が、この場面で生きた。

 この両者の対決は、鹿島時代から通算して、ディアーズが秋のリーグ戦(セカンドステージを含まず)で11回対戦して全勝だった。今回またその連勝を一つ伸ばした。一方で、ポストシーズン・セカンドステージではビッグブルーが4連勝中だ。昨秋も、レギュラーシーズンではディアーズ、JXBトーナメント準々決勝ではビッグブルーが勝っている。今季も「もう一回」があり得る。その時両者は、今回の戦いの教訓をどう生かすのだろうか。【小座野容斉】

【LIXIL vs IBM】降りしきる雨の中、パスを投げるIBMのQBクラフト

【LIXIL vs IBM】第2クオーター残り22秒、IBMのQB政本が15ヤードをゲインし、FGにつなげる

【LIXIL vs IBM】雨の中、力強い突進を見せるIBMのRB末吉

【LIXIL vs IBM】第2クオーター、力強い突進を見せるIBMのRB高木

【LIXIL vs IBM】第1クオーター、LIXILのFGをブロックするIBMのDEブルックス

【LIXIL vs IBM】LIXILディアーズのチアリーダー、Misakiさん(左)と、IBMビッグブルーのチアリーダー、Harukaさん

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