close

2024-05-15

【相撲編集部が選ぶ夏場所4日目の一番】大の里、左四つからの攻めをしのいで若元春に連勝し、1敗を堅持

若元春の左四つからの攻めをしのぎ、突き落としで白星を手にした大の里。好成績で序盤を乗り切ることができれば、後半戦への楽しみが膨らむ

全ての画像を見る
大の里(突き落とし)若元春

力自慢の若元春を、さらなるパワーで崩した。大の里が、若元春を破って1敗堅持だ。
 
この対戦、星は2勝1敗同士で、関脇と小結の対戦だが、混戦模様の今場所において、優勝できる力を秘める力士同士の激突という意味では、V戦線へのサバイバル戦といえ、4日目にはもったいない好カードだ。
 
2人は若元春が左、大の里が右のケンカ四つ。先場所は立ち合いモロ手突きから前に出た大の里が、左四つに組まれながらも攻めを継続して寄り切っている。
 
立ち合い、今場所も大の里はモロ手突きに出た。だが、左四つ狙いの若元春の当たりも悪くない。体格に勝る大の里が先に攻める形になったが、突きに出て脇が空いたところを、若元春が得意の左をねじ込んだ。
 
若元春は左から起こすと右も上手。こうなれば、左四つでは無類の力強さを発揮する若元春か。逆襲に転じる若元春。しかし、ひと腰落として攻められれば理想的だったところで、そこまで余裕がなかったことで、再び勝負の転機が訪れる。苦しくなった大の里は、右で相手の首を巻き、左の差し手を抜くと、窮余の策の突き落とし。すると若元春の体はグラリ、左足の送りが遅れ、そのまま体を預ける形になってしまった。土俵際、そのまま突き落としが決まって大の里が勝利。1敗を堅持した。

「止まったらダメだと思って、動きの中でああいう形になりました。勝ちは勝ちなので」と大の里。V戦線生き残りへ、大きな1勝となった。「2日目、ああいう相撲で負けて、自分の中で吹っ切れたものがあります」とも語っているだけに、ここからの土俵も楽しみだ。
 
優勝争いのほうは、この日を終わって全勝は宇良、御嶽海、湘南乃海、宝富士の平幕4人となった。今後、上位戦が組まれると予想される宇良がそれを食っていければ面白い、というところはあるが、まずは三役陣の琴櫻、大の里を(三役ではこの2人のほかに阿炎が1敗)、現状2敗の豊昇龍、若元春が追うという展開になっていくとみるのが妥当だろう。優勝可能性という意味では、すでに大の里は琴櫻の対抗の位置に上がってきていると言っていいかもしれない。
 
一方、「自分の形を作ったときに詰めの甘さが出た。喜んで、喜びすぎて。前に出る圧力のある相手なのを先場所で痛感したので、きょうは自分から攻めていこうと。それができたのはよかったが、勝ちにつなげれないのはまだまだ」と若元春。大の里戦は初顔から連敗となり、今後へ課題を残すことになった。
 
この対戦カードは、今場所の優勝争いというところを離れて別角度から見ると、次期大関候補の一番手、二番手の戦い、という見方もできる。これまでは一番手が若元春で、大の里が急追してきた、というイメージがあったが、大の里の連勝は、その順列の入れ替わりを示すものなのかも……。
 
もちろん結果は、これからにかかっているのでどうなるか分からないが、あとから見たとき、もしかしたらきょうが、「大の里が大関候補一番手に躍り出た日」となるのかもしれない。

文=藤本泰祐

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事



RELATED関連する記事