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2020-03-16

野球のグラブの紐が青パパイヤのパッケージに使われる理由

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3月16日(月)〜17日(火)の2日間、東京の伊勢丹新宿店で青パパイヤが期間限定販売される。ベースボール・マガジン社の農業プロジェクト「ベーベジ」で生産された青パパイヤのパッケージにはスポーツを愛する人たちの思いが込められている。

サステナブルなパッケージを

 伊勢丹新宿店でのプロモーションは、株式会社三越伊勢丹の生鮮担当バイヤーである川合卓也さんが、ベーベジの青パパイヤに注目したことで実現した。売り場の担当者の株式会社エムアイフードスタイルの木村和俊さんから、ベーベジの広報担当の杉山尚美にメールが届いたのは、限定販売がスタートする1カ月ほど前だった。

「商談時にお願いさせていただきました青パパイヤ2個入りを袋詰めする紐(サステナブルなもの)のご検討をよろしくお願いいたします」

 伊勢丹新宿店では、食品廃棄物やゴミを堆肥や飼料にして再利用するなど、フードロスの問題やサステナブルに取り組んでいる。期間限定であっても、いや、期間限定であるからこそ、パッケージには、そのメッセージを込めたいという思いが、木村さんにはあった。かつて野球に親しんでいた木村さんは、硬球の中の糸を使えないかと杉山に伝えていた。

 会社に戻ると杉山は早速、硬球を見つけて社員と一緒に分解してみた。しかし、硬球の芯の糸は、細いだけでなく、緩みを抑えるために接着剤でベトベトになっている。とても食品のパッケージに使える状態ではなかった。

硬球の中糸は細く、ラッピングに使えるものではなかった。

ボールがダメならグラブの紐

 野球で使う用具は多いようで少ない。バットには紐はない。ボールがダメならグラブは? 野球部のマネジャーだった杉山は、すぐに発想を切り替えた。「サステナブル」という言葉から、再利用をイメージした。大手野球用品メーカーに、「使い終えたグラブの紐を使えないか」と、問い合わせた。

「使い終わったグラブの紐を食品のラッピングに使うのは衛生的にどうでしょう。それに、紐が短じかすぎて結べませんよ」

 いいアイデアだと思ったが、あっさりと断られた。

 伊勢丹新宿店での販売の日にちは迫ってくる。都内で行うキャンペーンをなんとか成功させたい。途方にくれていた杉山に野球関係者が名古屋にある小さな野球メーカーを紹介してくれた。ジームスは社長と営業マン2人のアットホームな会社で、ホームページのモデルは営業マンとその子どもだが、野球愛好家の間に根強いファンがいる。

 ジームスの営業の田中明さんに連絡を取ると、こう提案してくれた。

「使い終わったグラブじゃなくて、グラブを作っていると、紐を裁断した際に半端が出るんです。それを使ってはどうですか」

野球のグラブを作る時、多くの革紐が廃棄されるという

未来への3つの思いが1つになった

 ジームスからは、キャンペーンの5日前に色とりどりの革紐が届いた。ほぼ同じ頃、田中さんからは、こんなメールが送られてきた。

 「グラブは牛の皮で、なめすことにより革に変わり、その大切な命をグラブにさせてもらっています。本来は紐でも粗末にしてはいけないと思います。このような形で紐を利用していただけることは、こちらとしても大変ありがたいことです。このご縁に感謝です。牛さん達も喜んでくれると思います」

 伊勢丹新宿店の「おいしい! 楽しい! ちょっと未来の食」という取り組み、ジームスの「未来の選手へ送る理想のグラブを」という取り組み、ベーベジの「アスリートのセカンドキャリアを支援したい」という取り組み…。地球の環境を壊さず、資源も使い過ぎず、未来の世代に美しい地球を残そうという3つの取り組みが1つになった。

 袋を閉じるテープを廃棄予定の革紐に代える…ほんの些細なことかもしれない。しかし、全てはこうした小さな一歩から始まる。この革紐を手に取った方は、あなたの手で、次の使い方を考えてみてほしい。

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