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2018-10-03

【プロレス】仮面ライダー史上初! 1/1スケールのプロレスマスクが登場!

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この度、株式会社バンダイ アパレル事業部より、 “仮面ライダー史上初”となる1/1スケールのプロレスマスクとして、『仮面ライダープロレスマスク』が商品化されました。制作を手掛けたのは、初代タイガーマスクの専属職人である中村 之洋(ゆきひろ)氏。一体どのようにしてこのアイテムが生まれたのか、その制作の裏側に迫ります。
司会◎加藤朝太/週刊プロレス編集部  撮影◎山口高明/株式会社ベースボール・マガジン社

※写真上=左:中村之洋(初代タイガーマスク専属職人) 右:佐藤俊介(株式会社バンダイ) 写真◎山口高明/株式会社ベースボール・マガジン社

――今回は株式会社バンダイと週刊プロレスによる仮面ライダーマスクのタイアップ取材となります。さっそくですが、仮面ライダーのプロレスマスクを制作することになったきっかけからお聞かせください。

佐藤:2018年は石ノ森章太郎先生の生誕80周年であり、平成仮面ライダーも20作品目を迎えるという記念すべき年になります。この仮面ライダーにとってメモリアルな年に、これまで誰も出来なかった圧倒的な商品を作りたいと思ったのがきっかけです。

――なぜ、仮面ライダーのマスクをプロレス仕様にしようと?

佐藤:仮面ライダーは闘うマスクヒーローの象徴として、昭和から平成までずっと在り続けていた存在です。闘う男の姿を隠すという点で「ライダーマスク」と「プロレスマスク」の親和性は物凄く強いと思いますし、ファンにとっては待望のコラボレーションアイテムになると考えました。なので、これはいま、このタイミングでやるべきだと。

――マスク制作を中村之洋さんに依頼するきっかけは?

佐藤:ヒーローとプロレスマスクという点で真っ先に思い浮かんだのがタイガーマスクです。そのタイガーマスクを実際に作成されていた中村之洋さんとなら、本企画において文句のないアイテムを生み出すことができると思いました。ホンモノは、ホンモノに頼むのがスジだろうと。

――実際に依頼を受けたときは中村さんはどのようなお気持ちだったんでしょうか?

中村:プロレスマスクの技術を仮面ライダーのマスクに応用することは、ボク的にはそれほど難しくなかったんですね。ただ、ひとつ、あらためて構えたのは、仮面ライダーは、ファンの方たちが日本中、世界中にいらっしゃるので、その方たちの希望や期待を背負うということで、シルエットやビジュアル面でより近いものにしないといけない。プロレスマスクでそれを表現するということに関して自信はあったのですけど、逆にあらためて新たなプレッシャーも感じております。

――実際に出来上がってきたマスクをご覧になり、依頼した側からはいかがですか?

佐藤:しっかりプロレスのマスクだなと思いました。期待と不安もありましたが、超えていきました。こうなるのか!?っていう。やっぱり仮面ライダー1号のマスクでありつつ、プロレスマスクでもなければならない企画ではあったので。それが融合したときにこうなるかという。

――仮面ライダーのオフィシャルとして世に出るマスクとしても申し分ないですか?

佐藤:はい、素晴らしいと思います。ここに©石森プロ・東映というクレジットが入る。これは多くのファンがずっと待たれていたことでもありますし。歴史的なことだと思います。

――仮面ライダーマスクを制作する工程のなかで難しかったところはありますか?

中村:写真やVTRの中の平面のモノを立体にするのが難しかったですね。360度、どこを見ても仮面ライダーでなくてはいけませんから。やっぱり多くのファンの方が相手という覚悟があるので、どこから見ても、「こうなるのか!」と納得してもらえるビジュアルに徹しなければいけない。そこが難しかったところ、こだわったところでもありますし、苦労したところでもあります。ボクがこれまで培ってきた技術が問われるところですよね。指名された責任は大きいです。受けた以上はね。

佐藤:素人目ですけど、複眼のところや、使ってる素材、触覚の部分も凄いですね。

中村:材料の知識はありますから、あの材料を使えば、よりホンモノに近いビジュアルになるなというのはあったんですけど。最後のテーマは触覚だったんです。プロレスマスクに金属はNGなので。どうしようかなと思ったときに、結束バンドがあったんですよ。ボクの身近なところで。

佐藤:そうなんですね、これ!

中村:はい、150ミリの結束バンドでばっちりだったんです。大人の方も当然、大事にしてくださると思うんですけど、バンダイさんのキャッチコピーは「夢・クリエイション」。子どもたちにも安全というところで、結束バンドだったら、そういう面も兼ねているなと。ホントに神が降りてきたような。そのまま使うんでなく、ちゃんと細工・加工もしていましたが。この素材であれば、触覚の角度も自分の思う通りにできるので。まさにこのためにあるような材料ですよね。

佐藤:それは違うと思いますよ(笑)。

中村:それぐらいばっちりでしたね。ありがたかったです。

意外にも触覚には結束バンドを使用

佐藤:東映の担当の方とも話したんですけど、監修するうえで、注目されるのは複眼=目の部分と、マスクの額にあるOシグナル(オーシグナル)、あとは仮面ライダーの緑色。大変というか、どこまでライダーに寄せるのか。どこまでプロレスマスクに寄せるかの協議がありました。その落しどころが絶妙だったと思います。

中村:Oシグナルの部分の丸い半球体も、こういう材料があるわけでなく、自分でぶ厚いフェルトをカットして半球体にするんです。裏からラメ生地を充てて。ここもうまく再現できたと思います。複眼も結果的には凄くいいメッシュの材料に巡り合うことができました。最初に選んだ素材よりも、さらによく複眼っぽく見える材料がみつかりました。これも仮面ライダーのために生まれてきた素材かなと思えるぐらいです(笑)。

佐藤:これも天から降りてきた!

中村:そんな気がしました。みつけたときは凄くうれしかったですね。触覚の取り付け部も、この素材でなければ、けっこう見た目がゴツくなるはずなんですよ。でも一番シンプルな形で、しっかり抜けずに固定できる素材だったんですよ。取れないように細工すると、付け根だけポコッと膨らんだりするんです。よろしくない現象が付随してふつうだと思います。

佐藤:マスクの緑の色も監修時に議論になりました。1号のライダーマスクとプロレスマスクの差として、緑の色は重要だと思ったんですけど、この色はプロレスマスクとしてのきらびやかさもあるしいい色ですね。

仮面ライダーの“緑”とプロレスマスクの”きらびやかさ”の融合

中村:エラスラメのグリーンはこの1点しかなくて、多少のロッドによっての濃淡はありますけど。グリーンラメはプロレスのマスクでもすごく映えます。ミル・マスカラスでも証明されてますけど、第二のトレードマークのサメ口もグリーンラメですから。それぐらいグリーンラメはいいポジションにいます。そこはプロレスマスクとして象徴されていて逆にいいと思います。プロレスのマスクの象徴ですね、ラメ生地は。プロレスのマスクだなってすぐわかると思います。縫合ラインに関しても、4枚の布を縫い合わせてるんですけど、縫合ラインもデザインの一部で、この縫合ラインも、職人さんの技量やセンスが問われるんです。ありきたりのラインではなく、メキシコの、それこそ1960年代、70年代の縫合ライン。そこまでこだわりました。ありきたりの簡易的な縫合ラインじゃなくて。メキシコのすごく文化のある型紙パターンで仕上げてあります。

佐藤:ミシンで縫うんですか?

中村:はい。ちょっとへの字になる形はメキシコの文化なんですよ。マスクファンが見ても「なかなかやるやん」という仕上がりになっています。当然、仮面ライダーファンにも唸ってもらわないといけないし。プロレスのマスクの文化や世界を代表して作らせてもらっているので、中村がやってくれたなって。評価をいただきたいなと思ったんでね。みなさんを代表して作らせてもらいました。

縫合ラインに職人の技量やセンスが詰まっている

――今回のマスクは実際に被るものではなく、あくまでも鑑賞用というコレクションアイテムとなっています。

中村:もともとプロレスのマスクは独特の文化で、闘いの道具であっても、マスクを取ってしまえば工芸品としての美術的な観点もあります。ボクのやってきたことを、そのまま反映できる作品、お仕事だなと思います。だから、いままでやってきたことの延長で、工芸品として見てもらえればうれしいですね。もちろん被れますよ。

――工芸品ではあるけれど、実際に被ることもできるわけですね。

佐藤:仕様的には被れるわけですね。

中村:もちろん、プロレスのマスクの醍醐味ですね。まさにボクがやってきたことなので、こういう形でも披露できてうれしかったです。

――今回は鑑賞用として世に出すのには、なにか理由があるのでしょうか?

佐藤:1/1のマスクを被った人間が悪さをしてしまってニュースになったときに、仮面ライダーがというのが主語になってしまうのは避けられません。なので、いままで1/1のマスクはずっと商品化することが出来なかったのですが、今回は工芸品である側面を強く押し出したプロレスマスクで、あくまでコレクションとして集めていただく、飾っていただくものとして商品化に至ったという経緯があります。

――鑑賞用ではありますが、これを手に入れた人は実際に被ることができるわけですね。

中村:子どもの頃、被りたかったですよね。仮面ライダーのマスクは手に入らないものですし。プロレスのマスクに憧れる前は、当然、ボクも仮面ライダーに憧れてますから。ボクも夏休みの宿題で1号ライダーのマスクを厚紙とホチキスで作って。それぐらい被れることに憧れを持っていました。

佐藤:それ、なんの宿題なんですか?

中村:夏休みの自由工作です。作品を教室のうしろに飾るんですけど、一番人気がありましたよね。

佐藤:凄いですね。それがなにかの縁で何十年後には夢が実現したのですから。

中村:それぐらい仮面ライダーのマスクを被りたかったですよね。仮面ライダーカードもいいんですけど、やっぱり象徴的なマスクを所有したかった。なので、こういう形で実現できてよかったです。ボクもマスク制作人生長いので、ボクのありったけの技術を注入させてもらった自負はあります。

佐藤:中村さんは、どのライダーが好きだったんですか?

中村:当然、1号ライダーから入るんですけど。例えば、アイスクリームであれば、ふつうバニラから入るじゃないですか。バニラから入ってストロベリー、チョコレートと手を広げていく。

佐藤:アイスで例えるんですか!?

中村:1号から始まって、V3を好きになると思うんです。実はボク、アマゾンが好きなんです。アイスクリームの例えなら、バニラよりストロベリーが好きなんですけど、なにか1個選べと言われたら、バニラなんです。アマゾンライダーは好きなんですけど、なにか選べと言われたら、1号ライダーを選びます。

佐藤:アマゾンはストロベリーじゃなくて、チョコミントだと思います。(笑)

中村:そういう問題じゃないと思いますけど(苦笑)。でも、チョコミントかもしれないですね、位置づけは。とにかくボクは1号があってのアマゾン、1号ライダーあってのV3かなと思ってしまうんです。そういう意味では1号ライダーは外せません。タイガーマスクもいっぱいいますけど、やはり初代タイガーは外せないのと同じです。

――今回の企画では1号の次のライダーもすでに予定されているのでしょうか?

佐藤:当然、やっていきたいですね。企画を起こしたのも、コレクションしてもらいたいという強い想いがありますので。ファンも次あるでしょと待つと思うし。

中村:そういう意味では大事な1号ですよね。

――マスクを1枚完成させるのにどれぐらい時間がかかるんですか?

中村:これで丸二日です。一日で作れと言われたら作ることはできるんですけど、オーナーさんが宝物として大事にされるマスクですから、そういうことを考えたら、ちょちょちょいとは作れないですよ。ステッチひとつひとつ見るわけですから。ボクもコレクターですから。ステッチワークとかは楽しみのひとつですからね。そういう部分を見られることはわかっているし。そういう適当な気持ちで作ったものがボクよりも長生きするわけです。そういうものは残したくないですよ。

佐藤:1個1個が違うんですね。

中村:同じものはできないですし。1個1個かわいいですよね。
このサンプルもかわいくてかわいくて! ホントかわいいですよ。

――生地は裏側を含めて何枚ぐらい使っているんですか?

中村:一番ぶ厚いところで五重ですね。生地は5枚。目の部分は補強しているので、ここが一番厚みがあります。ボクの兄は仮面ライダーマニアなんですけど、その兄にも太鼓判を押されました。兄はすごいマニアなので、最初に見せた時点で「目が立ちすぎ」と指摘されました。0・何ミリの世界なので。「おしい!」とか言われて、「目立ちすぎ。それやとオバケや」って(笑)。

佐藤:マニアのお兄さん!? ちなみに、このコラボレーションが決まったと報告したときは?

中村:すっごく喜んでました。「プロレスのマスクも大事なのはわかるけど、ホントの仮面ライダーのマスクマニアも唸らせなければならないよ」と言われたから2作目のサンプルは浅くしたんですね。どっちもかわいいですよ。1作目がなければ、2作目もないわけですから。複眼も2作目の方がよりホンモノに近いはずです。結果的には良かったかなと思います。

――仮面ライダーマスクが一家に一台あれば、こうやって話が盛り上がりますね。

中村:家族団らんになりますね。家族円満ですよ。一家に一台はキャッチコピーにいいかもしれません。

佐藤:だいぶ印象が変わってきます(笑)。私たちとしては今回の企画は仮面ライダーファンに届いてほしい。届けたい。この職人の技というか、これだけ手の込んでるモノだよと言うところを知ってもらいたいし。ヒーローマスクというものが尊く、これだけカッコいいんだよと知ってもらえたら、あらためてですけど、いいなと思います。もちろん、プロレスのファンの方にも届いてほしい。

中村:ボクも仮面ライダーをずっと応援してきている方々に作品として認められたいですね。兄みたいな人が日本中に何人もいらっしゃるわけでしょ。

佐藤:実際、何人いるんですかね。

中村:兄みたいな人ばかりと思っていた方がボクら的にはいいかもしれません。

――仮面ライダーを知らない人はいないでしょうし、このマスクをきっかけにさらにファン層が広がることを期待したいですね。

中村:いまはDVDなどで1号ライダーや昔のライダーのことをプレイバックして勉強できますから、いい時代ですね。

佐藤:24時間テレビでも石ノ森章太郎生誕80周年でドラマを放映していました。つねに話題にはなっていますが、いいタイミングで企画を実現できたと思います。
仮面ライダープロレスマスクはコレクションアイテムの決定版でしょう。

仮面ライダーファンにも届けたい!一家に一台あれば家族円満

【取材後記】
今回、仮面ライダーとプロレスマスクのコラボ企画が実現したということで取材をさせていただいた。オフィシャル公認の仮面ライダー1/1プロレスマスクがコレクションアイテムとして発売されるのはこれが史上初。これまで不可能だった夢のコラボを実現させたのは、「こだわり」と「遊び心」を貫く大人たちがいたから。そして多くのマニアの存在がある。マスククリエーターの中村之洋さんがこだわり抜いて完成させた仮面ライダー1号マスクを見た瞬間、その場にいただれもが「被りたい」という衝動を抑えられなかった。その理由は単純明快! そこにマスクがあるから。(加藤)

中村之洋(なかむら・ゆきひろ)
1966年三重県松阪市出身。 18歳の時に本気でマスク作りを始め、20代でその技術が認められてプロになる。 2001年に4代目タイガーマスクの専属職人となり、2003年には初代タイガーマスクの専属職人になる。 その後、獣神サンダー・ライガーをはじめ、様々なプロレスラ―達のマスク制作を行っている。

中村之洋(なかむら・ゆきひろ)

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