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2024-09-12

【相撲編集部が選ぶ秋場所5日目の一番】王鵬が初めて琴櫻を倒す殊勲! 全勝は大の里ただ一人に

いったんは四つになったが前傾姿勢で攻め続ける王鵬。この姿勢が、琴櫻を初めて破ることにつながった

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王鵬(寄り切り)琴櫻

“俺も、サラブレッドだ”――。

きのうまで全勝だった4人のうち、正代と霧島に土がつき、大の里が勝利。「これで琴櫻が勝てば、いよいよ大の里とのマッチレースだな」と思われた結びの土俵。その予断を覆したのは、“もう一人のサラブレッド”王鵬だった。
 
対戦のたびに言われるが、この2人の一番は、ともに祖父が横綱(琴櫻は第53代横綱琴櫻、王鵬は第48代横綱大鵬)、父が関脇(琴櫻は先代の琴ノ若、王鵬は貴闘力)のサラブレッド対決だ。
 
だがこれまで4度の対戦は、大関と最高位でも平幕という2人の番付どおりの力の差を見せて、すべて琴櫻が勝っていた。攻め合いになっても最終的に圧力勝ちするのは常に琴櫻で、王鵬はそのまま攻め切られるか、潜られるか、引いたところをついてこられるか……という感じで敗れていた。
 
しかし今場所は、「自分から圧力を掛け続けるという気持ちでいった」という王鵬の姿勢が活路を開いた。
 
立ち合いから琴櫻に潜られることは王鵬が阻止し、突き合い、押し合いになった。王鵬は一度俵に詰まったが、回り込んで残して突き返す。琴櫻が左上手に手を掛けるが右から掬って抵抗。その後、王鵬右下手、琴櫻が左上手、琴櫻の右と王鵬の左は差し手争いの形で動きが止まった。

“組んだらもう琴櫻の相撲か?”とも思われたが、王鵬が左からおっつけるようにして圧力を掛け続けると、少し右ヒジを張っただけで琴櫻の左上手が切れてしまった。琴櫻は左おっつけから右からの突きを見せようとしたがこれが失敗。琴櫻の体が浮いたところを王鵬がすかさず攻めて寄り切った。

「やっと勝てたなという気持ちです。右四つだと勝てないので、止まっちゃいけないという気持ちでいきました」と王鵬。
 
結びの一番には「気持ちがいいですね」としながらも「自分の番付ではないので……」という王鵬だが、この日の一番をきっかけとして、ここから琴櫻との差をどんどんと詰めていきたいところだ。
 
一方の琴櫻は、取組後は「切り替えていきます」「集中していきます」という言葉を発したのみ。それだけ、この場所の優勝にかける気持ちで臨んでいたということでもあるが、ショックの大きさがありありと感じられる。
 
いったん手に入った廻しは何としても死守するという気持ちで辛抱すべきだったのかどうか……。まあ素人の口からは何とも言えないが、とにかく優勝への、そして横綱への道はなかなか簡単なものではないと思い知らされる一番になったことは間違いないだろう。
 
ただ、大の里との差はまだ星1つ。ぴったりくっついていけば自力逆転も可能だ。本人が言うとおり、切り替えて、集中していくしかないだろう。
 
5日目を終わり、優勝争いはマッチレースではなく、全勝街道は大の里の一人旅となった。この日は先場所敗れている隆の勝に攻勢を許さぬ力強い取り口。あすからは、単独トップになったことによって気持ちに波風を立たせることなく戦えるかが、カギになってこようか。

文=藤本泰祐

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