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2024-09-09

【相撲編集部が選ぶ秋場所2日目の一番】琴櫻が理想的な取り口で隆の勝を寄り切り。初優勝への期待膨らむ

モロ差しから隆の勝の体をグイグイと浮かせて寄り切る琴櫻。理想的な内容を見せつつの連勝に、初優勝への期待も膨らむ

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琴櫻(寄り切り)隆の勝

これは強い!
 
大関の琴櫻だ。先場所優勝決定戦進出の実力者・隆の勝に何もさせずに完勝した。
 
この日は、まさに琴櫻にとって理想的な取り口だった。立ち合いに踏み込み勝ち、右、左とほぼ同時に入ってモロ差し。そのあとは両ヒジを相手の脇の下に当てるような感じで相手の体をどんどん上へと浮かせていく。しかも左右バランスよく攻め、常に正面にとらえているので、隆の勝は逃げ場がない。相手が浮いてきたところで腰を寄せ、今度は腕だけでなくおなかも相手に突きつけるような寄り。170キロの隆の勝をいとも簡単に白房下に寄り切った。

「完敗です。(二本差されて)あそこからは何もできない」と隆の勝。先場所の終盤から本割9連勝としていた男も、ストップを掛けられ、舌を巻くしかなかった。
 
とにかくこの日の琴櫻で素晴らしかったのは立ち合いだ。より相手の差し手を封じたい左のほうの足をグイッと踏み込んで、隆の勝にほぼ定位置で受けさせる形を作り、スパッと二本入れてしまった。悪いときには相手をさばこうという意識が先に立つのか、その場で立って胸を出すような感じになってしまうことがある琴櫻だが、これだけ圧力をかけながらモロ差しになれれば、この日の隆の勝のように、相手が何もできなくなってしまうのも必然だ。

「集中していけたんじゃないですか。自分の相撲を心がけていっただけです」と琴櫻。「二本差しは狙っていたか」の問いにも「いや、結果じゃないですか」と、淡々としていたが、この日の一番は琴櫻にとって、少なくとも隆の勝のように「ある程度体が大きく、正面から当たってくる可能性が高い相手には、これを磨いていけば」ということが見えた一番ではなかったかと思う(あす対戦の翔猿のような相手には、また違う取り口が必要となるだろうが)。

「まだ2日目。しっかり続けていきたい」と先を見据える琴櫻。東大関の地位は、横綱照ノ富士が休場しているこの場所にあっては出場力士中最上位、初の賜盃へ向けて、責任があるとともに、もちろんこれ以上ない大チャンスの場所であるということは間違いがない。
 
常々、「祖父の琴櫻(第53代横綱)の地位に並ぶことが目標」とし、そのためには優勝を目指す、ということを口にしている琴櫻だが、今場所は誰にはばかることなくその目標へまい進していくことを公言し、実行できる立場にある。また、“番付の権威は常に守られるべし”と考える向きには、スピード昇進を続ける大の里への壁としての役割を期待される立場でもあるだろう。
 
この日、その大の里は翔猿に立ち合いのモロ手突きを頭を下げてかわされ、足に手を掛けられながらも落ち着いてさばいて連勝とした。まだ2日目を終わったところではあるが、場所の様相は、一気に番付を駆け上がろうとする大の里と、その壁となる琴櫻の争いとなっていきそうな予感が日に日に深まる。
 
そこに、初日は黒星スタートながらも、この日は好内容で大栄翔に圧勝し、早々に体勢を立て直してきた感じの西大関豊昇龍がどう絡んでいくか。横綱は不在だが、“3強”を中心とした面白い場所になりそうだ。

文=藤本泰祐

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