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2024-12-04

大日本の魅力が詰まった商店街プロレス年内最終戦に密着。3冠王、神谷英慶が語る「生のプロレス」の重要性【週刊プロレス】

デスマッチヘビー、ストロングヘビー、UWA世界タッグの3つのベルトを保持する神谷

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12月1日、大日本プロレスが商店街プロレス年内最終戦をおこなった。

六角橋との交流を機に、2012年から開始した「商店街プロレスシリーズ」。当初は横浜市商店街総連合会(市商連)の加藤剛さんと“黒天使”沼澤邪鬼が中心となり立ち上げたプロジェクトだったが、加藤さんは市商連を抜け、沼澤は大日本を退団。今年は大日本スタッフの高塚英樹さんと広瀬ちずるさんが中核となってシリーズを継続してきた。

今年の開催数は9回(イベントは含まず)。横浜を拠点として地域に根差した大日本と、商店街プロレスならではの老若男女が集うお祭りのような雰囲気は、親和性が高くアットホームな空気感がある。

最終戦の舞台となったのは、横浜市金沢区・富岡みどり会商店街。はまと脳神経外科クリニックの駐車場のど真ん中に立てられたリングは、日常のなかの非日常。

会場前から入場の列ができており、この日を楽しみにしていた子供たちの待ちきれない様子も見受けられた。基本的に無料でおこなわれるため(六角橋では有料興行もおこなっている)、プロレスの入口となりやすいのもメリット。全5試合のほか、抽選会や、子供(大人もあり)プロレス教室を実施。特に関札皓太によるトレーニングのレクチャーは、リング上に大勢の子供たちが集合。ときにエッジの効いた一言を織り交ぜながら指導する姿に、子供のみならず大人もクスっとしてしまうワンシーンもあった。

周囲には飲食の出店が並び、食べて飲んでプロレスを見るもよし、大人たちはアルコール片手に観戦するもよし。

印象的なのは、選手と子供たちがともに入場する恒例の光景。普段は見ることができない景色でもあるし、選手の温和な表情と子供たちの弾ける笑顔は商店街プロレスならではだ。

全試合を終えると、選手たちがリングに上がってお決まりの「プロレス見るなら大日本、買い物するなら商店街!」で締めて、大会は盛況で終了した。

いまとなってはなくてはならない場所となっている商店街プロレス。中核を担っていた高塚さんも11月をもって退職し、状況は変化し続けるが、今後も継続して開催していきたいと伊東竜二は語る。

「10年以上やってるなかで商店街プロレスをやることでの集客はそれぞれがわかっているので継続できる。商店街さんと大日本プロレスの関係性のなかでやってるので、例年通りできていますね。比較的コロナ渦が落ち着いてきてるので、いままでは躊躇してたところもまた今年から再開したりもしました」(伊東)

メインイベントで子供たちから大きな声援を受けた横浜出身の青木優也にとっても、お客さんとの距離感や子供たちとの触れ合いは“心の栄養素”となっている。

「プロレスを初めて見る子が、体のぶつかり合いを見て純粋にワーっと心の底から応援してくれる場所。お客さんとの距離も近いですし、好きな場所です。プロレス自体の知名度も昔ほどないなかで、街にいきなりリングが立って、レスラーが闘って、場外戦とか繰り広げていくって子供たちからしたら新鮮じゃないですか。そういう姿、風景を見せてくれるのが商店街プロレス。そこから興味を持ってくれて、ほかの大会に行ってみようっていうきっかけになったらいいなと。熱く激しい闘いを、場所も選ばずできるのが大日本のいいところ。来年はもっともっと横浜を、商店街プロレスを盛り上げていきたいです。横浜出身なのでここが地元凱旋という感覚。先日、(横浜市の)中学生を相手に職業講話にお呼ばれしたんですけど、自分のスキルにもなるし、今後の子供たちにもなにかつながるものがあればいいなと思うのでひじょうにいい経験だったと思います」(青木)

そして、現在大日本プロレスの頂点に立つのが、神谷英慶だ。神谷は7月にBJW認定デスマッチヘビー王者でありながらデスマッチの「一騎当千」を制覇する快挙。10月にはBJW認定世界ストロングヘビーを戴冠し、至上初の血と汗の同時戴冠を果たした。さらにシ烈なトーナメントを勝ち上がり「龍魂杯2024」を優勝。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いの“妖怪超人”にとっても、英気を養う場となった。

「すごい盛り上がりましたね。きょうはコロナ前に観に行ってましたって言うお客さんもけっこういました。お客さんの声を身近に聞こえるっていうのは商店街プロレスのいいところでもあるので、子供から大人までいろんな人の意見が聞けて嬉しかったです。商店街ならではの反応というか、子供たちからは『神谷がベルト持ってるの? 青木じゃないんだ』という声も聞こえて、去年1年間青木が頑張ってくれてたので。いまはネット社会だし、ボクがベルトを持ってることを知っている人はいるけど、子供に届けるのって生のプロレスだと思ってるんで、すごいいい場所。そういうのがどんどん響いてくればいいなと思いますし、身近に感じてくれるのはすごい嬉しいです。あったかいですし。ある意味では本戦とは違う魅力もある。横浜出身の地元のスター(青木)があんなに応援されてすごい嬉しいですし、ボクらがやってきたことが根付いているんだなって。声が聞こえるのが一番嬉しいですし、力になりますよ。新しいプロレスを育てなきゃいけないなとも思います。自分も小さい頃そうだったんですよ。プロレスから勇気をもらうことも多かったですし。レスラーになったいま、ボクらが元気を出していかないと周りも元気でないと思うんで。苦しい時も元気出してやっていきたいです」

プロレス界で快進撃を続けている神谷。大日本としては大晦日に「デスマッチトーナメント」が控えているが、王者はやりたいことが山積みだと語る。神谷の言葉を借りるとすれば、偉業を次々と成し遂げ、未開の地を行くこの男から「目を離さない方がいい」。

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