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2017-06-23

〝人生の縮図〟が描かれる「トライアングルリボン」とは… 【アイスリボン6・25横浜大さん橋ホール大会直前コラム】

 アイスリボン6・25横浜大さん橋ホール大会で描かれるのはどんな「人生の縮図」なのだろう。
王者・豊田真奈美vs藤本つかさvsつくしのトライアングルリボン選手権試合。大注目の一戦が同大会のメインイベントでおこなわれる。
 この試合のキッカケはアイスリボン6・17埼玉・蕨大会で生まれた。現在、トライアングルリボンは第24代王者の豊田の保持しているが、豊田を〝プロレスのママ〟と慕うつくしが同王座への挑戦を表明。同王座特有のシステムである推薦人という立場で藤本も名を連ねることになり、豊田にとって2度目の防衛戦となる今回の試合が決まった。
 アイスリボンには現在、3大タイトルが存在している。シングル王座で団体の象徴でもあるICE×∞王座(現王者は世羅りさ)にタッグタイトルのインターナショナルリボンタッグ(現王者はつくし&柊くるみ)、そしてトライアングルリボンである。
 3WAYという試合形式が浸透して久しいプロレス界だが、3WAYのベルトとなると非常に珍しい。トライアングルリボンが設立された2009年の時点では業界初の3WAY王座として注目を集めた。
 通常、プロレスの試合は1対1、もしくは1チーム対1チームで試合がおこなわれるが、3WAYは、3人のレスラー(もしくは3つのチーム)が自分以外は敵という3すくみ状態で闘う特殊な試合形式。つまり状況によっては1対1対1にもなれば、1対2にもなるし、味方だと思っていた選手が突如裏切るパターンもある非常に戦略性の高いプロレスならではのルールである。

ベルトの創設者でもある藤本は2010年12月に王座初戴冠を果たした

 では、そんな3WAYマッチのベルトがなぜアイスリボンに存在するのか。現在、取締役選手代表を務める藤本つかさの感性と情熱のたまものだった。
 さかのぼること8年7カ月前。2009年11月4日、藤本はZERO1島根・くにびきメッセ大会に参戦。その前夜には日高郁人の地元凱旋興行があり、同大会との連戦でZERO1マットに出場した(ちなみに日高凱旋興行では、横浜大会で激突する豊田真奈美とタッグを結成している)。
 11・4島根大会で藤本は高橋奈苗(現・奈七永)、夏樹☆たいよう(引退、現・南月たいよう)と3WAYマッチで激突したのが…これがハマッた。白熱した一戦となり、会場も大いに盛り上がった。と同時に、試合に参加した藤本も3WAYマッチの面白さに開眼したという。
 前述したとおり、いまでこそ3WAYマッチはプロレス界に浸透。各団体、さまざまシチュエーションで同形式の試合がおこなわれている。
 ただ、当時の女子プロ界ではそこまで日常的に取り入れられている形式ではなかった。アイスリボンもしかり。それでも「3WAYの面白さをアイスリボンファンにも届けたい!」という思いを抱いた藤本は、善は急げとばかりに島根大会からわずか10日後の11・14道場マッチで同一カードを実現させた。ここでも試合には敗れた藤本だったが、道場マッチでも想像以上の盛り上がりと充実感を覚え、ひとつの使命を抱くに至った。
「(3WAYは)人生の縮図のような試合で心が強くなったような気がします。今日はホントに楽しかったです! 3WAYのベルトを作る。それがプロレスラー、藤本つかさの宿命だと思うので今日から作成したいと思います!」
 こう宣言した藤本はホントにベルトの作成に着手。ICE×∞王座の前身であるICE×60王座を真琴が手作りしたように、藤本もまた自らの手で、水色ベースでサイドにたくさんのハートと花がデザインされたかわいらしいデザインのトライアングル王座を製作。3WAYマッチの面白さがキャリア1年3カ月の25歳を突き動かして、当時としては史上初の3WAY王座が設立。初代王座決定戦がおこなわれたのは、藤本が3WAYの面白さを知った島根大会からわずか3週間後の2009年11月28日だった。

藤本お手製の初代トライアングルリボンのベルト。2013年に黄色いベルトにモデルチェンジした

 とはいえ、プロレスの神様は時として試練を与えるもの。3WAYの面白さを知り、自らベルトを作るまで情熱を燃やした藤本だったが、初代王座決定戦ではりほ(現・里歩)に敗れ王座奪取はならなかった(もう一人は高橋)。3カ月後の2010年2月にも挑戦しているが、ここでも敗退。創設者にもかかわらず水色のベルトに縁がないまま時が流れたが、王座設立から1年1カ月後の2010年12月10日に藤本はついにトライアングルリボン王座を奪取。愛おしい人を抱きしめるかのようにトライアングルのベルトを胸に抱きながら見せた満面の笑みが、王座初戴冠の歓喜を表しているようだった。
 以後、トライアングルリボンのベルトはシングル、タッグに準ずるアイスリボンのタイトルとしてさまざまな選手が闘いを展開。ときに男子レスラーもベルトを巻くことのあった約8年の歴史のなかで、同タイトルは価値を高めていったが、その功労者の1人として引退した新田猫子の名前をアイスリボンの佐藤肇社長はあげる。
「新田猫子が(ベルトの価値を)高めた部分は大きいと思います。『NEOでやったさくら、植松、宮崎の3WAYがバカ受けしたんだよ』って言ったら、それを見て研究して、男子をふくめて3WAYの試合を探しては研究してましたよね。単純に力と技だけじゃなくて、トリッキーさとか勝つための戦略性とか試合としての面白さとかいろんなものを考えて、(3WAYの魅力を)形にしていきましたよね」
 そんなトライアングル王座は2013年に現在の黄色いベルトにモデルチェンジ。そして現在、第24代王者として豊田真奈美が巻いている。

独自の闘い方でトライアングルリボンの価値を高めたという新田猫子(写真右端)

 冒頭に記したとおり、アイスリボン6・25横浜大さん橋ホール大会で王者・豊田vs藤本vsつくしのトライアングルリボン選手権試合がメインイベントでおこなわれる。
 豊田は今年11月3日に現役引退する。90年代の女子プロレス人気をけん引した功労者で、飛翔天女の異名で一時代を築いたレジェンドでもある。そんな豊田はかねて藤本とつくしに目をかけていた。6月4日におこなわれた小橋建太プロデュース「Fortune Dream」でも小橋とトークショーをおこない、「期待する女子レスラーは?」と聞かれて藤本とつくしの名を口にした。
 飛翔天女二世と呼ばれる藤本は、豊田からジャパニーズ・オーシャン・サイクロン・スープレックスと水色のガウンを伝承された。
 今年4月、藤本は自身の地元・仙台大会で豊田とタッグ対決。そこで元祖ジャパニーズ・オーシャン・サイクロン・スープレックスで豊田から3カウントを奪われた。試合後、藤本は「豊田さんが引退するまで、あなたから継承されたサイクロンを決めて、必ず勝ってみせますから!」と涙ながらに宣言したが、豊田からは「助けなしで私を(サイクロンで)持ち上げることができるように鍛えて」と突き付けられた。
 この試合のキッカケを生んだつくしにとって豊田は〝プロレス界のママ〟。ジャパニーズ・オーシャン・スープレックスと黒いコスチュームを伝授してくれた敬愛する存在だが、藤本同様、越えなければいけない相手でもある。
 自身がプロデュースした「Teens」5・3横浜大会でつくしは豊田とタッグ対決し、ママから3カウントを奪われている。そして、試合後、「つくし、私のことを倒してみろ。お前だったらできる。絶対倒してみろ。そしたら私は本当に心置きなく安心して引退できると思う」と〝娘〟であるつくしに大きな宿題を課した。
 豊田にとっての藤本&つくし。藤本&つくしにとっての豊田。藤本とつくしの関係は言うまでもない。どの顔合わせを見ても興味深い今回のトライアングルリボン戦はまさに大一番。豊田を超えたい藤本、豊田からの宿題に応えたいつくし。それぞれが紡いできた豊田とのつながりに、ひとつの答えを出す試合になるかもしれない。
 ただ引退が決まっているとはいえ王者・豊田の存在はやはり大きい。藤本は、そしてつくしは3WAYという試合形式のなかでどんな闘いをみせるのか。結託して豊田を狙うのか、あえて1対1対1を貫くのか、豊田と手を組みどちらかを蹴落としたうえで、さながらシングルマッチのような状況を作り上げるパターンも考えられる。人間ドラマだけでなく、3人がどんな戦い方をするのかも注目だ。
 豊田、藤本、つくしが激突するトライアングルリボン選手権試合。決戦の舞台は、豊田ラストマッチの会場でもある横浜大さん橋ホール。6月25日、3人が入り乱れながらリングに描く大一番を見逃す手はない。

豊田vs藤本vsつくしは今年1・9横浜ラジアントで実現。この時は15分ドローに終わっているが、今回は…

「横浜リボン2017~大さん橋ホール~」
★6月25日(日)神奈川・大さん橋ホール(12:00)
⑥トライアングルリボン選手権試合(15分1本勝負)
<王者>豊田真奈美 VS つくし<挑戦者> VS 藤本つかさ<挑戦者>
⑤長崎まる子 VS 華DATE
④世羅りさ&雪妃真矢 VS 藤田あかね&法DATE
③山下りな VS トトロさつき
②柊くるみ&華蓮DATE VS 宮城もち&星いぶき
①チェリー&松本都&直DATE VS 弓李&テキーラ沙弥&松屋うの

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