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2025-07-04

【連載 大相撲が大好きになる 話の玉手箱】第30回「気分転換」その2

玉鷲が手作りのベッドカバーを披露

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令和3年はコロナのヤツが猛威を振るっていました。
東京も、神奈川も、大阪も、埼玉も、とにかく日本中が大変です。
三密を避け、不要不急の外出はせず、家の中にジッとしているに限ると言いますが、ほどってものがあります。
こういうときは思い切って気分転換をしちゃいましょう。
この気持ちの切り替え、気分一新は、力士たちの得意技です。
どうやっているんだって? 
じゃあ、紹介しましょう。彼らの個性にあふれた気分転換法を。
※月刊『相撲』平成31年4月号から連載中の「大相撲が大好きになる 話の玉手箱」を一部編集。毎週金曜日に公開します。

趣味の多い玉鷲

食べることも稽古の一つ、と言われるだけに、力士たちの食べることに対するこだわりはたいへんなものだ。その食、いわゆる料理を趣味にしている力士は少なくないが、その中の横綱級はベテランの玉鷲だ。
 
平成31(2019)年初場所には優勝したこともある玉鷲だが、いつも好調というわけにはいかない。平成28年夏場所は何をやっても裏目と出て、黒星が相次いだ。13日目には西前頭13枚目の英乃海の左に変わっての叩き込みをまんまと食い、とうとう二ケタ、10個目の黒星を喫してしまったのだ。日頃は陽気な玉鷲も、これにはすっかり落ち込み、支度部屋に戻ってきても、

「まったくもう。(相手の変化は)分かっているのに、食っちゃう。どうしようもないよ」
 
とため息のつきっぱなしだった。あまりの嘆きの大きさに、取り囲んだ報道陣から、

「関取、たまには気分転換でもしたら」
 
とアドバイスされると、玉鷲はこう言って苦笑いした。

「やっているよ。今場所は料理かな。たまにはケーキも作るよ。まるで女の子みたいでしょう」
 
そう言えば、玉鷲は大相撲界切っての趣味人で、お菓子作りから小物作りまで多彩な芸を誇り、テレビでその技を特集されたこともある。これらは大相撲界に入門する前からやっていたそうで、大きなベッドカバーも手作りしたことがある。
 
そんな裏技を駆使しても、黒星ににらまれたら逃れることはできない。相撲の世界は奥が深いんですね。ちなみに、この場所の玉鷲は14日目にも妙義龍(現振分親方)に叩き込まれ、11敗も喫してしまいました。

月刊『相撲』令和3年9月号掲載

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