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2025-08-06

【陸上】広島インターハイ・女子400m3位の松井詩乃 両親へ恩返しのメダル 強くなるために四学香川西高へ

松井は女子400mで53秒82をマークし、タイムレース決勝1組2着に入った(写真/黒崎雅久)

7月25日から5日間、広島広域公園陸上競技場で行われたインターハイの陸上競技。女子400mで3位に入った松井詩乃(四学香川西高3年・香川)は両親の元を離れて、進学。「強くなるための選択」が実を結び、全国の舞台で両親への恩返しとなるメダルを獲得した。

「ありがとう」の気持ちがこもった銅メダル

強くなりたい。その一心で出身地を離れて進学する選択は今や珍しくなくなったが、女子400mで3位に入賞した松井詩乃(四学香川西高3年・香川)もその一人だ。

松井は四季の花々が植わる馬見丘陵公園や5~6世紀築造の古墳群がある奈良県河合町の出身。「両親は香川西に進学することに賛成してくれていたんですけど、本当は地元の高校に通ってほしいというなかで、私がどうしても強くなりたいと言って行かせてもらいました」と、大きな決意を胸に香川へと海を渡った。

そして集大成の広島インターハイ、女子400m。「1年生も2年生も準決勝には行けるタイムで来ていたのに、大きな大会になると、ほかの人にのまれて、全然自分の力を出せなかった」と言う松井だが、「香川西高校に来て、大きな成長が得られた」という今回、その課題を微塵も感じさせない快走を見せ、予選を全体トップの54秒95で通過した。「香川である大会に奈良から来ない日はないくらい毎回来てくれていた両親が、今回予選を通過したときに、初めて泣いてくれて、私もうれしかったです」と、家族で初の予選突破を喜び合った。

予選翌日のタイムレース決勝。アップで前半200mの走りをチェックすると、「24秒7だったので、これはいけるんじゃないかなって」と、自信を持って1組目のスタートに着いた。

「前半の200mをうまく入れなかったら、そのあとぐちゃぐちゃになるので、200mが勝負だなと思っていました」と積極的に加速し、後半は今峰紗希(済美高3年・岐阜)と抜きつ抜かれつの接戦。53秒82の自己ベストをマークしたが、今峰の後塵を拝して2着に。2組1着のバログン・ハル(市川高2年・千葉)にもタイムで抜かれ、結果、松井は3位となった。

「悔しいしか言葉が出てこない」とくちびるを噛んだが、予選連敗だった過去2年のインターハイと、今大会前の自己記録54秒63から躍進を遂げた記録と全国3位を思えば、「私の走りに悔いは残っていないし、しっかり走りきれたかなという感じです」も本心にある。強くなりたいという初心をかなえた松井は、両親に、約束した色のメダルではなかったけれど、銅メダルを「ありがとう」の気持ちと一緒に届けることができた。

「大学でも競技をします。全国の舞台でこのような記録を出せたことは自信にもつながりますし、日本選手権などでも活躍できる選手になりたいと思っています。大学生から上の大人のカテゴリーでは1位になって、次は金メダルをお父さんとお母さんにかけてあげたいなと思います」と、気持ち新たに目標を話す松井。最後のインターハイで、これからも走り続ける理由ができた。

文/中尾義晴 写真/黒崎雅久

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